chapter#55 ほんもの
ほんもの。ひとことでいうと、それほど重みのある表現でも存在でもないが、ボクたちは、自分にしても、自分が対峙する対象物にしても、ほんものを直視しないということをひごろから、なれすぎてしまっているのではないだろうか?
ほんもの。言い方を変えると、また皮肉なことに、さきほどのニンフ、アンドロギュノスのときの偽者として対置したニンフに値するものとイコールになってしまうが、「永遠に頭を悩ませる存在」というようにいうことができる。
ほんもの。自分が何たるところのものか?自分がなりうるところの最上のレベルの状態。ボクたちはその状態を無意識的に避けようとしているし、実際避けてしまっている。力を自分の本当の姿になること以外のニンフとの戯れなどに使ってしまっている。
ボクがボク自身、もしくは、ボク以外の人に対しても、いたく心配しているのが、どうして、これほど多くの人々が、人生をたんなる戯れのために浪費してしまうのかということだ。
たしかに、「永遠に頭を悩ませる存在」としてのほんものに直視することは、頭脳を理性に亀裂を生じさせ、とくに、破壊すらもたらすことになる。
「私はそんな人間じゃありませんから」
どうして、こういう戯れによって、次々とより卑猥な自分、卑小な自分にボクたちは、自分を卑下していってしまうのであろうか?
ほんもの。たとえ、それが自分の等身大を示すものであるにしても、実際にほんもの、実存として生きるということはえらく疲労をもたらすものである。
そんなことがけっこう本当のボクたちが実存から逃げてしまう理由であったりする。
もったいないとかそういう次元のことではなく、案外生きるということを無駄にしてしまっているものである。
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ほんもの。自分が何たるところのものか?自分がなりうるところの最上のレベルの状態。ボクたちはその状態を無意識的に避けようとしているし、実際避けてしまっている。力を自分の本当の姿になること以外のニンフとの戯れなどに使ってしまっている。
ボクがボク自身、もしくは、ボク以外の人に対しても、いたく心配しているのが、どうして、これほど多くの人々が、人生をたんなる戯れのために浪費してしまうのかということだ。
たしかに、「永遠に頭を悩ませる存在」としてのほんものに直視することは、頭脳を理性に亀裂を生じさせ、とくに、破壊すらもたらすことになる。
「私はそんな人間じゃありませんから」
どうして、こういう戯れによって、次々とより卑猥な自分、卑小な自分にボクたちは、自分を卑下していってしまうのであろうか?
ほんもの。たとえ、それが自分の等身大を示すものであるにしても、実際にほんもの、実存として生きるということはえらく疲労をもたらすものである。
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