暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

初風炉の茶事(立礼)・・(2)

2023年06月09日 | 「立礼の茶事」(2023年~自会記録)

   (「遠山無限碧層々」・・・58番札所・仙遊寺にて、2022年6月撮影

 

つづき)

初炭になり、炭斗は立礼の茶事の初回を記念して玄々斎好み松唐草炭斗にしました。

唐銅道安風炉に糸目桐文車軸釜(伊予芦屋の写しで、長野新造)を掛けました。

この風炉だと火床を広く取れるので、火相が心配な風炉の茶事によく使います。

切掛風炉ではないので灰器を使い、月形を切りました。

灰器は鵬志堂イサム作の信楽茶碗を選びましたが、大きさといい雰囲気といいピッタリです(自分で言うのも何ですが・・・)。

香合は裏千家八代一燈好みの「つぼつぼ香合」(宗しゅん作)、香は松栄堂の沈香です。一つは熱灰に・・・と言いますが、火に近すぎたようで燃えだしてしまい、大いに反省しています。

さて肝心の火相ですが、懐石が1時間半かかりますので、下火3本の奥に大きい丸ギッチョを1つ足しましたが、もうギリギリでした。炭を置くと、パチパチと言う音が勢いよく聞こえてきて安堵しました。(風炉の茶事では火相と湯相がとても難しく、いつも中立でもう一度最終チェックをします)

初炭を終え、縁高でお菓子をお出ししました。浅緑の金団に小さな杜鵑が一羽飛んでいて、菓子銘は「一声」、製は石井菓子舗(横浜市旭区都岡)です。

 

 (厄払いの盤(鐘)・・・23番札所・薬王寺にて、2022年6月撮影)

銅鑼を打ちました。

後座の席入りの合図は銅鑼、久しぶりに打った銅鑼の音は何か今までと違っていました。銅鑼の音色はとても恐ろしい(?)です。

上手とか下手とかの評価とは別に、銅鑼を打つ亭主の心の内を表わしている気がするからです・・・恐れ、ためらい、心配、恥、高揚、慢心、悲しみなどの心のあり様を・・・。

なかなか無心で打つのは難しく、「上手に打てた!」と思った時は我が出ているそうで、お点前と同じですね。

    (86番札所・志度寺にて、2022年6月撮影)

濃茶の茶碗を持って緊張しながら席へ入りました。

水指の前に茶入と茶碗を置き合わせ、建水を勝手付きに置き、蓋置を建水の位置に置いて総礼。

大好きな濃茶点前ですが、点茶盤と円椅だと少しだけ感じが違います。それでも四方捌きをしながら点前に集中していきました。ただひたすら今日のお客さまに美味しい濃茶を練って差し上げたいと・・・。

無駄をそぎ落とした裏千家流の点前が大好きです。点前をしていると、心も所作も美味しい濃茶一服のために無心となり、研ぎ澄まされていきます。一方で、同門社中の方に見詰められながら、静寂の中にもあたたかなものを感じました。

黒楽茶碗に濃茶を茶入から4杓すくい、湯を少しずつ塩梅しながら注ぎ、練り始めました。

ぷぅ~んと茶香が立ち昇り、練っている茶筅の穂先が滑らかになって来ると、さらによく練ってから茶筅を茶碗に預け、ほんの少しずつ湯を足していき、再び混ぜ合わせるように練ってからお出ししました。

「お服加減はいかがでしょうか?」

「美味しく頂戴しています」という正客Yさまの一言に安堵して、次客Nさまと三客Mさまの濃茶に掛かりました。

濃茶茶碗の3碗ですが、これからも同じ茶碗で差し上げると思うのでナイショにします。ご想像ください。

茶入は薩摩焼の胴締めで15代沈壽官作、仕覆は能衣装の裂地でお仕立ては小林芙佐子先生です。

茶杓は銘「颯々」、京都瑞光院の前田宗源和尚の御作です。 つづく)

 

   (「颯々」の風が・・・8番札所熊谷寺にて、2022年6月撮影

 

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