とにかく書いておかないと

すぐに忘れてしまうことを、書き残しておきます。

現代文の参考書シリーズ 言語論4 言葉が世界を作っている例3

2016-09-27 21:14:07 | 現代文の参考書
〔具体例3 「愛」ってどんな気持ち〕

 「愛」という言葉があります。「愛」ってどんな気持ちでしょう。

 三省堂の「新明解国語辞典」では次のように説明しています。
「個人の立場や利害にとらわれず、広く身のまわりものすべての存在価値を認め、最大限に尊重していきたいと願う、人間に本来備わっているととらえられる心情。」
 どうも長いだけで、わかるようでわからない説明ですね。私たちは「愛」という言葉を普通に使っているので、いざその意味を問われるとうまく説明できません。あまりに当たり前すぎて説明できないのです。その「愛」の意味を少し考えてみましょう。

 一番最初に思い浮かぶのが「恋愛」の「愛」です。そして次に「親子愛」とか「動物愛」のような場合の「愛」を思い浮かべます。この「恋愛」の「愛」と、「動物愛」の「愛」は同じ感情でしょうか。どう考えても違う感情ですよね。それなのに「愛」という同じ言葉で表現されるので、共通しているもののように感じられます。確かに「他者をいとおしく思う気持ち」という意味で共通していると言えるかもしれません。しかし、「友情」という気持ち同じように「他者をいとおしく思う気持ち」であり、なぜ、友情に「愛」という言葉を使わないのかうまく説明できなくなるのではないでしょうか。

 こう考えると、必然的な理由によって「愛」という言葉があるのではないということがわかります。友情には「愛」という言葉を使わなかったのは偶然の要素でしかないと思われます。

 「恋人同士」「親子」「動物」に対しては「愛」という言葉を使って、「友達」には使用しないというのは筋の通る理由なんかありません。なんらかの偶然的な理由によって「愛」と表現してきたものと、「愛」という言葉を使わなかっただけなのです。タマタマなのです。様々な感情を「愛」という言葉によって一つのカテゴリーに分類し、一つのものとしてとらえているだけなのです。

 つまり「愛」という言葉によっていろいろな感情の中の、いくつかの感情が一つの感情として存在しはじめていると言えるのです。
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