12月8日(木)の午後、藤枝市生涯学習センターで開かれた藤枝市観光協会主催の『市民よろず講座』に行ってきました。地域の魅力を学んでもらい、観光ボランティア等で活躍できる人材を育てようという講座で、11月からスタートして月1~2回、いろんなテーマで開かれるみたいです(こちらを参照)。
私は第3回講座「なぜ美味しい?静岡県の地酒と志太美酒の魅力」を任され、地酒のお話&試飲と『吟醸王国しずおか』パイロット版試写を受講生に楽しんでいただきました。
受講生は平日午後に来られる方ですから主婦や熟年男性が多かったのですが、さすが藤枝市民、市内4銘柄や静岡酵母のことは“常識”といちいち頷いてくださって、かなりつっこんだ質問等も寄せられて、いつになく中身の濃い講座になったと思います。
何より嬉しかったのが、パイロット版終了時に、ものすごい拍手をいただいたこと。パイロット版ですから、拍手はこちらから要求でもしない限りなかなかいただけないのがフツウなんですが、受講生のみなさんは本当に映像に見入ってくださったようです。
「藤枝は、市内に、本当に実力のある素晴らしい酒蔵が4つもあって、県内いや国内でもなかなか類のない地域。市民のみなさんが誇りに思うべきだし、ご近所の酒蔵や酒販店を日頃から“馴染み”にしてほしい」と強くアピールしました。
試飲用のお酒は、10月末に岡部・玉露の里で開いた『酒と匠の文化祭Ⅱ』用に購入したお酒が余っていたので、使わせていただきました。藤枝市、藤枝市観光協会ならびに試飲酒を保管管理してくださった初亀醸造様に心より感謝申し上げます。
なお、以下は受講生にお配りした解説文です。口下手なライターゆえ、言葉が足りない部分は書いたものでフォローさせていただきました。今までの取材記事を練り直したものですが、日本酒の需要期ですから改めて掲載させていただきます。クリスマス&年末年始も静岡の酒をぜひぜひご愛顧くださいまし!
静岡県・志太平野の美酒 鈴木真弓(しずおか地酒研究会主宰)<o:p></o:p>
□酒通の常識?静岡の酒の全国評価<o:p></o:p>
静岡の地酒は全国的な評価が高く、平成10年から開催中の静岡県地酒まつりIN東京は、単独の県が首都圏で開催する地酒イベントとしては唯一、10年以上の実績を誇り、チケットは発売1時間以内に完売する「東京で最もチケットがとりにくい人気イベント」に成長しています。2008年の北海道洞爺湖サミットの晩餐会乾杯酒に焼津の「磯自慢」が選ばれる等、国内外にファンは広がっています。<o:p></o:p>
とりわけ、大井川水系の志太地域は銘醸地として広く知られ、実力ある酒蔵が切磋琢磨して品質向上に努めています。これを支えるのが豊かな大井川地域の地下水です。<o:p></o:p>
毎年6月には志太地区6蔵が「志太平野美酒物語」という新酒イベントを開催しており、400席のチケットはつねにキャンセル待ちの人気ぶりです。<o:p></o:p>
<o:p> </o:p>
□原動力は静岡酵母<o:p></o:p>
静岡の地酒の人気の要因は、昭和50年代後半から静岡県工業技術センターで開発に取り組んだ「静岡酵母」にあるといわれています。<o:p></o:p>
静岡酵母で造られた酒の特徴は、さわやかなリンゴやバナナのような香りが立ち、味はすっきり軽く、後味がきれいでスマートな味わいです。昭和61年全国新酒鑑評会では金賞10、入賞7、入賞率日本一を獲得し、酒造業界に革命をもたらしました。<o:p></o:p>
<o:p> </o:p>
□駿河湾の海の幸とベストマッチ<o:p></o:p>
静岡酵母の酒は、淡白な白身魚が多い駿河湾の海の幸や、静岡県の水が軟水で発酵が緩やかになるという特徴を活かしています。酸が低く軽い味わいなので、食事中も盃が進み、また上品な香りは女性や若者など日本酒初心者にも楽しんでいただけます。<o:p></o:p>
<o:p> </o:p>
□精米率の高い(=原料米をよく磨いた)酒を主力に<o:p></o:p>
現在、静岡県で造られる酒は8割近くが特定名称酒(吟醸酒・純米酒・本醸造酒など)です(全国平均は4割弱)。<o:p></o:p>
特定名称酒では、原料米の精米率に厳しい条件(大吟醸=5割以下、吟醸=6割以下、本醸造=7割以下)があり、添加する醸造アルコールは使用する米の1割以内と決められています。各蔵元は原料コストがかかっても量より質で努力しています。<o:p></o:p>
ちなみに、米の外側のたんぱく質や雑物質にはアルコール分解を妨げる成分が含まれています。これを多く削り取って使用するため、悪酔いしにくいという利点があります。<o:p></o:p>
またアミン類など蒸し香(口中で臭くなる香り)のもととなる物質もそぎ落とされるので、酒臭くなりにくいといわれます。<o:p></o:p>
<o:p> </o:p>
□杜氏の技の交差点<o:p></o:p>
原料コストの高い造り方で、品質を磨いていくには、蔵元(酒蔵経営者)と杜氏(酒造職人)の強い意志が必要です。<o:p></o:p>
志太地域には、戦前、「志太杜氏」という職人集団が活躍し、戦後の高度成長期に全国から「南部杜氏(岩手)」「能登杜氏(石川)」「越後杜氏(新潟)」「広島杜氏」など優秀な職人たちがやってくると、プライドをかけて切磋琢磨しました。静岡県は地理的に、全国各地の職人たちが集まる“杜氏の技の交差点”のような地域になったのです。
そんな中から、静岡酵母という新しく難しい酵母に挑戦し、理想の酒質を創り上げた優秀な杜氏が輩出されました。
酒蔵の数が多い志太地域では、“競争原理”がうまく働き、蔵元も杜氏も高い志を持って酒質向上に努めました。これに大井川水系の良水の力が加わって、人気銘柄が数多く生まれたのです。<o:p></o:p>
<o:p> </o:p>呑んで美味しく、料理との相性もよく、悪酔いしにくく、酒臭くなりにくい、質の高い静岡の酒の価値が、鑑評会の大量入賞から25年余経た今、市場にしっかりと根付きました。<o:p></o:p>
この先、志太地区の酒蔵は、県内・国内はもとより、国際的にみてもフランスのボルドーやブルゴーニュのようなブランド銘醸地に発展していくと期待しております。<o:p></o:p>