『2020年の大学入試問題』と同じ著者の本。内容的にも重なる。しかし、こちらのほうがうまくまとめられているし、読みやすい。
筆者の言うことはよくわかる。賛成することが多い。しかし大学入試問題が筆者の言うとおりに変わっていくのかは疑問である。もちろん変わってほしいのだが、そう簡単にいくのだろうか。筆者の言うように大学入試問題が変化した場合、採点はどうするのか。何を基準にして採点するのか。その場合の客観的公平性が保たれるのか。逆にそういう問題に対する指導の在り方はどうあるべきなのか。高校教師側への研修の機会は保証されるのかなど、まったく議論されてきていないのである。このままでは結局何もかわらないのではないかという心配のほうが強い。
筆者の問題提起は十分納得できる。しかし伝統的な教育にもいいところはあり、それをすべて否定するわけにはいかない。大学入試改革の看板は掲げられているが、いまだにどうなるのかその方向性は明確ではない。これでは現場からの強い反発が予想される。
文部科学省に強いリーダーシップを期待したい。