とにかく書いておかないと

すぐに忘れてしまうことを、書き残しておきます。

劇評『足跡姫』(1月23日 野田地図公演・東京芸術劇場)

2017-01-25 05:56:32 | 演劇
 作・演出 野田秀樹
 出演   宮沢りえ 妻夫木聡 古田新太 佐藤隆太 鈴木杏 池谷のぶえ 中村扇雀 野田秀樹 他

 すばらしい舞台でした。「中村勘三郎へのオマージュ」とうたっての公演ですが、勘三郎さんへの思いが伝わると同時に、演劇の素晴らしさを伝える美しい舞台でした。

 私が野田秀樹の芝居を初めて見たのは、野田さんが岸田戯曲賞を受賞してすぐの「野獣降臨」の再演の時でした。もちろん「夢の遊眠社」時代。今調べてみたら1984年でした。本多劇場です。当時は「チケットぴあ」ではなく、プレイガイドでチケットを買う時代でいた。(「チケットぴあ」は存在はしていました。)神田の書泉グランデで買ったような記憶があります。発売日でもなかったのですが、前から3列目でした。そこで見た舞台は私を興奮させました。「演劇って自由なんだ。」と感じたのです。

 演劇は舞台があるので、その舞台で演じなければならないという「制約」があると感じていました。しかし、野田さんの舞台は、観客の想像力を刺激し、舞台上がどこにでもなります。時間も空間も自由に行き交う。さらに同じ役者が何役にもなります。誰にでもなることができ、どこにでも行ける。舞台の上には自由があったのです。これは映画にはできないことです。小説にもできない。それまで古い表現ジャンルだと思っていた演劇が、一番刺激的な新しい表現方法だと感じました。

 今回の『足跡姫』はそのころの感動を思い出させるような内容の話でした。舞台の上に穴を掘り、そこから地球の裏側にまで行くことができる。どこにでも時空を超えて行くことができる。実は実際にはそこまで穴を掘ることができない。しかしそこにはそこにみんなの思いがあれば、みんなの想像力があれば、世界はどこにでもつながっている。演劇の可能性を感じさてくれました。

 中村勘三郎さんの追悼公演でもあります。勘三郎さんの演劇界に残した足跡が決して消えることがない。いや時空を超えてきっと永遠に広がる、そんな思いが伝わる舞台でした。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする