2月16日から21日まで京王百貨店新宿店で『静岡うまいもの大会』が開催されました。2017年から2021年まで西武百貨店池袋本店で開催した『静岡ごちそうマルシェ』から続く静岡県商工会連合会主催の食の物産展。昨年から京王新宿店に場所を移して2度目。通算6度にわたり、会場の一角で静岡県の地酒をプロモーション販売させていただきました。備忘録のつもりでレポートさせていただきます。
今年の出品蔵元は『金明』(御殿場)、『白隠正宗』(沼津)、『富士錦』(富士宮)、『英君』(由比)、『萩錦』(静岡)、『杉錦』(藤枝)、『小夜衣』(菊川)、『花の舞』(浜松)の8銘柄。
金明・萩錦・小夜衣は大会6度目にして初参加。地域密着の中小の食の担い手を大規模市場で紹介するという商工会の開催趣旨にのっとり、「静岡には(都内で知名度のある)開運・正雪・磯自慢以外にも素晴らしい酒がある」ことをアピールできればと思い、こちらの発注本数に対応可能と思われる蔵元にお声かけした次第。静岡酒ファンと思われるお客様から「マユミさんらしいセレクトですねえ」と評価?していただきました。
ただし、京王の催事チラシでこの3銘柄を写真付きで紹介してもらったので、京王側から「欠品は許さず」という厳しいお達しがあり、他銘柄よりも1~2ケース多めの仕入れ。ショーケースを埋め尽くした瓶に最初はおののいてしまいました💦
そんな不安は杞憂に終わり、萩錦は蔵元杜氏の萩原綾乃さんが仕込み期間中にもかかわらず19日(日)に来店してくださったこともあり、用意した生酛純米大吟醸720ml、「土地の詩」純米無濾過生原酒720mlと1,8lは見事完売!
小夜衣は蔵元の来店なしにもかかわらず、純米ワンカップ180ml、しぼりたて特別純米無濾過生原酒720ml、純米吟醸限定秘売品プレミアム720ml、2003BY古酒浪漫720mlが完売。とりわけ、何の能書きも付けていない秘売品プレミアムと20年熟成古酒が、試飲もなしで完売するとは予想できず、売れ残ったら自分で買おうと思っていたのでビックリ大感激!。もちろんセールストークに力は入れましたが、期間中、秘売品プレミアムを買ったお客様が「美味しかったから」と再来店して2本目を買ってくださり、これは完全にファンになってくれたな!と手応えがありました。際だって個性的な酒は、大きなマーケットになればなるほど強いんだなあとしみじみ・・・。
金明は御殿場以外では県内地酒専門店以外、販売チャネルがほとんどなく、蔵元来店なし、ラベルに酒米や酒質データの表記もなしで、セールストークに苦戦しましたが、それでも私がぜひ出品してほしいと蔵元根上さんにお願いした特別純米「富士自慢」720mlが完売。初日に来店してくださった杉錦蔵元杜氏の杉井均乃介さんが、根上さんに電話し「この酒の特徴は何て説明したらいい?」と聞くというファインプレーもあり、代表銘柄の金明純米酒720mlも30本近く売れました。
今回新たに日本酒バーを開設し、一升瓶のない金明を除いた7銘柄に加え、京王側からのたっての希望により『磯自慢』(焼津)、『初亀』(藤枝)を特別出品。併せて9銘柄をシャッフルして3グラスセット(880円)にし、これを6セット用意しました。1グラスあたり80cc近く注ぎましたので、かなりお得な試飲セットになったと思います。
京王側から「日本酒バーで提供する酒は瓶売り不可」と言われ、せっかく試飲して美味しいと思ったのになぜ買えないの?とお客様から度々詰問され、(本来、特約専門店以外取扱いのない磯自慢や初亀が瓶売りできないのはやむを得ないとしても)なんとも歯がゆい思いをしましたが、それでも自信を持って揃えた銘柄をリーズナブルにお試しいただき、隣接する回転寿司コーナーと連携し握り寿司や刺身を自由にオーダーできる手頃なスタイルが奏功し、10時開店と同時に駆け込んでこられるお客様もいて大好評でした。
8銘柄の中で今回の売上ナンバーワンは富士錦さんでした。というのも、この催事に併せ、新商品の純米大吟醸「天地星空(あまちほしぞら)」(720ml 9900円)をテスト販売し、これが見事完売したのが第一の功績です。
このお酒はJR新富士駅等でドラッグストアを経営する近藤薬局の近藤弘人さんが、世界にアピールできる富士の特産品を創ろうと、富士市商工会の支援を受けて企画したもの。富士山の恵みの象徴である日本酒と、製紙のまち富士の新技術セルロースナノファイバー製の特殊パッケージをコラボさせ、富士山の魅力や環境意識、そしてSDGsへの関心が高い海外へ販路を広げる目的で、富士錦酒造と共同開発しました。
私は商工会の派遣アドバイザーとしてこの企画に参画し、商品設計のお手伝いをし、今回の催事でテスト販売ができるよう関係者の協力を仰ぎました。植物由来の次世代素材セルロースナノファイバー(CNF)については、7~8年ぐらい前からニュービジネス協議会の活動で何度も話を聞いており、どのように実用化されるのか楽しみでしたが、まさか身近な地酒でカタチになるとは思わなかったので、感慨ひとしおです。
今回は初お目見えということで、購入者は近藤さんの知人がほとんどでしたが、最後の1本はフリーの男性客が「自分で飲みたいから」とスマートにご購入。1万円の酒が、見た目だけで、しかも贈答用ではなく自家消費用で売れたという事実に熱くなってしまいました…!
富士錦さんからはこのほか、純米原酒缶、特別純米誉富士、純米吟醸、純米大吟醸雄町を出品していただき、雄町が1本残っただけで他はすべて完売。過去最高の売れ行きだったと思います。
ほかに印象に残ったお酒としては、杉錦の純米菩提酛は16日初日、杉井さんが来店したときに完売、生酛純米も翌日完売。追加発注をかけ、それでも最後残り各3本まで売れました。菩提酛と生酛が並んでいれば、伝統酒ファンなら見逃さないでしょうし、日本酒初心者にも「自然で伝統的な造り」という説明が琴線に触れるんだなあと実感しました。
英君は純米吟醸生酒300ml、特別純米誉富士720mlと紫の英君720mlが完売。紫は1,8lも残1本まで売れました。300mlの純吟生は、高齢男性がやはり会期中、「飲んで美味しかったから」と再び買いに来てくれました。こういうお客様を惹き付ける英君さんの造りの確かさには本当に感服します。
白隠正宗は白隠禅師筆の達磨画でおなじみ特別純米が300mlと720mlともに完売。純米大吟醸(私が一番好きな朝鮮通信使馬上才を描いた白隠筆ラベル)は価格(4675円)で苦戦したものの、富士錦の天地星空のようなスペシャルなパッケージにしたらどうだろうと妄想が膨らみました。日本酒バーで出された純米吟醸(緑の達磨画)は「瓶売りしてくれないの?」というお客様が何人かいて悔しい思いをしました。
花の舞は今回初出品の純米吟醸「徳川家康」、純米吟醸原酒「春のしずく」が完売。ワイン酵母で仕込んだ人気の低アルコール酒「アビス」は720mlのみだったので、300mlが欲しいというお客様を何人か逃してしまい反省反省。
初日16日朝の売り場
最終日21日朝の売り場
6年続けていても、毎年、売れる商品・売れ残る商品は変わるので、発注予測を立てるのは本当に難しい。それでも、昨年のリピーター客、期間中のリピーター客の存在は何よりの励みでしたし、首都圏ではほとんど出回っていない静岡の地元密着の銘柄に、試飲もしないで触手されるお客様の存在は、日本酒業界にとって宝物だと実感しました。
2年連続でパートナー役を務めてくれた派遣マネキンの宮田さんが、蔵元や私の話をメモに取り、セールストークを完璧にこなす極めて優秀な販売員さんだったことも宝物でした。
取材して書くだけ、同志だけの酒の集まりでは気付かない静岡酒の真の実力を、大きなマーケットで体感できる催事。ご来店くださったお客様、この場に立たせてくださった関係者の皆さま、差し入れを持って駆けつけてくれた酒友の皆さんに、あらためて心より感謝申し上げます。