「これ買ってきたんだよ」と大学4年の娘がテーブルに紙袋を置いた。
開けてみると、猫ちゃん柄のパジャマだった。
それも2人分あった。
「ペアパジャマだ。一緒に着ようぜ」
それを見ていたヨメが、「なに? キッモチ悪いー!」と言った。
「え? ペアルックじゃないぞ。ペアルックは気持ち悪いけど、ペアパジャマは、いいんじゃないか。誰も見ていないんだし」
いいのか、高かったんじゃないのか。金払おうか、と私が言うと、娘が「それじゃ意味ないんだよな。バイトの給料で買うってことが重要なんだよ」とパジャマの入った袋を叩いた。
私は一年中、部屋では半袖半ズボンである。パジャマを最後に着たのは、いつだったか・・・思い出せないほどの大昔だ。
その私が、娘と同じ柄のパジャマを着るというのは、自分でも意外すぎて、笑うしかない。ただ、その笑いは、ニヤケ笑いであるが。
お互いのパジャマ姿を見て、娘が「おお、ピッタリだったな! これで寒い冬も乗り越えられるな」と言った。
きっと娘は、今年の冬は特別寒いから、半袖半ズボンの私を憐れに思って、長袖長ズボンのパジャマを買ってくれたのだろう。私一人分だと着ないかもしれないので、わざわざペアを選んだのだろう。
あったかーーいなあ。
ところで、武蔵野のオンボロアパートに住んでいた頃、私は不思議に思っていたことがあった。
なぜ娘や息子は、こんなオンボロアパートに、友だちを連れて来られるのだろう、と。
私だったら、恥ずかしくて出来ない。
こんな築30年以上のオンボロアパートに住んでいるところを友だちに見られたくない。
しかし、子どもたちは平気なのだ。
特に娘などは、高校時代の同級生6人を連れてきて、「おい、メシを食わせろ」と命令することが当たり前になった。
タコ焼きパーティ、餃子パーティ、焼き肉パーティなどを月に最低2回はした。
その6人たちは、大学3年の後期、娘が韓国に留学していたときも我が家にやってきた。
「ねえ、パピー、ハンバーグ食べさせて」「スープカレーが食べたい」などと言って、各自食材を持ち寄って、やって来るのだ。
娘がいないのに来る、というのが、とても不思議だった。
だから、娘のお友だちの双子の姉妹・アミユミ(PUFFY?)に聞いてみた。
なんで、こんな汚ったねえアパートにやって来るの?
するといつも辛口のことを言うユミちゃんに、怒られた。
「あのさあ、パピーは、建物の外観で人や物事を判断すんの? ということは、パピーは、外見で人を判断するってこと? それって、最悪じゃん。外見と本質は違うよね。私たちは、来たいから来てるんだよ。ここに来たい理由があるから来てるんだよ。わからないかなあ」
おそるおそるお伺いを立ててみた。
その来たい理由とは?
ユミちゃんが、私のことを指さしながら言った。
「だって、夏帆のパピーやマミーってバカじゃん!」
アミちゃんがフォローした。
「それは、頭が悪いバカって意味じゃないからね。なんか普通の大人とは違うバカの雰囲気を持ったバカだからさ。落ち着くんだよね」
それ・・・フォローになっているのか?
要するに、バカってことだろ。
「バカじゃないよ。いい意味でバカってことだよ」
よくわかりませんけど、「バカ家族」が居心地がいいってことかな。
「そうだね」
それは、褒め言葉なのか。
俺たちは、このまま「バカ」でいいのか。
嬉しいような、そうでないような・・・・。
でも、嬉しいかな。
昨日もアミユミちゃんが我が家にやってきて「カレーおでんパーティ」を開いた。
そのとき、「パピーってバカじゃん」「バカじゃん」を20回以上言われた。
そのたびに、心がとても、あったまった。