やっと涼しくなったと思ったら、今日はまた猛暑に逆戻り。本日、日刊いーしず地酒コラム【杯は眠らない】に、涼しくなったことを前提に「秋上がりの季節」という記事をUPしたのに、アテが外れてしまいました・・・。今年の8月は結局「暑い!」でフィニッシュしそうですね。記事では9月の県内地酒イベントスケジュールを掲載しましたので、ぜひ参加してくださいね!
今日は、先週参加した地酒イベントの報告です。
御殿場市新橋にある割烹『みなみ妙見』は、しずおか地酒研究会会員店として長いおつきあいの店。昨年、母親と一緒に行ったときは、話の流れで、ご主人池谷浩通さんのお母様の親友が、私の母の田舎(伊豆・修善寺)の幼馴染みだったことが判明し、その場でその親友を店に呼んでくださって、五十年?ぶりぐらいに再会した、なんてこともありました。今年7月の土用の丑には、家族全員でうなぎを食べに行き、すっかりお世話になったばかりです。
その、みなみ妙見さんで、SBS学苑沼津校一日講座『ふじのくに世界に誇れる地元食材との出会い~静岡県内産うなぎと銘酒白隠正宗』というイベントが、8月24日(土)に開催されました。
池谷さんが県産うなぎ、御殿場わさび、長泉産長ネギ、県産新米なつしづか等、県産食材を駆使したコース料理を紹介し、『白隠正宗』の蔵元杜氏・高嶋一孝さんが純米にごり、蔵付き酵母純米、生酛熟成3種を紹介するという贅沢なラインナップ(これで会費6000円は破格!)。
うなぎに生酛熟成という組み合わせは、試飲時、あまり食物を採らない自分の胃袋には、ちょっぴりヘビーだったんですが、高嶋さんの酒は、食材との食べ合わせや酒の温度によって、ハッとするような変化を見せ、食べずに呑むor呑まずに食べるのが無性にモッタイナイと思わせてくれました。
『白隠正宗』はオール純米酒の蔵になったため、出された酒もすべて純米酒。一般に、純米酒・純米吟醸酒は、醸造アルコールを添加した普通酒・本醸造酒・吟醸酒よりも食中酒向きというイメージを持ちます。
ただ、私の試飲能力では、アルコールの強さが全面に出る純米酒と、おだやかに仕上げたアル添酒では、どちらが食中酒向きかは判断がつきません。今回試飲したオール純米酒の中にも、アル添したようなキレやカドがあり、燗を付けてやわらかくすると純米らしくなる酒もありました。
後から添加して調整できるアル添酒と比べ、アルコールを自然発酵させる純米酒は、ある意味、難しい酒でもあります。開封するタイミング、温度、一緒に食べる食材・・・さまざまな条件に影響される。その意味では、面白い酒でもあります。
今回は、精米60~65%の純米酒という条件下で、にごり、特殊酵母、生酛と、ユニークな造り方のラインナップがそろったため、その面白さ、難しさがとてもよく理解できたと思います。
さらにいえば、生酛のようなヘビーな酒は、よい環境で熟成すれば、本当に素晴らしいビンテージになることもよく解りました。
生酛純米酒23BY(1年熟成)と、22BY(2年熟成)では、ビックリするほど変化していた。たった1年ですが、22BYの艶のある味わい。両方とも原料米は、麹は「誉富士」60%精米、掛は「あいちのかおり」65%精米。ともに静岡酵母NEW-5を使ってるので、スペックの違いはないはず。この違いが生酛由来なのか、保存の仕方なのか、その場では判断できませんでしたが、本当にビンテージ価格をつけても良い素晴らしい熟成酒でした。
一方、燗付けをすると、23BYのほうがしっくりくる。22BYはなんとなく、ぼや~んとしてしまう。不思議ですねえ・・・この違いも大変興味深いものがありました。
私個人の印象では、日本酒って、純米かアル添か、原料米が何か、酵母が何か(とくに新酒鑑評会で賞を狙うような酒には)重要なことかもしれないけど、日本酒の味はそんな型どおりの条件の違いだけでは語りきれないような気がする。
さらにいえば、造り手さんにとっては、仕込みのときにアルコールをどれだけ出すか。当たり前だけどやっぱり酒を造っているんですから、専門用語で言うところのボーメ(糖分)の切らし方=糖をどれだけアルコールに変えるかは本当に重要だろうし、後処理(加水や火入れや濾過や貯蔵)によって、ストレートで美味しく呑める、15度以上のアルコール酒に仕上げるには、どれも手を抜けないでしょう。アル添を全廃した純米オンリー蔵にとっては、ホント、腕の見せ所だと思います。
なんか偉そうに酒造りの話にまで突っ込んでしまってスミマセン。
池谷さんの料理はどれも申しぶんありませんでしたが、とりわけ酒肴としては、御殿場わさ
びのクキを御殿場の天野醤油に漬け込んだ肴、御殿場わさびをトッピングした鰻の白焼きちらし寿司が絶品でした。
最後にいただいた新米なつしづかの鰻重、鰻もさることながら、今年最初の新米に感動。美味しい米は酒のつまみになるんだって発見できました!
米、醤油、わさび・・・やっぱり日本酒に合うのは、ベーシックな和の素材なんだなあ。こういうことが解るのも、一人の料理人がまっとうな食材を使い、一人の蔵元の酒をじっくり飲み比べることができたからだと思います。
【杯は眠らない】で紹介した地酒イベントの多くは、より多くの銘柄や店を追いかける楽しさがありますが、酒歴を重ねてくると、こういう、落ち着いたイベントのほうがしっくりくるような気もする。池谷さん、高嶋さん、本当にご馳走様でした。