ヒトリシズカのつぶやき特論

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シャープは独創的なIGZO・TFT適用の液晶パネルの量産を開始すると発表しました

2012年04月16日 | イノベーション
 2012年4月13日に、シャープは独創的な新技術を盛り込んだ液晶パネルの本格生産を始めると、明るい話題を発表しました。

 シャープはこのところ、本業の液晶テレビ事業の不振によって2012年3月期に2900億円の連結最終赤字に陥る見通しと発表し、その赤字体質を改善する再建策として3月27日に「台湾のFoxcon(フォックスコン=鴻海(ほんはい)精密工業)と資本・業務提携する」と発表し、資本注入をしたばかりです。

 こうした暗い話を吹き飛ばす明るい話が、液晶パネルの駆動素子に酸化物半導体であるIGZO(In-Ga-Zn-O、インジウム・ガリウム・亜鉛酸化物)TFT(薄膜トランジスタ)を用いた高精細液晶パネルの量産開始です。三重県にあるシャープの亀山第2工場で開始したとの発表でした。

 “IGZO”は通称として「イグゾー」と呼ばれています。このIGZO・TFTを適用した高精細液晶パネルは従来品に比べて、高精細化、低消費電力化、タッチ・パネルの高性能化、の三つの性能向上を図ることができます。

 IGZO・TFTを適用した高精細液晶パネルは「2012年3月から開始し、4月に入ってから生産を本格化させた」とのことです。シャープは以前に、「IGZO・TFTを適用した高精細液晶パネルを2011年中から生産する計画」と公表していました。つまり、約3カ月遅れて生産を始めたようです。こうした明るい話題を、暗い話題と同時に発表できなかった点に、シャープの苦悩が読み取れます。

 シャープは「IGZO・TFTを適用した高精細液晶パネルの生産開始は世界初」といいます。ただし、うわさでは韓国のサムソン電子の方が実は早いという話もあります。どちらにせよ、両社の内のどちらかが製品として先に発売した時点が、「世界初」になります。

 IGZO・TFTを適用した高精細液晶パネルは、タブレット端末向けに量産し始めたとのことです。どの製品メーカーに供給するかと、そのパネル仕様については、「顧客の情報なので、コメントを差し控える」とのことです。

 同液晶パネルの供給先としては、米アップル(Apple)社の「iPad」だとのうわさが強まっています。世界最大のEMSである台湾のFoxconの有力な供給先だからです。

 シャープでは、IGZO・TFT適用の高精細液晶パネルを、タブレット端末向けに加えて、超薄型ノート型パソコンである「Ultrabook」や医療用を中心とする高精細モニター(ディスプレー)などに展開していく予定です。

 発表会では、2011年4月に発表した11型パネルの1366×800画素品に加えて、32型で3840×2160画素(4K)品(精細度は140ppi)、10型で2560×1600画素品(同300ppi)、7型で1280×800画素(同217ppi)の3種類のパネルのディスプレーをそれぞれ披露した。32型は高精細モニター向け、10型はUltrabook向け、7型はタブレット端末に向けたものです。

 展示された10型パネルは、右がIGZO・TFT適用品で、左が従来のアモルファスシリコン適用品です。



 展示された32型パネルのモニターは、右がIGZO・TFT適用品で、左が従来のアモルファスシリコン適用品です。



 シャープは、この3種類の液晶パネルを「既にサンプル出荷中で、供給先から要望があれば量産対応は可能」と語ります。

 このIGZO・TFT適用の高精細液晶パネルが、シャープが反撃を始めるきっかけとなるように祈念しています。