それぞれの企業がリソースを出し合って合弁会社を設立して事業を行うケースが内外で多く見られます。そのとき合弁事業に関する契約を締結します。この契約には設立する新会社の内容や役員の指名権、株式譲渡等が規定されて、それに従って会社を設立します。しかし、大半のケースで重要な点が抜けていると思います。それは、新会社設立の精神です。即ち
① 経営の基本原則と
② ビジョン・目標です。
契約書の前文のところに1行ぐらい書いている合弁会社設立契約は見たことがありますが、新会社のビジョンと目標を明確に規定した契約書は、あまり見たことがありません。
これは勿論契約条項ではありません。また、拘束力も無いケースも多いと思います。しかし、合弁契約は新会社の憲法ですから、きちんと記載して当事者間で意思と目標の一致を確認する事が重要ですね。本文に条文として記載する必要もないかもしれません。日本国憲法のように前文に記載しても良いと思います。
会社設立の伺いに、各社で会社設立の狙いとか目標数字を記載します。合弁当事者間で、だいたい一致するときもあるかもしれません。しかし、新会社が何年も経ち担当者も変われば、双方の意思の一致した点など忘れます。当事者で共有した目標は何だったのか、何を目指したのかは両者の合意文書でハッキリさせて置くべきだと思います。もし状況が違って目標を変更する必要があれば、「憲法改正」をすれば良いですね。
「今の合弁契約は、仏作って魂入れず」が多いです。
会社が設立されれば合弁契約の内容はすぐに忘れるケースもあります。これは法務部等に任せて、会社を作るためのみの契約になっているからです。合弁会社の経営がうまく行かなくなったときとか、株式を譲渡するとき、清算するときだけ、合弁契約をひっぱりだしてきて、「こんなこと書いてあったの」とかになります。
私は、合弁会社を何社か設立してその経営にも従事しましたが、合弁契約には、新会社の経営・運営の基本原則を入れました。これは、当事者の目標共有と、独立性をある程度確保して株主からの影響度を軽くするためでした。
株主より、ぐじゃぐじゃ規定を作れとか、毎月レポートしろとか、事業の協力もろくにせずに管理的側面だけ、むやみと干渉するケースもまま見られます。株主からの支援もうまく行き、株主との協業で、相互補完・相乗効果を生むケースも多いとは思いますが、必ずしもそうでは無いケースも多々あると思います。また最近の内部統制で益々手足が縛られるケースもあると思います。
「事業の進歩発展に最も害するものは、青年の過失ではなく、老人の跋扈である」と昔ある人がおっしゃって総理事を退任されました。老人の跋扈を株主・親会社の干渉と置き換えても良いようなケースもありますね。
株主を含む当事者は、合弁の精神を基本として、合弁会社の事業・経営拡大に尽力すべきと思います。今の合弁契約には精神と、その精神を具体化したビジョン・目標が足りないと思います。