リスタートのブログ

住宅関連の文章を載せていましたが、メーカーとの付き合いがなくなったのでオヤジのひとり言に内容を変えました。

留学する娘 前編

2016-08-21 08:28:00 | オヤジの日記
私は、バカ親なので、いくらでも自分の娘の自慢ができる。

いま大学3年の娘は、今年92歳になる私の母を尊敬していた。

娘が小学5年のとき、私の母が「夏帆ちゃんに介護してもらったら、こんなに幸せなことはないわ。この世に未練を残さずに死ぬことができるわね」と言ったのを真に受けて、娘は「私がおばあちゃんの介護をする。でも、おばあちゃんは死なせないよ」と言ったのである。

それから、娘は中学に進学し、介護の勉強ではなく、独学で英会話とハングル語の勉強をし始めた。

ハングル語を覚えようと思ったのは、娘が韓国の「少女時代」のファンだったからだ。
当時は、まだ日本ではデビューしていなかったが、YouTubeの映像を見て、娘はすぐにファンになった。
そして、歌詞を理解するために、ハングル語に興味を持った。

英語とハングル語の勉強は、高校に上がってからも続いた。
英語は「英検二級」、ハングル語は「ハングル能力検定四級」を取得した。

だから、私は、娘は大学で語学部に入るものだとばかり思っていた。

高校3年の三者面談。
担任から、「娘さんは、MARCHレベルの大学に入る学力があります」と言われた。
それを聞いて、私と同じ大学に入ってくれたら嬉しいのだが、と勝手に思った。

しかし、娘は毅然として言ったのだ。
「私は社会福祉学部のある大学に入りたいと思います。
祖母と約束をしたんです」

まさか、娘が祖母との8年前の約束を覚えているとは思わなかった。
それは、意外だったが、感動する言葉だった。

学校からの帰り、娘とファミリーレストランに寄った。

いいのか、MARCHにだって入れるかもしれないんだぞ。
私は、娘の意思が固いのを感じながらも、あえて聞いてみた。

「確かにMARCHには入れるかもしれない。
でも、MARCHには、頭のいいヤツも沢山いるだろ。
入ったとしても『特待生』にはなれない。

でも、少し下のレベルの大学だったら、頑張れば特待生になれる可能性はある。
ボクは、それを狙っているんだよね」

娘は、我が家が、超絶なほどビンボーな家庭だということを理解していた。
だから、授業料を親に負担させることを不憫に思っていたようなのだ。

「授業料無料って、魅力的だよな」

娘は、その宣言通り、少し下のレベルの大学に入り、まったく休まずに授業を受け、「S」のフルマークをとった。
その結果、願いが叶って、特待生になった。

2年からの授業料が免除になったのだ。

授業料の免除が決まった日、娘が「お願いがあるんだけど」とヨメと私の前で、神妙な面持ちで頭を下げた。

「3年になったら、韓国に半年間、留学したいんだ・・・」

娘が、その決意を持っていることを私は薄々感じていた。
普段の娘との会話の中で、薄い表現ではあったが、「留学」をほのめかすものがあったからだ。

私は、バカ親ではあるが、バカではない。

息子や娘の「努力」や「健康」に関しては、絶えずアンテナを張って、彼らの動向をキャッチしていた。

我がヨメは、まるで最果ての無人島のように、アンテナが一つも立たない人なので、娘の告白にびっくり仰天だったようだ。
(ヨメは、子どもたちの病気にも気づかないことが、たまにある)

大学3年の後期だけ、韓国に留学したい。
娘は、具体的なプランを語りはじめた。

協定留学先は、アメリカ、カナダ、オーストラリア、中国、韓国などがあったが、渡航費が安く、生活費が安いことを考慮すると韓国しか選択肢はなかった。

「これから3年生の夏までに、アルバイトで百万円を貯めて、渡航費と生活費は自分で調達します。だから金銭的な迷惑はかけません。それに、アルバイトをしても絶対に成績は落とさない」

留学先の授業料に関しては、特待生の場合、大学側が負担してくれるという。
単位も向こうで取ったものが反映されるというから、卒業時の単位取得に影響はない。
だから、渡航費と生活費だけを用意すれば留学はできる、と娘は言った。

我が家が、どビンボーでなければ、アメリカ留学もさせてあげられたろうが、娘は最初から、それは諦めていたようだ。

韓国で「社会福祉」の勉強をするのか、と聞いた。

「いや、社会福祉は国によって制度が異なるから、参考にならない。ボクは、大学で1年間勉強してみて、日本の社会福祉の仕組みは、ほとんどわかった。だから、韓国に行くのは、社会福祉の勉強のためではない」

韓国の大学では、英語のクラスに入るのだという。

「だって、介護が必要なのは、日本人だけではないだろ?
ボクは、グローバルな気持ちで、色々な人たちを介護したいのさ。
そのためには、英語は必須だろ」

まあ・・・確かに。

反対する理由はなかった。

娘は宣告通り、2年から、昼は大学に通い、夜は近所のスーパーマーケットでアルバイトをして、今年の7月までに100万円を貯め、留学準備を完全に終えた。

2年次の成績も「S」のフルマークだった。
(特待生でなければ、留学中の授業料が免除にならないので、娘は必死だった。絶えず寝不足だった)


留学の話を初めてしたとき、娘は、こんなことも言っていた。

「それに、韓国に行く理由は、もう一つあるんだよね」

ユナちゃんのことだな?

「よくわかったな」

繰り返すが、私はバカ親ではあるが、バカではない。
私が娘のことで知らないのは、娘が毎日どんな夢を見ているか・・・ぐらいだ。


・・・と、ここまで打ったところで、長くなり過ぎたことに気づいた。


この続きは、次回になります。