我が家族が住むオンボロアパートの庭の段ボール箱に住み着いた「セキトリ」という名の猫。
東日本大震災前から住み着いているので6年になる。
私には、動物の肛門を見て年をあてる特技があった。
肛門判断では、セキトリが居着いたとき、セキトリは1歳になっていなかったと思う。
だから、いま7歳くらいか。
人間で言えば、40歳くらいだろうか。
ナイス・ミドルと言っていい。
ノラ猫の寿命は、4歳くらいだというから、だいぶ長生きだ。
(段ボール箱に住み着いたとき、まわりの美人猫さんに悪さをしてはいけないと思ったので、去勢手術をしてもらった。それが、長生きの理由かもしれない)
セキトリのネグラは、段ボール箱だが、段ボールの壁を二重構造にしていたから、断熱効果があった。
屋根も付けた。
ドアは、ちょっと押しただけで開く仕組みだ。
だから、冬はそれほど寒くはないと思う。
そして、ご丁寧に防水シートで覆っているので、水にも強い。
さらに、アパートのひさしに、アウトドア用の日よけを付けているから、夏の日差しも直接は当たらない仕様になっていた。
おそらく、チョット快適。
セキトリには、私の話し相手になってもらっていた。
そのお礼として、メシを3食提供している。
一食は、カニかまやチクワ、カマボコ、シラスなどを湯がいて塩分を落とし冷ましたものに、かつお節をかけたものを食わせていた。
あとは、ホームセンターでセールされている大袋に入ったキャット・フードだ。
ノラ猫にしては、毛並みはキレイな方だと思う。
ただ、顔はブッスだが。
ところで、我が家には、ここにきて引っ越し問題というのが持ち上がった。
セキトリをどうしようかという重大問題だ。
私以外の3人は、あまりセキトリと関わっていない。
だから、私は恐る恐る家族に、セキトリを連れて行きたいのだけど・・・と25回土下座した。
韓国留学中の娘にはskypeのビデオ電話に向かって土下座した。
娘は、「いいぞい」と言ってくれた。
それに対して、ヨメと息子は、「えー、ノラ猫でしょ」「飼うとしたら、もっと可愛いのがいい」と抵抗した。
しかし、私はめげずに、とりあえず一週間だけ家猫として家に入れてほしい、と26回土下座した。
二人は、渋々うなずいてくれた。
その作戦が功を奏した。
もともとヨメは猫好きである。
息子は、犬は好きだが、猫にはいつもそっぽを向かれる、と嘆いていた。
だが、セキトリは頭がいいから、初日から二人に媚を売ったのだ。
スリスリと近寄ったのである。
その結果、ヨメはデレデレ。
息子もデレデレ。
デレデレデレデレ。
「ブスだけど、いいよ」とお許しが出た。
ただ、この結果として、私には寂しい問題が持ち上がった。
想定していなかったことに、今までのセキトリとの会話が崩壊したのだ。
いままで、セキトリは私の相談相手になってくれていた。
今度の仕事は大変なんだよな。
ニュア(まあ、頑張れよ)
いまちょっと疲れ気味でな。
ニャーウ(そういうときもあるさ)
仕事がうまくいったぜ。
ニャニャ(そいつはよかったな)
今日はいい天気だな。
ニャーッ(うるさいよ。俺は寝るんだから邪魔すんなよ)
私のことを普通の変人だとは思わないでください。
究極の変人ですから!
そんな風に、セキトリとの会話が楽しみだったのだが、家猫になってからのセキトリは、甘え声の「ニャー」しか言わなくなった。
さらに、最初の頃は、私が呼ぶ「セキトリ」という呼び名にしか反応しなかったのに、最近ではヨメと息子が呼ぶ「ブス」にも「ニャー」と答えるようになったのだ。
おまえ・・・・・ノラ猫のプライドは、一体どこにいった。
ところで、先日、韓国留学中の娘が修了式を終えた。
修了試験では400点満点で397点だった。
マイナス3点は、娘のイージーミスだったようだ。
「普通だったら、絶対に間違えないのに!」と怒った。
だが、留学生200人中のトップだ。
それでいいだろう、と慰めた。
しかし、娘は、その大学で過去4人しかいない満点卒業を果たせなかったことが、とても悔しかったらしい。
帰りにスーパーでアサヒのスーパードライを2本買って、寮に帰る途中の公園でヤケ酒を浴びたという。
「390点なら諦めがついたのに!」
そんな娘が2月28日夜に帰ってくる。
そして、その日が我が家の引っ越し。
楽しみだが、忙しい一日になりそうだ。
そして、5人の新しい生活が始まる。
世界で2番目にブスな猫「セキトリ」でございます。
コラッ! ノラ猫としてのプライドを持て。
そして、最後に衝撃の映像。