ヒトリシズカのつぶやき特論

起業家などの変革を目指す方々がどう汗をかいているかを時々リポートし、季節の移ろいも時々リポートします

日本経済新聞紙の「P&G 転機のトップ交代 中興の祖退任」を拝読しました

2015年09月10日 | 日記
 2015年9月8日に発行された日本経済新聞紙朝刊の中面に掲載された見出し「P&G 転機のトップ交代 中興の祖退任、体質改善にメド」を拝読しました。

 この記事は、日本と米国の企業の事業再編のやり方の違いを考える際の手がかりの一つになりそうです。
 
 日本経済新聞紙のWeb版である日本経済新聞 電子版でも見出し「P&G 転機のトップ交代 中興の祖退任」として報じています。


 
 米国の日用品製品大手のプロテクター・アンド・ギャンブル(P&G)を率いたアラン・ラブリー氏が、今年10月末に同社のCEO(最高経営責任者)職から退くと報じています。
 
 2000年代に同社の隆盛をもたらしたラブリー氏は、2013年に再び再登板した、同社の中興の祖でした。この時は、金融危機によって悪化した同社の業績を建て直すために、2013年に再びOEOに就任し、ブランド商品を60パーセントも減らす大リストラ策を断行し、体質改善に一定のメドを立てました。
 
 ラブリーCEOは、電池商品の「デュラセル」、ヘアケア商品の「ウエラ」、化粧品商品の「マックスファクター」、香水商品の「ドルチェ・アンド・ガッパーナ」の事業を売却します。その一方で紙おむつ商品の「パンパース」、ヘアケア商品の「バンテーン」、スキンケア商品の「SK-Ⅱ」、カミソリ商品の「ジレット」などの事業は製品競争力を高め、事業収益を高める戦略です。
 
 2000年に同社のCEOに就任したラブリー氏は、「消費者がボス」を経営理念として、カミソリ商品の「ジレット」をはじめ、美容・化粧品やヘケケア商品事業を買収し、当時は売上げを2倍に改善しました。
 
 2013年にCEOとして再登板したラブリー氏は、収益力が低下している電池商品の「デュラセル」、ヘアケア商品の「ウエラ」などの事業を売却します。これまで約165あったブランドの商品を65ブランドに絞ります。ブランド数を約60パーセント減らしても、売上げの85パーセント、税引き前利益の95パーセントは維持できるとの見通しによる戦略です。
 
 P&Gの大リストラにメドをつけたラブリーCEOですが、新たな成長戦略が描けないとの不満を、同社の投資家は持ち、関連する市場アナリストはラブリーCEOに成長戦略の質問を投げかけているそうです。
 
 このため、大リストラ後のP&Gの成長戦略を描ける次の経営人材を求め、ラブリーCEOは退任することになりました。
 
 日本の大手企業も2000年以降に、リストラを進めていますが、事業収益の改善にはあまり成功していません。
 
 日本と米国の大手企業では、経営陣の探し方が異なるので、一概には改善策を語れませんが、日本の大手電機メーカーの東芝がパソコン事業と白物家電事業で、ここ3年間で約2300億円の赤字に陥り、会計不祥事を起したという事件には、米国企業では起こらないといえます。

 日本の大手企業でも、電機大手のシャープの事業不振以降は、自社の事業構成の見直しを進めています。その一例としては、奈良先端科学技術大学院大学は当該企業の未来像を模索・検討する課題創出連携研究事業を始め、ダイキン工業やサントリー、ヤンマーなどの将来象を共同研究し始めています。現在、収益が高い当該事業の未来像を探っています。

 日本の大手企業のリストラでは、従業員の終身雇用をどう確保しながら、実施するかという大きな課題を持っています。日本企業と米国企業は、それぞれに良さを持っています。自社の強み・優れた点を確保しながら、時代に合ったリストラ策・再建策を考えてほしいものです。

(追記)
 2015年9月9日に発行された日本経済新聞紙の夕刊の中面に掲載されたコラム「ウォール街ラウンドアップ」では、米国地銀(投資銀行)のサントラストは「P&Gへの投資判断を『中立』から『買い』に引き上げるというレポートを発表した」と伝えています。米国企業は投資家が当該企業の株を買う投資判断が、当該企業の経営陣に圧力となります。業績が改善する見通しを与えることで、投資家の買いを集め、株価が上がります。米国の経営陣は、常にその手腕が問われています。