中央線は、よく遅延する。
人身事故だったり、車両故障、信号故障、ホームで誰かが自由な行動をして、確認のため停まったり、というのがよくある。
先々週は、7時台の混雑した車両に乗っていたとき、西荻窪での救護活動のために遅れたことがあった。
救護活動なら仕方ないか、と気長に構えていたが、それなりに長い時間、吉祥寺で停車していた。
現況はどうだろうか。
社内のアナウンスでは、「救護活動のため」としか言っていない。
試しに、ツィッターの情報を見てみた。
その中で、トンチンカンなことを言っている人を発見した。
「今日もやりたい放題だな! 中央線。混雑のために遅延って、そんなの理由になるか!」
この人は、本当に中央線に乗っていたのだろうか。
アナウンスでは、「混雑のための遅延」とは言っていない。
車内やホームでのアナウンスは「救護活動のため」と言っていたはずだ。
どこを拡大解釈したら、「救護活動のため」が「混雑のための遅延」と脳内変換できるのだろうか。
過去にも、こんなことがあった。
武蔵境駅から東京駅に向かう朝の車内での出来事。
中央線が信号故障のため、突然停まった。
そのことは、すぐ車内アナウンスで流れた。
「信号の復旧まで、今しばらくお待ちください」
しかし、このアナウンスを聞いた隣の大学生らしい男の2人連れが、耳を疑うようなことを言ったのだ。
「何だよ、武蔵境で人身事故だって? どうせ、亜大の学生が飛び込んだんだろうよ」
「ツイートしてやろうか」
「ああ、やれよやれよ」
この若者の脳の中では、なぜか「信号故障」が「人身事故・亜大生飛び込み」に変換されたようなのだ。
世の中には、こんな特技を持った人が、少なからずいるようだ。
いま私は、週に1回ボランティアで、ご老人2人にパソコン操作を教えていた。
そのうちの一人、自称「江戸っ子」のキムラのオジイちゃんは、面白い人だ。
東京生まれだから、自分を「江戸っ子」だと仰っている。
しかし、生まれも育ちも東京武蔵野。
確かに、広い解釈をすれば、江戸も「武蔵の国」の一部だから、同じように「武蔵の国」の武蔵野も「江戸」と言えるかもしれない。
ただ、基本的には、山王權現、神田明神の氏子、檀家で、3世代以上続いた家の人を「江戸っ子」と呼ぶのが通説だ。
しかし、キムラのオジイちゃんは、自説を譲らない。
「俺は、東京生まれなんだからよ! 江戸っ子だろうが!」と言い張る。
まあ、いいでしょう。
江戸も武蔵の国の一部という範疇でくくれば「江戸っ子」ですからね。
お二人には、文字の入力を最初に教えた。
ローマ字で打った方が、覚えやすいですよ。
「なんで、日本人がローマ字なんだ。かなで打たせろよ」
わかりました。
打ってみましょう。
「おい!
このでたらめな文字の並びはなんだ!
アイウエオじゃないのかよ!」
はい、ほとんどのキーボードの配列が、このようになっております。
「これを作ったヤツはバカだな!
日本語を知らねえんだろ!
『西洋もん』は、だから好きじゃねえんだよ!」
「で・・・ローマ字ってのは、アルファベット順になっているのかい」
いえ、順番になっていません。
「バカだな、おい!
これ、考えたヤツは、本当にバカだな!
アルファベット、バラケさせて、何の得があるんだ!
あんた、これ見て頭に来なかったのかよ!」
いや、別に。
これが、普通だと思っていたので・・・。
キムラのオジイちゃんの言いたいことはわかるが、キーボードの配列をすべて否定されてしまったら、授業が先に進まない。
だから、とりあえず、ローマ字入力で、まずご自分の住所と名前を打ってみましょうか、と提案した。
「江戸っ子は、細かいことが嫌いだからよ。
できねえかもしれないが、やってみるか」
武蔵野市、と打ちましょうか。
musasinosi と打ってください。
スペースキーを打つと変換されます。
「スパイシーだって? スパイシーって、美味いって言う意味だよな」
(それは、確実に違うと思いますよ)
一番下の列の大きなキーをスペースキーと言います。
「スペシャルか? 一番っていう意味だよな」
(いや、それも違うのではないか・・・と)
すべて違う言葉で脳内変換されているようだ。
「まあ、いいわ・・・次は境だ」
sakaiと打ちましょう。
・・・・・と打ったところで、90分が経過した。
では、この続きは、次回ということで。
でも、すごいじゃないですか。
武蔵野市境まで打てたんだから、進歩ですよ。
「でもな、先生よお。
俺んちの住所、武蔵野市境じゃねえんだよな。
武蔵野市境南町なんだよ。
まだ続きがあるんだ」
時間は超過しましたが、kyounannchouまで打ってもらった。
「なんか、やたら文字が多いな。
ローマ字考えたヤツは、やっぱりバカだな!
こんなまわりくどいことしていたら、指がつっちまうわ」
そして、キムラのオジイちゃんは、最後にこう言ったのだ。
「パコソンって、本当に必要なのかよ!」
いや・・・キムラのオジイちゃん、そこは「パコソン」ではなく「パソコン」ではないかと・・・。
(だが、いまだに、キムラのオジイちゃんは、何度注意しても『パコソン』で押し通している。恐るべし)
人身事故だったり、車両故障、信号故障、ホームで誰かが自由な行動をして、確認のため停まったり、というのがよくある。
先々週は、7時台の混雑した車両に乗っていたとき、西荻窪での救護活動のために遅れたことがあった。
救護活動なら仕方ないか、と気長に構えていたが、それなりに長い時間、吉祥寺で停車していた。
現況はどうだろうか。
社内のアナウンスでは、「救護活動のため」としか言っていない。
試しに、ツィッターの情報を見てみた。
その中で、トンチンカンなことを言っている人を発見した。
「今日もやりたい放題だな! 中央線。混雑のために遅延って、そんなの理由になるか!」
この人は、本当に中央線に乗っていたのだろうか。
アナウンスでは、「混雑のための遅延」とは言っていない。
車内やホームでのアナウンスは「救護活動のため」と言っていたはずだ。
どこを拡大解釈したら、「救護活動のため」が「混雑のための遅延」と脳内変換できるのだろうか。
過去にも、こんなことがあった。
武蔵境駅から東京駅に向かう朝の車内での出来事。
中央線が信号故障のため、突然停まった。
そのことは、すぐ車内アナウンスで流れた。
「信号の復旧まで、今しばらくお待ちください」
しかし、このアナウンスを聞いた隣の大学生らしい男の2人連れが、耳を疑うようなことを言ったのだ。
「何だよ、武蔵境で人身事故だって? どうせ、亜大の学生が飛び込んだんだろうよ」
「ツイートしてやろうか」
「ああ、やれよやれよ」
この若者の脳の中では、なぜか「信号故障」が「人身事故・亜大生飛び込み」に変換されたようなのだ。
世の中には、こんな特技を持った人が、少なからずいるようだ。
いま私は、週に1回ボランティアで、ご老人2人にパソコン操作を教えていた。
そのうちの一人、自称「江戸っ子」のキムラのオジイちゃんは、面白い人だ。
東京生まれだから、自分を「江戸っ子」だと仰っている。
しかし、生まれも育ちも東京武蔵野。
確かに、広い解釈をすれば、江戸も「武蔵の国」の一部だから、同じように「武蔵の国」の武蔵野も「江戸」と言えるかもしれない。
ただ、基本的には、山王權現、神田明神の氏子、檀家で、3世代以上続いた家の人を「江戸っ子」と呼ぶのが通説だ。
しかし、キムラのオジイちゃんは、自説を譲らない。
「俺は、東京生まれなんだからよ! 江戸っ子だろうが!」と言い張る。
まあ、いいでしょう。
江戸も武蔵の国の一部という範疇でくくれば「江戸っ子」ですからね。
お二人には、文字の入力を最初に教えた。
ローマ字で打った方が、覚えやすいですよ。
「なんで、日本人がローマ字なんだ。かなで打たせろよ」
わかりました。
打ってみましょう。
「おい!
このでたらめな文字の並びはなんだ!
アイウエオじゃないのかよ!」
はい、ほとんどのキーボードの配列が、このようになっております。
「これを作ったヤツはバカだな!
日本語を知らねえんだろ!
『西洋もん』は、だから好きじゃねえんだよ!」
「で・・・ローマ字ってのは、アルファベット順になっているのかい」
いえ、順番になっていません。
「バカだな、おい!
これ、考えたヤツは、本当にバカだな!
アルファベット、バラケさせて、何の得があるんだ!
あんた、これ見て頭に来なかったのかよ!」
いや、別に。
これが、普通だと思っていたので・・・。
キムラのオジイちゃんの言いたいことはわかるが、キーボードの配列をすべて否定されてしまったら、授業が先に進まない。
だから、とりあえず、ローマ字入力で、まずご自分の住所と名前を打ってみましょうか、と提案した。
「江戸っ子は、細かいことが嫌いだからよ。
できねえかもしれないが、やってみるか」
武蔵野市、と打ちましょうか。
musasinosi と打ってください。
スペースキーを打つと変換されます。
「スパイシーだって? スパイシーって、美味いって言う意味だよな」
(それは、確実に違うと思いますよ)
一番下の列の大きなキーをスペースキーと言います。
「スペシャルか? 一番っていう意味だよな」
(いや、それも違うのではないか・・・と)
すべて違う言葉で脳内変換されているようだ。
「まあ、いいわ・・・次は境だ」
sakaiと打ちましょう。
・・・・・と打ったところで、90分が経過した。
では、この続きは、次回ということで。
でも、すごいじゃないですか。
武蔵野市境まで打てたんだから、進歩ですよ。
「でもな、先生よお。
俺んちの住所、武蔵野市境じゃねえんだよな。
武蔵野市境南町なんだよ。
まだ続きがあるんだ」
時間は超過しましたが、kyounannchouまで打ってもらった。
「なんか、やたら文字が多いな。
ローマ字考えたヤツは、やっぱりバカだな!
こんなまわりくどいことしていたら、指がつっちまうわ」
そして、キムラのオジイちゃんは、最後にこう言ったのだ。
「パコソンって、本当に必要なのかよ!」
いや・・・キムラのオジイちゃん、そこは「パコソン」ではなく「パソコン」ではないかと・・・。
(だが、いまだに、キムラのオジイちゃんは、何度注意しても『パコソン』で押し通している。恐るべし)