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ブログ掲載500回記念・魅了する大壺の彷徨える焼成地論・その10

2016-08-02 06:23:56 | 北タイ陶磁
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「魅了する大壺の彷徨える焼成地論・その7」で焼成地不詳の1)、3)と4)は、どこ産であろうか?・・・として、その8、9で1)の大壺の詮索をしたが、結論は得られなかった。ここで焼成地不詳の1)、3)と4)を再掲する。
1)ラオスからもたらされた一群の壺をアデレード大学のドン・ハインはラオス産とし
  ているが、これは北タイ産と思われるものの、詳細な産地は不詳
3)関千里著「ベトナムの皇帝陶磁」Page226-227のパーン青磁印花文大壺、焼
  成地は不詳なるも、パーン陶磁の可能性は限りなく低い。
  「東南アジアの古美術」Page220に掲載されている、図番K-1でしめされた青磁褐
  釉象魚印花文壺を、関氏はSankampaeng or Payao 16th centuryと記されている
  件であるが、これはサンカンペーンの可能性大である
4)郡家美術館展示のパーン青磁刻文双耳壺・2点は、パーンの可能性は限りなく
  低いが、具体的焼成地は判断できない
そこで今回は3)の詮索である。
北タイでは象の鉄絵文様は見ないが、印花文や刻花文、掻き落文は存在する。各々各窯の特徴を見ることができるので、先ずそれを下に掲載する。
サンカンペーンの象印花文の種類は多くない。特徴は目に相当する部分が三日月形状である。ピクンの花ないしは日輪を表した印花文は、サンカンペーンの常用文様である。また蔓のようなジグザグ文もサンカンペーンの特徴である。
従って、関千里氏が、「東南アジアの古美術」Page220に掲載されている、白黒の写真(図番K-1)で示された青磁褐釉象魚印花文壺頸部(上のスケッチ)を、関氏はSankampaeng or Payao 16th centuryと記されている件であるが、これはサンカンペーンで在ることは先に示したとおりである。
象の印花文は他にパヤオとナーンに存在する。パヤオのそれは、サンカンペーンやナーンに比較し、文様にリアリティーさを認め、牙が表現されている。下の2つの事例はいずれも牙を持っている。
牙は、印花文だけではなく掻き落文にも認められる。つまり牙を持つ象文様はパヤオの特徴である。

次に、ナーンの象の印花文を紹介する。

象文様の違いを御覧頂けたと思っている。そのように見ると、関千里氏が「東南アジアの古美術」Page220に掲載されている、白黒の写真(図番K-1)で示された青磁褐釉象魚印花文壺はサンカンペーンであることが、理解頂けると思われる。
パーンには象の刻花文を見ることができる。それが下のスケッチである。
そして、当該ブロガーの浅薄な管見乍ら、パーンで印花文の存在を未だ知らない、見た覚えがないのである。
従って、関千里著「ベトナムの皇帝陶磁」Page226-227のパーン青磁印花文大壺、焼成地は不詳なるも、パーン陶磁の可能性は限りなく低い。つまり印花文はパ-ンには存在せず、釉薬が黄褐色ないしは肌色に発色している。パーンはほぼ例外なく青磁の翠色に発色する。
では、どこかとなるが、写真の解像度が低く、印花文形状を読みとれないので、判断できない。感じとしてはサンカンペーンに似ていなくもないが、ラオス帰りだとすると、サンカンペーンの可能性も低くなる。結局、産地の特定はできない。




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