伊坂幸太郎さんの新書の単行本「PK」(講談社、2012年3月7日発行)を一気に読みました。
本書は、先日行った東京都神保町の本屋街の三省堂では「ミステリー本では、現在一番売れている本」と、書評で紹介された本を並べたコーナーに説明されていました。伊坂さんは熱烈なファンを持っている人気作家です。
単行本「PK」は中編「PK」など3編で構成された広義の“ミステリー”です。
単純なミステリーではなく、奇妙な味の物語です。WebサイトのAmazonの単行本「PK」に書き込まれた個人によるレビューを読むと、熱烈なファンは「一種の近未来SF(サイエンス・フィクション)とみて、伊坂幸太郎の本流ではない本と評している」内容のものが多く、不評です。
例えば「PK」は、サッカーの日本代表の選手が国際試合でPK(ペナルティーキック)を決めるストーリーです。日本代表の名選手が、その試合中はミスを連発しながら、試合終了間近につかんだPKのチャンスを生かし、日本代表が試合に勝つ話です。
中編「PK」は、10年後に、ある内閣の某大臣がなぜ、不調だった選手が最後にはPKを決めたのかをいろいろと推理する話です。奇妙な点は、この大臣は幹事長からある理不尽なことで脅かされ、不本意なある決断を迫られています。その迫り方が、巨大な悪の力のように匂わせていて、はっきりしないものです。ひょっとしたら、理屈を越えた巨悪であり、その源泉がSF的なのです。
奇妙なのは、この大臣についた秘書官が、大臣が子供の時に、大臣の父が話した奇妙な話を体験しているという不合理な、説明できない内容になることです。読まないと、何か奇妙かは分からないと思いますが、科学的な理屈だけでは説明できないストーリーです。
この単行本「PK」に収められた他の2編の中編は、互いにストーリーを説明する部分が多い、“入れ子”構造の関連した話になっています。しかし、すべては科学的な理屈では説明できない話になっていて、すっきりとしない気分になります。しかし、この不条理さが怖い味になっています。このため、単行本「PK」を3回ほど、読み直しました。他の中編を、別の角度から解釈できるからです。
この単行本「PK」は伊坂さんが、すごい筆力の持ち主であることを示しています。普通の作家が書いたら、支離滅裂なストーリーで小説として成り立たないと思います。部分的にそうかなと思わせる奇妙な点がとても怖い不条理さを感じ、小説として成立させています。
小説の最後に、後書きがある点も珍しい単行本です。実はこの中編「PK」は2010年の春から書き始め、2011年春には書き上げていたそうです。仙台市に住む伊坂さんは、2011年3月11日の東日本大震災に遭遇します。その直後に、出版社にこの中編を渡したようです。大震災直後に、「この奇妙な話を書いたのではない」と、説明しています。
ある方に「大震災直後に中編を完成させたのは立派だ」と誉められたそうです。事実はそうではないと、伊坂さんは正直に経緯を説明しています。この説明を加えた点がとても面白いと感じました。
本書は、先日行った東京都神保町の本屋街の三省堂では「ミステリー本では、現在一番売れている本」と、書評で紹介された本を並べたコーナーに説明されていました。伊坂さんは熱烈なファンを持っている人気作家です。
単行本「PK」は中編「PK」など3編で構成された広義の“ミステリー”です。
単純なミステリーではなく、奇妙な味の物語です。WebサイトのAmazonの単行本「PK」に書き込まれた個人によるレビューを読むと、熱烈なファンは「一種の近未来SF(サイエンス・フィクション)とみて、伊坂幸太郎の本流ではない本と評している」内容のものが多く、不評です。
例えば「PK」は、サッカーの日本代表の選手が国際試合でPK(ペナルティーキック)を決めるストーリーです。日本代表の名選手が、その試合中はミスを連発しながら、試合終了間近につかんだPKのチャンスを生かし、日本代表が試合に勝つ話です。
中編「PK」は、10年後に、ある内閣の某大臣がなぜ、不調だった選手が最後にはPKを決めたのかをいろいろと推理する話です。奇妙な点は、この大臣は幹事長からある理不尽なことで脅かされ、不本意なある決断を迫られています。その迫り方が、巨大な悪の力のように匂わせていて、はっきりしないものです。ひょっとしたら、理屈を越えた巨悪であり、その源泉がSF的なのです。
奇妙なのは、この大臣についた秘書官が、大臣が子供の時に、大臣の父が話した奇妙な話を体験しているという不合理な、説明できない内容になることです。読まないと、何か奇妙かは分からないと思いますが、科学的な理屈だけでは説明できないストーリーです。
この単行本「PK」に収められた他の2編の中編は、互いにストーリーを説明する部分が多い、“入れ子”構造の関連した話になっています。しかし、すべては科学的な理屈では説明できない話になっていて、すっきりとしない気分になります。しかし、この不条理さが怖い味になっています。このため、単行本「PK」を3回ほど、読み直しました。他の中編を、別の角度から解釈できるからです。
この単行本「PK」は伊坂さんが、すごい筆力の持ち主であることを示しています。普通の作家が書いたら、支離滅裂なストーリーで小説として成り立たないと思います。部分的にそうかなと思わせる奇妙な点がとても怖い不条理さを感じ、小説として成立させています。
小説の最後に、後書きがある点も珍しい単行本です。実はこの中編「PK」は2010年の春から書き始め、2011年春には書き上げていたそうです。仙台市に住む伊坂さんは、2011年3月11日の東日本大震災に遭遇します。その直後に、出版社にこの中編を渡したようです。大震災直後に、「この奇妙な話を書いたのではない」と、説明しています。
ある方に「大震災直後に中編を完成させたのは立派だ」と誉められたそうです。事実はそうではないと、伊坂さんは正直に経緯を説明しています。この説明を加えた点がとても面白いと感じました。