微妙な結果だった。
ヘモグロビンの数値が10.3だったのだ。
11に届かなかった。
昨日の土曜日は、夜行バスに乗って、娘と大阪に串カツツアーに行く予定だった。
私は、大丈夫だと主張したが、娘が「今回は延期しよう。向こうでなんかあったらヤバい。台風も来てることだし、来週まで待とう」とストップをかけた。
私は他人の言うことは聞かないが、娘の言うことは素直に聞く。
だから、延期することにした。
日曜日は、完全にオフの予定だったので、丸一日が空くことになった。
そこで、娘と立川ららぽーとに行くことにした(台風が来ても行く)。
娘だけではなく、娘のお友だちも一緒に行くことになった。
娘のお友だちのミーちゃんは、中学3年から高校1年にかけて、我が家に居候をしていた時期があった。
ご両親の離婚騒動に耐えられなくなって、我が家に避難してきたのだ。
ミーちゃんと娘は、同じ高校に進学した。
ちなみに、大学はお互い目指すものが違うので、違う大学に進んだ。
娘とミーちゃんは、顔も体型もよく似ていた。
双子に間違えられることは、しょっちゅうだ。
教師もたまに間違えることがあったという。
ただ、一番違うところは、娘は小食だが、ミーちゃんは大食いだというところだ。
タラコ1腹とゴマ塩で、米を三合も食うのである。
とても米が大好きな子で、米さえあれば、おかずは何でもいいというタイプだった。
ただし、こだわりがあって、味のついたチャーハンやピラフは嫌いだった。白米の味が純粋に好きなのだ。
食いっぷりは、ほれぼれするほどだ。
高校1年の4か月ほど、二人に弁当を持たせた。
娘は一段だったが、ミーちゃんの弁当は三段重ねだった。下二段が白米。それを毎日、米をひと粒も残さずに食べてくれた。嬉しかった。
居候をし始めた頃、ミーちゃんの衣類は、気を使って我々とは別に洗っていた。
しかし、「大変だから、みんなと一緒に洗ってくださいよ」と言われた。
洗った下着などを干していても、ミーちゃんは、まったく平気な顔をしていた。
それどころか、夏などは、娘と同じように下着姿で室内を平気で動き回った(私はパンイチですが・・・ガイコツのパンイチ・究極のクールビズ)。
娘がもう一人できた気がした。
中学3年の5月から高校1年の7月まで、ミーちゃんは我が家にいた。
合計で14か月。
私としては、娘のつもりでいたから、嫁に行くまで家にいてもらいたかった。
しかし、高校1年の7月に突然、立て続けに児童相談所と高校の校長から電話があった。
ミーちゃんの母親が、児童相談所と高校に相談に行ったようなのだ。
ミーちゃんは、父親と暮らしたかったが、ミーちゃんの親権は母親が得た。その結果はミーちゃんにとって不本意なものだった。
離婚調停は3か月で結論が出たが、その後も11か月間ミーちゃんは我が家にい続けた。
それが、イレギュラーな状態だということは私にもわかっていた。
しかし、ミーちゃんが帰りたがらなかったのだ。
児童相談所の人は、紳士的な言い方をしてくれたが、高校の校長はとても高圧的だった。
私を犯罪者扱いした。
「あんたには、常識がないんですか! これは、言ってみれば犯罪ですよ!」
犯罪を3回繰り返した(子どもを人質に取っているから、低能な教育者ほど強気だ)。
腹を立てた私は、モンスター・ペアレントになった(世間はモンスター・ペアレントに対して批判的だが、モンスター・ティーチャーの方が数が多いことを忘れている)。
では聞きますが、14か月間一度も挨拶に来ず、電話もしてこない母親は常識があるんですか。こっちは何度も電話しているのに、相手は出ないんですよ。父親に電話をしたが、「娘の好きにさせて」ですよ。それを知っていて、あんたは言っているんですか。この電話は録音してありますから、あんたを名誉毀損で訴えることもできますよ。犯罪という言葉を今すぐ撤回しなさい。
校長は、渋々だが謝ってくれた。
そのあと、ミーちゃんは「迷惑をかけてごめんなさい」と泣きながら頭を下げて、母親の元に帰っていった(迷惑なんかかけていないのに)。
全員でハグをして別れた。
そのあと、家族の誰もが、しばらく無口になった。
ミーちゃんのいない生活に慣れるまで、かなり時間がかかった。
しかし、母親と折り合いの悪いミーちゃんは、その後も月に最低2回は、我が家に泊まりにきた(いつかミーちゃんのお母さんに誘拐罪で訴えられるかもしれない)。
ミーちゃんが来ると、家が華やかになった。
そして、その度に、ミーちゃんが私に言った。
「パピーは、だんだんと高田純次化してきてるよね」(ミーちゃんは私のことをパピーと呼んだ)
「顔もそうだけど、テキトーなところと言葉に心がこもっていないところがそっくり」
そう言われると私は、いつも嬉しくなる。
20年前から言っていることだが、私の尊敬する人は、高田純次師匠、志村けん師匠、出川哲朗師匠、江頭2;50師匠だ。
口先だけで笑いを取らず、人の悪口も言わず、体を張って笑いを取る芸人さんが私は好きだ。
高田純次師匠に似ているというのは、最高級の褒め言葉だ。
嬉しい。
だから、その度にミーちゃんの頭をポンポンした。
ミーちゃんは「馴れ馴れしいんだよ」とは言うが、いつも顔は笑っていた。
私は、娘の結婚式とミーちゃんの結婚式では、号泣する自信がある。
これだけ濃密な時間を過ごしているのだ。
泣かない理由がない。
どうやら来週の串カツツアーに、ミーちゃんも来る気配だ。
アルバイト代が入ったばかりだというので、交通費は自分で出すという。
しかし、食費は私持ちだ。
きっと常識外れの数の串カツを食うのだろうな。
久しぶりにクレジットカードを使うことになりそうだ。
幸いにも、一週間延期したことで、楽しみが増えた。
ヘモグロちゃん、今度こそアゲアゲでお願いします(アゲアゲって、もう死語?)。