東北バス旅報告の続きです。5月21日は昼過ぎに仙台へ戻って駅ビルで牛タンカレーを食べ、東北本線(ローカル線)を乗り継いで岩手県花巻へ。仙台駅ではsuicaで入ったのに、新花巻駅ではsuicaが使えず。駅員さんから「どこから乗りました?」と訊かれ、「仙台から」と応えたら、「えっ??」とビックリ二度見されちゃいました。静岡人からすれば、仙台も花巻も同じ東北で、さほど離れてるって感覚はなかったのですが、実際は静岡―名古屋間ぐらい離れてるんですよね(苦笑)。
夕方、新花巻駅近くの【ケンジの宿】という格安ペンションにチェックイン。1泊朝食付きで3200円という価格ゆえ、あんまし期待はしてなかったのですが、風呂・トイレ・洗面所は共有ながら、お部屋は広くて清潔で、翌朝の朝食がビックリするぐらい美味しかった!かなりのヒロイモノでした。
21日夜は、富士錦と萩錦で杜氏を務める小田島健次さんと落ち合い、花巻駅近くの居酒屋【早池峰】で取材。以前、小田島さんの下で働いていた長野県在住の若手蔵人さんがちょうど小田島家に泊まりに来ていたので、3人で岩手の地酒と酒肴を堪能しました。このお店、掘り炬燵があって地方色満点!小田島さんが事前にオーダーしてくれたみたいで、メニューにある料理を端から全部、次から次へと出していただいて、取材そっちのけで夢中で飲み食いしちゃいました。
翌朝、小田島さんに宿まで迎えに来ていただいて、道の駅石鳥谷にある南部杜氏協会へ。南部杜氏による南部杜氏のための鑑評会・第96回南部杜氏自醸清酒鑑評会の一般公開に参加しました。日本で一番早い?朝7時30分から始まるきき酒会です。私は今回で3回目ですが、こんなに早い時間から参加するのは初めてです。
全国で活躍する南部杜氏協会所属の杜氏さんが出品するこの鑑評会、今年で96回という歴史あるコンテストです。吟醸酒の部、純米吟醸酒の部、純米酒の部の3部門あって、今年の出品点数は吟醸135醸341品(うち入賞100醸)、純吟94醸201品(うち入賞53醸)、純米69醸147品(うち入賞45醸)。審査員は岩手県工業技術センターの小田島智弥理事長を審査長とし、全国の国税局鑑定官室長、東北~北関東の各県研究機関の部長・主任研究員など総勢27名の専門家です。入賞率が6~7割という比較的穏やかな?審査のようですが、一般公開の会場では「入賞漏れ」の酒が窓際に並べられ、それはそれでシビアだな・・・と。
吟醸酒の部は1位から15位まで、純吟の部は5位まで、純米の部は3位までランキングが公表され、一般公開に続いて開かれた表彰式では、ランクインしたすべての杜氏・蔵元が表彰されます。壇上には岩手県知事が「総裁」という名目で来賓席中央に陣取り、花巻市長、北上市長、遠野市長、紫波町長、矢巾町長など南部杜氏支部管内の首長、JA組合長、地元新聞社社長、税務署長、職安所長等、公職のお歴々がズラリ。延々2時間、杜氏さんが入れ替わり立ち替わり壇上に登って賞状やトロフィーを授与され続けます。
旧態依然、といえばそのとおりなんですが、南部杜氏という職能集団がこの地域にとっていかに大きな存在か、そのコンテストで表彰されるということはいかに重いことかが、よく伝わってきました。かつて首位賞には国から大蔵大臣賞が授与されていたそう。自ら蔵人を率い、雇い先ではよりよい条件で働きたいと願う杜氏さんにとって、箔を着ける意味でも大事なコンテストだったろうと思います。
今年の首位賞(吟醸酒の部1位)は福島県の【会津吉の川】。なんと昨年に引き続いて2年連続の首位賞です。静岡県は上位入賞はなりませんでしたが、吟醸酒の部で「臥龍梅」「富士錦」「富士正」、純吟の部で「正雪」「富士錦」、純米の部で「臥龍梅」「出世城」「正雪」「富士錦」が入賞しました。臥龍梅の杜氏菅原富男さんは、ゴールデンウィークまで清水で酒造りが続き、故郷へ帰ってきてからは南部杜氏協会理事として鑑評会準備に追われ、この日も会場案内役で走り回っていました。
昼過ぎに表彰式が終わり、静岡から駆けつけてこられた富士錦酒造の清信一社長や小田島さんとお昼をご一緒し、午後は一人で南部杜氏伝承館、石鳥谷歴史民俗資料館、農業伝承館をじっくり見学しました。ここも訪れるのは3回目ですが、一帯が【道の駅石鳥谷】として整備されてからは初めて。道の駅で酒の施設って大胆だなあと思いつつ、酒造りの文化がこの地域の日常にいかに溶け込んでいるかが伝わるようです。
南部杜氏伝承館で、岩波映画【南部杜氏】を久しぶりに最初から最後までじっくり観賞しました。この映像に触発されて映画作りを試みて、いまだ道半ば・・・。でも昭和62年に制作されたこの映像がいまだにこうして活かされているんだと思うと、「何年かかっても記憶に残る映像を残そう」という熱意がフツフツと甦ってきます。
石鳥谷農業伝承館では、【石鳥谷はたおり同好会】の皆さんが体験室で昔懐かしい機織をされていました。「頭や指先を使うからボケ防止にちょうどいいのよ~」とお母さんたち。ちゃんと動く機織機がそろっていて、実際に活用されているって羨ましいですね。
鑑評会行事の後片付けがひと段落したところで、世話役で奔走していた磯自慢の杜氏・多田信男さんと落ち合い、多田さんのご実家がある北上へ。【吟醸王国しずおか】の撮影でお世話になって以来、7年ぶりに奥様や長男ご夫妻にご挨拶し、多田さん行きつけの銘酒処【枕流亭】へ。店主岡島芳明さんに「新政」やら「十四代」やら東北自慢の希少酒を(多田さんの解説付きで!)ふるまっていただいて、眠気や疲れも吹っ飛びました(笑)。
途中から多田さんの同級生が合流され、焼津では見たことのない名杜氏のくつろいだ笑顔にホロッとさせられました。二次会では同級生さん行きつけのカラオケスナックにご案内くださって、北上在住の演歌歌手観音めぐみさんや作曲家原田孝二さん(こちらを参照)とご一緒し、大いに盛り上がりました。
磯自慢は南部杜氏鑑評会では入賞しませんでしたが、晴れがましい壇上でお偉いさん方から表彰されなくても、多田さんの功績は地元の人々が熟知していて、我がことのように誇りに思う、まさにその現場に居合わせることができて、今回の東北弾丸旅の真の目的が達成できた感がありました。
22時30分北上駅発の夜行バスに乗って東京へ。早朝の新幹線で静岡へ戻り、23日朝10時からFM-Hi のスタジオで【かみかわ陽子ラジオシェイク】の収録に飛び込みセーフ。昨日(6月2日)のオンエアを聴いたら、前夜のカラオケでムチャしすぎたせいかガラガラで低すぎて酷い声 お聴きになった方がいらしたら申し訳ありませんでした