株主・債権者による株主名簿の閲覧・謄写の請求について、会社法125条で請求理由を明らかにして開示請求すれば、一定の場合を除いて拒むことが出来ないとしています。
旧商法263条では、株主・債権者の株主名簿の閲覧・謄写の請求については、請求理由を明らかにしなければならないとは書いていませんでした。実際は、ご承知の様に理由を開示しないと簡単には閲覧・謄写は出来ません。これは昔名簿業者に売り飛ばしたりした人がいたのも原因ですが、会社側でも見せたくない事情もあり、理由を開示すれば見せます、開示すれば見せますと言って、普通では見せてくれませんね。会社法が出来て少しは進歩はあったんでしょうか?見せてくれるようになったんでしょうかねえ?
ここでの疑問は、1) 個人情報保護法(同法で法令で認められる場合はOKとしていますが)との関係と2) 出資したらそれ以上責任を負わない有限責任の株主の株主名簿を債権者に開示する必要があるのかの2点です。
1) 個人情報保護:ある人が例えばトヨタの株主であるという事実と氏名・住所は、個人情報保護の対象となりますね。
a. 会社(又は株主名簿管理人)が、株主名簿を開示するのは、個人情報保護法違反になりませんか?まあ会社法で認められている権利だから違反にはならないでしょうけど、趣旨には反しますね。
b. 現在のトヨタの株主数は約33万人ぐらいでしょうか?そのうち32万人ぐらいが個人でしょう、保有比率は17-18%ぐらいでしょうか?有価証券報告書を見ればきちんと記載してありますが。個人株主は、勿論お金持ちも居ますし、かなり保有されている人もおられるでしょう。しかし、大半が1単元から数単元ぐらい。これらの株主名簿を開示してもあまり意味がないと思いますけどね。勿論かなり拮抗している委任状争奪戦のときなどは必要かもしれませんが、まれではないでしょうか。
c. 主要株主が誰か、その保有比率はどうか、株主・保有の分布はどうか等は、M&Aのときは、非常に重要な情報ですので勿論開示は必要ですね。
d. ということで、例えば議決権株式の95%に達するまでの開示を通常開示とし、100%開示のときは、その理由の詳細を開示するとか、被開示者は、使用の範囲を明示して、合わせて守秘義務誓約書を出すとかの方法により、名簿開示の制度と個人情報保護の調整を計っては如何でしょうか。
2) 債権者への開示:なぜ一般に債権者への開示の規定があるのでしょうか、よくわかりません。
会社が特定の株主(例えばオーナー会社のオーナー)と通じて債権者の利益を害する事を計画することがありますが、別にこれは株主とは限りません。特定の取引先とか、株を持っていない親族等と通じる事も可能です。
会社法の原則は、株主は出資の責任を果たせば、後は責任を負いません。この開示はどういう意味があるのでしょうか?
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