昨日は「量子ドット」というナノスケールの微小空間の難しい話でした。今日は「3次元フォトニック結晶」という、やはり超ハイテクノロジーの難しい話です。量子ドットは、10数ナノメートルの立方体の中に電子を1個閉じ込める話でした。今回紹介する3次元フォトニック結晶は、半導体の中の300ナノメートルの立方体(のようなもの)に光(光子を1個)を閉じ込める話です。30倍ほど大きな空間の話になります。この「300ナノメートル」は利用する光の波長の長さです。
東京大学のナノ量子情報エレクトロニクス研究機構の荒川泰彦機構長・教授の研究グループは、「3次元フォトニック結晶のナノ共振器から世界で初めてレーザー発信させることに成功した」と発表しました。現在の半導体レーザーは素子内で発生した“自然放出”という発光をレーザー発信に用いることがなく、この分だけ無駄なエネルギーを使ってるのだそうです。自然放出で消費されるエネルギーの割合はかなり大きく、無駄が大きいとのことです。これに対して、今回試作した3次元フォトニック結晶のナノ共振器は自然放出が原則無いため、高効率なレーザーを実用化できる見通しが高まりました。理想的なレーザーが実現する可能性があるということです。
今回レーザー発信に成功した3次元フォトニック結晶ナノ共振器のレーザーは、光を発生させる量子ドットと、その発生した光を長時間閉じ込める3次元フォトニック結晶のナノ共振器を組み合わせて実現しました。つまり、電子と光(光子)の両方を微細空間に閉じ込めるという魔法のようなハイテクノロジーによって実現しました。今回のレーザー発信は光を入れてレーザー発信させています。将来は電流(電子)を流すとレーザー発信できると使いやすいものになりそうです。
キーとなる3次元フォトニック結晶は、現時点では“名人”にしかつくれません。つくり方は、ミクロな積み木です。ガリウム・ヒ素(GaAs)系化合物の薄い板を、半導体をつくるエッチングなどの加工法によってつくります。縦・横・高さが10マイクロメートル・10マイクロメートル・15ナノメートルという正方形の薄板をまずつくります。この正方形の板は、実は細い棒を井桁形状に組んだ構造になっているため、微細な四角い穴が規則的に設けられています(図を参照)。この薄板を25枚、積み木のように重ねます。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/50/e8/879d9e807a67badcecc2bfc683d838ee.jpg)
ちょうど真ん中になる13枚目の薄板の中央には、1.15マイクロメートルの四角い穴が設けられ、この穴が共振器として働くように設計されています。ここに量子ドットがつくられています。
薄板には特定の3個所に溝が切ってあります。この3個所の溝が正確に当たるように積み木します。こんな神業(かみわざ)ができる秘密は、3本の四角柱を正確に設け、この四角柱に3個所の溝がはまるように、薄板を積み木する仕掛けになっていることです。このアイデアを考えた人は賢い人です。
薄板を積み木状に重ねるのは、人間の腕前による操作です。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/64/3a/289cf9e26266f42ad564e1ed71f8181e.jpg)
電子顕微鏡で見ながら、微細な端子を慎重に操作し、細い棒状の“端子”を薄板に近づけます。端子には静電気が加えられており、静電気の引力で薄板を持ち上げ、位置決めとなる3本の四角柱の近くにまで運びます。薄板の3個所の溝が、治具(じぐ)の3本の四角柱にはまるように動かします。これを25回繰り返し、薄板を25枚積層します。位置合わせの許される誤差は、50ナノメートル以内というものすごいものです。このために現在、この操作ができるのは、荒川研究室のタイ人の研究者の方だけだそうです。ものすごい集中力が必要なため、彼にしかできないウルトラテクニックです。1日に1個しか作成できないそうです。現代の名工です。超ハイテクノロジーが現代の名工に支えられているところが、面白いところです。最先端の研究開発は意外と人間くさいようです。
この研究開発を率いる荒川教授は、文部科学省傘下の日本学術振興会が運営する「最先端研究開発支援プログラム(FIRSTプログラム)」の中心研究者の一人に選ばれた、日本を代表する研究者です。荒川教授の研究グループは、データセンターの機能をチップ上に集積したシステムである「オンチップデータセンター」の実用化を目指しています。この研究開発には5年間に約39億円の研究開発費が投入されます。是非、成果を上げてもらいたいと思います。
東京大学のナノ量子情報エレクトロニクス研究機構の荒川泰彦機構長・教授の研究グループは、「3次元フォトニック結晶のナノ共振器から世界で初めてレーザー発信させることに成功した」と発表しました。現在の半導体レーザーは素子内で発生した“自然放出”という発光をレーザー発信に用いることがなく、この分だけ無駄なエネルギーを使ってるのだそうです。自然放出で消費されるエネルギーの割合はかなり大きく、無駄が大きいとのことです。これに対して、今回試作した3次元フォトニック結晶のナノ共振器は自然放出が原則無いため、高効率なレーザーを実用化できる見通しが高まりました。理想的なレーザーが実現する可能性があるということです。
今回レーザー発信に成功した3次元フォトニック結晶ナノ共振器のレーザーは、光を発生させる量子ドットと、その発生した光を長時間閉じ込める3次元フォトニック結晶のナノ共振器を組み合わせて実現しました。つまり、電子と光(光子)の両方を微細空間に閉じ込めるという魔法のようなハイテクノロジーによって実現しました。今回のレーザー発信は光を入れてレーザー発信させています。将来は電流(電子)を流すとレーザー発信できると使いやすいものになりそうです。
キーとなる3次元フォトニック結晶は、現時点では“名人”にしかつくれません。つくり方は、ミクロな積み木です。ガリウム・ヒ素(GaAs)系化合物の薄い板を、半導体をつくるエッチングなどの加工法によってつくります。縦・横・高さが10マイクロメートル・10マイクロメートル・15ナノメートルという正方形の薄板をまずつくります。この正方形の板は、実は細い棒を井桁形状に組んだ構造になっているため、微細な四角い穴が規則的に設けられています(図を参照)。この薄板を25枚、積み木のように重ねます。
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ちょうど真ん中になる13枚目の薄板の中央には、1.15マイクロメートルの四角い穴が設けられ、この穴が共振器として働くように設計されています。ここに量子ドットがつくられています。
薄板には特定の3個所に溝が切ってあります。この3個所の溝が正確に当たるように積み木します。こんな神業(かみわざ)ができる秘密は、3本の四角柱を正確に設け、この四角柱に3個所の溝がはまるように、薄板を積み木する仕掛けになっていることです。このアイデアを考えた人は賢い人です。
薄板を積み木状に重ねるのは、人間の腕前による操作です。
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電子顕微鏡で見ながら、微細な端子を慎重に操作し、細い棒状の“端子”を薄板に近づけます。端子には静電気が加えられており、静電気の引力で薄板を持ち上げ、位置決めとなる3本の四角柱の近くにまで運びます。薄板の3個所の溝が、治具(じぐ)の3本の四角柱にはまるように動かします。これを25回繰り返し、薄板を25枚積層します。位置合わせの許される誤差は、50ナノメートル以内というものすごいものです。このために現在、この操作ができるのは、荒川研究室のタイ人の研究者の方だけだそうです。ものすごい集中力が必要なため、彼にしかできないウルトラテクニックです。1日に1個しか作成できないそうです。現代の名工です。超ハイテクノロジーが現代の名工に支えられているところが、面白いところです。最先端の研究開発は意外と人間くさいようです。
この研究開発を率いる荒川教授は、文部科学省傘下の日本学術振興会が運営する「最先端研究開発支援プログラム(FIRSTプログラム)」の中心研究者の一人に選ばれた、日本を代表する研究者です。荒川教授の研究グループは、データセンターの機能をチップ上に集積したシステムである「オンチップデータセンター」の実用化を目指しています。この研究開発には5年間に約39億円の研究開発費が投入されます。是非、成果を上げてもらいたいと思います。