19日(日)は東京・飯田橋で開かれたエッセイスト藤田千恵子さん主宰の『第6回醗酵リンク大会』に行ってきました。
この会は、藤田さんが長年の取材をもとに、日本の醗酵文化の賜物である純米酒と、“醗酵仲間”の発酵調味料を使った料理や醗酵食品を集めて、蔵元、生産者と語らい、交流を深める会。私も過去、いろいろな酒の会に参加してきましたが、酒肴や料理の良さではこの会に勝るものはないと、毎回楽しみに出席しています。(唯一例外&自慢できるとしたら、わがしずおか地酒研究会で初期のころ、静岡の中山間地の農家のお母さんたちが手作りの伝承料理をふるまってくれた“しずおかお酒菜会”かな…)。
醗酵リンクの場合は、なんといっても料理人が豪華です。銀座の「八彩懐石・長峰」、錦糸町の「井のなか」、墨田区石原の「ゆばと豆腐の店・豆源郷」、新丸ビル店も人気の「神田・新八」、池之端の「旬彩幸味・楽」、東池袋の「楽旬堂・坐唯杏」…と、藤田さんがこの人!と見込んだ料理店主ぞろい。そして彼らが使う調味料も藤田さんが全国各地から厳選してきたものばかり。どこかで藤田千恵子セレクトショップみたいなお店が出来るといいなぁと思えるほどの品揃えです。
◆醤油
三ツ星醤油(堀川屋野村/和歌山県御坊市)
タマジョウ甘露醤油(坂巻醤油店/埼玉県桶川市)
かめびし醤油うす口(かめびし/香川県東かがわ市)
◆味噌
春駒味噌あるちざん(はるこま屋/栃木県那珂川町)
京都しま村の白味噌(しま村商店/京都市上京区)
◆みりん
福来純三年熟成本みりん(白扇酒造/岐阜県川辺町)
九重櫻(九重味淋/愛知県碧南市)
◆酢
雑賀 吟醸酢(九重雑賀/和歌山県岩出市)
麹ドレッシング(杜の蔵/福岡県三潴町)
◆かつおぶし
かつおぶし(鵜飼商店/文京区本郷)
手火山式かつおぶし(丸啓鰹節/静岡県御前崎市白羽)
◆塩
粟国の塩(沖縄海塩研究所/沖縄県島尻郡粟国村)
これに、酒は神亀(埼玉)、武勇(茨城)、男女川(茨城)、いづみ橋(神奈川)、喜久醉(静岡)、秋鹿(大阪)、雑賀(和歌山)、睡龍(奈良)、扶桑鶴(島根)、竹鶴(広島)、杜の蔵(福岡)がそろい、呑み頃を迎えた山田錦吟醸系や、燗上がりする山廃系や熟成酒を存分に味わいました。
私は風邪をひきずり、薬を飲んでいたのでどの酒もなめる程度しかいただけませんでしたが、料理とミスマッチな酒は1本もない、ということは分かります。本当に酒と料理が互いを引き立て合い、杯が進み、箸も進む実感を持つことができました。醗酵という日本の風土が育てた技のリンクがなせる業だと思います。
静岡代表は今まで喜久醉だけでしたが、今年は御前崎の手火山式かつおぶしがお目見えしたことも嬉しかった!以前、藤田さんに「御前崎にすごいかつおぶしがあるの、知ってた?」と訊かれ、知らずにいたことが恥ずかしかったのです。お酒の合間にいただいた、かつおだしのみのシンプルなだし汁、素晴らしい味でした。ちょぴっとお酒を混ぜて飲むと、香りが立ち、身体もグンと温まる感じ。静岡で酒の会をやるときは、ぜひ参考にしたいです!
翌20日(月)は、東京ビッグサイトで20~22日開催の『グルメ&ダイニングスタイルショー2008秋~ニッポンいいもの再発見!』で、過去ブログでも紹介した静岡県商工会連合会のしずおかうまいもの創生事業・フルーツゼリーの試食&市場調査。
昨年開発した『つまんでごろーじ(静岡の酒と肴のギフトセット)』では、静岡が酒どころで、伊豆は金目鯛の、浜名湖は牡蠣の産地だということを伝えるだけでも一苦労した覚えがありましたが、フルーツの場合は静岡ってネームバリューがあるんですね。みかん、マスクメロンなどはすんなりイメージしてもらえるし、「紅ほっぺ」も“テレビで聞いたことがある”という反応。フルーツゼリー自体、日本酒や肴に比べたら万人受けしやすいというのもあるでしょう。展示ブースはお客さんが途切れなくやってきました。
今月2日の試作会での土屋シェフのアドバイスも奏功し、それぞれ改良を加えたゼリーは試食の反応は上々。あとはパッケージやネーミング、そして価格帯の設定です。商工会側は、「買いやすい価格で、日持ちしやすいものを」と言いますが、価格帯については慎重に考えねばなりません。
生産者や菓子業者の顔が見えるモノづくりが追い風になっている今、一過性の話題づくりで終わらず、生産業者が適正な利益を得られる事業にならねば。
醗酵リンク大会のゲストスピーカーとして来場された“やまけん”こと山本謙治さんが、「日本の食は安すぎる、ホンモノには適正な価格が必要だ」と強いメッセージを発信していました。藤田さんも「よいものを作ろうと努力する生産者が、再生産の意欲を持てるような値付けがなされ、それを消費者が買い支えなければならない」と言います。
消費者が買い支える意欲を持つためにも、生産者の姿勢や食の価値の情報をリンクさせる私たちの仕事もまた、責任は大きい、と実感した2日間でした。