リスタートのブログ

住宅関連の文章を載せていましたが、メーカーとの付き合いがなくなったのでオヤジのひとり言に内容を変えました。

闇から生まれた闇太郎

2017-06-11 06:41:00 | オヤジの日記

先週の日曜日、事情があって、非常識にも朝の7時過ぎに、極道コピーライターの横浜大倉山の事務所に押し掛けた。

 

ススキダは、すでに事務所にいてくれて、事務所のソファを私に貸してくれた。

毛布も貸してくれた。

そして、気持ち悪いことに、「まあ、ゆっくりと寝ろや」と言ってくれたのだ。

殴ってやろうか、と思ったが、すぐに眠りに落ちた。

起きたのは、12時半頃だった。

テーブルの上には、すでにカツサンドが置いてあった。

「食うか」と聞かれたので、クゥー、と答えた。

いつもならいるはずの実際の年より10歳は若く見える奥さんは、スポーツジムに行っていて不在だった。

極道顔を正面に見てカツサンドを食うのは、私の趣味ではないので、少し席をずらして食いはじめた。

クリアアサヒも用意してくれたので、豪華な昼メシと言ってよかった。

 

食っているとき、ススキダが「今年もベイが頑張っているから嬉しいよ」と意味不明のことを言った。

ベイ? ベイマックスのことか?

「ベイスターズだ!」

ススキダは、以前は私と同じアンチ・ジャイアンツで特定の球団のファンではなかったが、横須賀から横浜に越してきて、ベイスターズのファンになった。

しかし、それは、プロ野球に興味のない私には、どーでもいいことだった。

だが、無神経なススキダは、勝手に話を進めるのだ。

「去年久しぶりにAクラスに入って、クライマックスシリーズに出たときは興奮したぜ.レイコ(ススキダの奥さん)と一緒に、応援に行ったからな」

クライマッックスシリーズ? はあ?

詳しく説明してくれたが、モンゴル語を聞いているようで、私には理解不能だった。

だから、なに?

「だからさ、トーナメントに勝ち抜けば、3位でも日本シリーズに行けることがあるってことだ」

ほう、ベイスターズは、そんなに強かったのか。

「結局は負けたけどな。惜しかったよ」

3位か。ということはそれなりに勝ったってことだな・・・とススキダの分のカツサンドを横取りしながら、話に付き合ってやった。

 

「いや、負け越したんだ」

 

はあ? 負け越したのに、クライなんとかに出られるのか?

負け越したってことは、弱いチームってことだろ。弱いチームが、クライなんとかに出ちゃダメだろ。

「Aクラスは、出られるんだよ。そういうルールだ」

だが、それはおかしくないか。負け越した弱いチームが、もし何らかの奇跡が起きて日本一になったら、ペナントレースを大きく勝ち越して優勝したチームとファンは納得しないだろう。

「それがルールだから仕方がない」

つまり、そのルールを考えた人は、頭が悪いってことだな。小さな可能性を考える頭がなかったのだな。

「しかし、結局は負けたんだから、問題ないだろう。だが、Aクラスに入ったってことは、監督にも選手にも自信がついたと俺は思うぞ。だから、今年が楽しみなんだ。絶対に今年は、いい成績を残すと俺は思っている」

じゃあ、今年は勝ち越しているんだな。

「いや、負け越している」

 

はあ?

 

「でも、3位だからな、いま立派なAクラスだ。このままいってくれたら最高だ」

ススキダ。

「なんだ?」

野球ファンって、お気楽だな、平和だな、ノーテンキだな。

 

「いや、俺には、お前の方が、ノーテンキに見えるぞ」

 

おまえは、人を見る目がない。

俺は、フォースの暗黒面から生まれた男だ。

俺は、「闇から生まれた闇太郎」なんだよ。

ノーテンキな闇太郎などいないんだ。

・・・と、薄い胸を張った。

 

ススキダに、鼻で笑われた。

あご髭を毟り取ってやろうかと思ったが、「クリアアサヒ、もう一本飲むだろ?」と言われたので、はい、アリガトウゴザイマス、喜んで、と答えた。

 

そのあと、ススキダのパソコンを借りて、仕事をした。

帰りは、ススキダの奥さんの運転で、横浜大倉山から東京国立まで送ってもらった。

車内では、ずっと眠っていた。南武線谷保駅のそばまで来たときに目覚めた。

「夏帆ちゃんに連絡しておきましたから、マンションの前で待っているはずですよ」とススキダの奥さんが言った。

マンションの前。

確かに、娘が待っていた。

手を振る姿を見て、目が潤んだ。

 

ススキダの奥さんに礼を言い、頭を深々と下げた。

娘も下げた。

 

 

それから、闇太郎は、家に帰って、普通のお父さんになった。

 

(娘のツッコミ・・・おまえ、普通じゃないだろ!)