杯が乾くまで

鈴木真弓(コピーライター/しずおか地酒研究会)の取材日記

朝鮮通信使ゆかりのまち全国交流会in高月町

2009-10-20 13:04:54 | 朝鮮通信使

 17日(土)は滋賀県高月町で、朝鮮通信使ゆかりのまち全国交流会高月大会が開かれました。全国各地で朝鮮通信使に関連する調査研究や地域づくりにかかわる人々が年に1度集まる大会で、今回で16回目を数えます。

 

 私が参加するのは2007年の静岡大会&彦根大会以来。この年は徳川家康駿府入城400年祭と彦根築城400年祭が重なったので、春と秋に2回行ったのでした。春に清水テルサで開かれた大会で、映像作品『朝鮮通信使』が初上映されたのをきっかけに、朝鮮通信使の研究者や関連団体が全国にこんなにたくさんいるんだと知り、しかも脚本執筆時にお世話になった研究者や博物館学芸員の方々が清水に一堂に集まってくださったので、大感激ですぐさま私も仲間に入れていただき、秋の彦根大会に喜び勇んで参加したのでした。

Imgp1523  

 

 滋賀県高月町は、過去ブログでも紹介したとおり、対馬藩お抱えの儒学者で朝鮮王朝との外交は「誠信の交わりこそ第一」と述べた雨森芳洲の出身地。朝鮮通信使は瀬戸内海&東海道を往来したので、琵琶湖湖北の高月町に直接足跡を残したわけではありませんが、芳洲ゆかりの地という一点で、全国の朝鮮通信使研究家から注目され、地元でも地域を挙げて日韓交流を行っています。それほど芳洲の功績は偉大だったというわけです。

 

 

 私は映画制作時はもちろんですが、学生時代から高月町の渡岸寺十一面観音像に親しみ、現在、観音の里として地域づくりが行われていることを好感を持って見守り続けてきました。

 

 

 渡岸寺に隣接する高月町観音の里歴史民俗資料館の学芸員佐々木悦也さん(写真左)は、映画制作時にひとかたならぬお力添えをいただき、さらに今年8月には「静岡に文化の風をの会」の招きで静岡まで来てくださり、高月町の地域づくりについて丁寧に解説されました。私の中では、高月町イコール佐々木さん、みたいな感じなんですね。「人」で「地域」が語れるってとても分Imgp1522 かりやすいし、親しみも格別だし、いいことだと思います。

 今回は、昨春、やはり朝鮮通信使つながりの京都・高麗美術館の花文字体験ワークショップにお誘いした静岡新聞の平野斗紀子さん(写真右)を、ふたたびお誘いしました。

 話は逸れますが、静岡新聞農林水産面(毎週金曜夕刊)を担当する平野さんは、高麗美術館の学芸員片山真理子さんに、韓国の茶文化について原稿をお願いしたそうで、今週23日(金)夕刊には掲載予定です。ぜひご覧くださいね!

 

 

 

 17日高月大会の話に戻ります。この日は朝、「静岡に文化の風をの会」のみなさんの貸切バスに便乗させてもらい、11時前には高月町に到着。私は早速平野さんを渡岸寺と民俗資料館にご案内し、午後からの基調講演会やパネルディスカッションを聴講しました。

Imgp1525  基調講演は京都大学名誉教授でアジア史学会長の上田正昭先生による『朝鮮通信使と雨森芳洲』。高麗美術館の館長でもある先生のお話は、過去2回ぐらい拝聴していますが、芳洲に対するその熱い思いは、何度うかがっても感動します。

 この日の講演では、

 

◎芳洲の存在を知ったのは40年ほど前、中央公論社の「日本の名著100シリーズ」で新井白石を担当したとき、幕府の実力者だった彼が、地方の役人にすぎなかった芳洲を異様にライバル視していることを知り、興味を持った。渡岸寺の蔵に保管されていた交隣提醒(1729年に芳洲が記した朝鮮外交の心得書)と出合い、感動した。

 

 

◎彼は22歳で対馬藩お抱え儒学者となり、25歳の時長崎に留学。26歳で実際に対馬へ赴任し、29歳でふたたび長崎に留学して中国語を独学でマスター。31歳で朝鮮御用支配方の佐役(補佐役)を兼任。表札方や書札方(表向きの外交官)とは違い、朝鮮王朝との通交にかかわる過去の事例や慣習などを調査し、項目別に書抜き帳を作るという裏方仕事に徹していた。

 

◎35~36歳、38歳のとき釜山へ留学し、朝鮮語もマスター。54歳まで朝鮮方佐役を務めたあと、本来の儒学者としての任務に戻るが、57歳のとき対馬藩御用人(藩主と年寄・諸役との間を取り持つ秘書役)となり、61歳まで務めた。この間、対馬藩主に藩内に朝鮮語学校を設置するよう働きかけ、実現させ、後継者の育成に努めた。62歳から翌年にかけては、釜山の倭館(対馬藩の領事館)に赴任。

 

◎88歳で生涯を閉じるが、81歳のとき、日本古来の詩歌を学び直そうと、古今和歌集の千篇読みと和歌一万首作りに挑み、2年で達成した。

 

 ・・・という芳洲の生涯を改めて振り返り、朝鮮外交を現場主義に徹して支え、晩年も学ぶ姿勢を貫き、生涯学習を実践し通した彼の人となりを称賛しました。今の外務省の若手職員にでも聞かせたいお話ですよね!

 

 

 上田先生がこの日紹介された『交隣提醒』の一節で印象深かったのは、「日本側は、朝鮮の人々に日本の自慢をしようと、大仏を見せたり耳塚(朝鮮侵攻した日本軍が論功行賞目当てに朝鮮人の鼻を削いで塩漬けにして持ち帰った、その慰霊碑)に案内するのはいかがなものか。朝鮮の人々は、そんなものより、日本の街並みが清潔で、街道の樹木の手入れが行き届いているほうに感心するのだ」とはっきり述べているところ。・・・なんだか今でも県外や海外のゲストを迎える時に通用するお話です。

 

 

Imgp1528  パネルディスカッションでは、ソウルの市立中学や市立高校の校長を歴任された李英煒(イ ヨンウイ)氏が、韓国の歴史教育者の間ではほとんど知られていなかった芳洲の存在を1993年ころ知って、翌94年には教え子たちを高月町に夏期合宿に連れてくるようになり、希望者が年々増え、町民の家にホームステイするようになり、ますます交流が深まっていることを紹介。

 

 

 元韓国外交官で、長崎県立大学教授の徐賢燮(ソ ヒョンプ)氏は、1990年に当時の廬泰愚(ノ テウ)大統領が来日の折、宮中晩さん会で天皇陛下への返礼の際、芳洲の名を上げ、誠信外交の大切さを述べたそのスピーチ原稿を書かれた方。最初、韓国大使館の上役からは「雨森芳洲なんて聞いたことがない、(もっとメジャーな)新井白石にしろ」と言われたそうですが、上役を説得したという裏話を披露してくれました。このときの廬大統領のスピーチによって、芳洲の存在は広く知られるようになったのです。

 

 

 徐先生が「1万円札の肖像を福沢諭吉ではなく、芳洲にすべきだ」と語ると、コーディネーター役の平井茂彦さん(高月町東アジア交流ハウス雨森芳洲館長)が、芳洲のイラスト像をはめ込んだ1万円札パネルをタイミング良く披露し、会場は大いに盛り上がりました。

 ・・・芳洲のごとく、こうして裏方で日韓交流に尽力される方々のお話を直接うかがうと、隣国同士なんだから、こういう方々の活動がいつまでも“特別な話題”扱いされるんじゃなくて当たり前にならなきゃなぁと思います。

 

 

 

 夜は、朝鮮通信使縁地連絡協議会のみなさんが一堂に会する懇親会に出席し、静岡から駆け付けた北村欽哉先生に中日新聞取材のお礼をし、ついでに先生に各地の活動家の方々をご紹介していただきました。

Imgp1531

 

 二次会では広島県鞆町から参加の池田一彦先生と久しぶりに再会し、滋賀の地酒「七本槍」を酌み交わし、例の、鞆の浦開発裁判の話題になって、「県や市の役人たちは裁判所に行くにも公費で交通費が出るが、反対派の住民は自費で行かないけん。それだけでもハンディがあるんじゃ」と現場ならではの本音をうかがいました。

 

 三次会では佐々木さんに長浜市内の韓国料理店に連れて行ってもらい、薬草たっぷりのヘルシーなサムゲタンと風味抜群の韓国味噌でいただくチヂミ、そして甘くすっきり飲みすぎちゃいそうなマッコリを堪能しました。この店の韓国人のママさんは、高月町で韓国料理教室を開いては地元の皆さんに喜ばれているそうです。

 

 

 国際交流というよりも、民際交流の価値を実践・発信する高月町の人々と、全国から集う朝鮮通信使ゆかりの人々。わけもわからず参加した平野さんも、北海道や九州から駆け付けた初対面の人々と、和気あいあいと飲んでいます。共有するテーマだけで純粋につながるこういう交流の場は、なんとも得難く、末永く大切にしたいなぁとしみじみ実感します。

 

 お世話になった佐々木さんはじめ、高月町のみなさま、朝鮮通信使縁地連絡協議会のみなさま、静岡に文化の風をの会のみなさま、本当にありがとうございました!


デザートふりかけテイスティング

2009-10-16 20:37:05 | 朝鮮通信使

 昨日(15日)は東京ビッグサイトで開催されたグルメ&ダイニングスタイルショーに行ってきました。このところ毎年お手伝いをしている静岡県商工会連合会の『しずおかうまいもの創生事業実行委員会』の今年度のプロジェクト・静岡県の農産物(果物・野菜)を使ったデザートふりかけのテイスティング&マーケティング調査です。

 

Imgp1513

 

 フルーツと野菜をふりかけにするという発想自体は、静岡県立大学の学生さんたちが考えて、SOHOしずおかのビジネスプランコンテストでも表彰されたユニークで斬新なアイディア。指導官の岩崎邦彦教授にも委員会に入ってもらって、これを県商工連で事業化しようじゃないかということになりました。

 

 

 ところが試しにいろんな野菜やフルーツを粉末化してみると、なかなか思うような“デザートふりかけ”にするには難問山積で、実際に加工を担当するふりかけ業者さんも「魅力を感じない、売れるとは思えない」とシビアなコメント。調理用のアイテムとして乾燥粉末化した農産物はいくつもあるし、ふりかけといえば、やはりごはんにかけるイメージが強く、デザート用のトッピングにするならばいろんな“混ぜ物”を加えないと、見た目にも質的にもトッピングとしての機能を果たせない・・・。過去3回の委員会では喧々諤々の議論が続き、はたしてスタイルショーでのテイスティングに間に合うように試作品ができるのかどうか、ヒヤヒヤモノでした。

 

 

 

Imgp1507  商品のネーミングやキャッチコピーを担当する私は、当初、県立大学の学生がビジネスプランコンテストで提出したネーミングをそのまま生かすと聞いていたので、お気楽に構えていたのですが、そのネーミングが商標登録に引っ掛かりNG。急きょネーミングを考えなければならないハメになり、4案ほど出して、そのうちの1案が好評を得てパンフレットやポスターに堂々入れてスタイルショー会場へ持っていったのでした。

 ところが初日(14日)になって弁理士さんから、その名前も某ふりかけ業者が登録していることが判ったと連絡。私は昨日15日、会場でそのことを聞かされ、ドッと凹んでしまいました。「え~、この名前使えないの?すごくいいのにぃ」とお客さんからも残念がられ・・・はぁ、ネーミングって難しい、と辛酸をなめました。

 

 

 まぁ、でも、商品自体は、難色を示していたふりかけ業者さんが頑張ってくImgp1514 れて、おおむね好評でした。今回は試作用に、お茶、いちご、みかん、かぼちゃ、ブルーベリーの5種類を用意し、アイスクリームとヨーグルトにふりかけて試食してもらったのですが、お茶が風味イマイチだった以外は、ちゃんとそれなりの味になっていたようです。

 

 

 商品の完成は来年春。今回の調査をもとに、さらに改良を加え、ネーミングも再考し、きちんとお披露目できるようにしますので、完成の暁にはご報告しますね!

 

 

 それにしても、グルメ&ダイニングスタイルショーってご当地新顔グルメの百貨店みたいで本当に面白いです。我々が出展するのは、全国の商工会の展示商談会スペース「ニッポンいいもの再発見!」というコーナー。他のブースをゆっくり見て回る時間はありませんでしたが、それでも、エゾシカのスモークハム(北海道商工会)、地酒を使ったおおさき酒粕てら(カステラ・宮城県大崎商工会)、醸す(kamos)商品シリーズ(酒・味噌を生かす・福島県平田村商工会)、カキ入りお好み焼き(岡山・備前東商工会)、大山高原桜どりの燻製&桜マヨネーズ(鳥取県商工会)、赤いトマトワイン&赤いトマト焼酎(福岡県・赤村商工会)などなど、そそられる味がいっぱい。地酒や地ビールや焼酎・ワインもたっぷりで、酒肴になるようなものもいっぱいで、仕事じゃなければ一日楽しめます!! 

 寸暇を惜しんで他ブースで試飲にいそしむ私に、一緒に静岡の委員を務める足立久幸さん(レストラン「ハーモニー」オーナー)が、「こりゃ、スズキさん的にはたまらないショーだねぇ」と笑います。

 

 

 次回のグルメ&ダイニングスタイルショー2010春(2010年2月2日(火)~5日(金))で、デザートふりかけの正式お披露目となりますので、興味のある方はぜひ会場へお運びください。スタイルショーの詳細はこちらへ。

 

 

 

 

 さて、15日に発行された中日新聞全国新聞大会特集、私は今日(16日)になって中日静岡総局でゲットしました。特集のタイトルが「静岡見本市」から、「静岡を味わう、静岡あっぱれ日本晴れ」になっていましたね。1面の有名人インタビューは、女流初の真打・古今亭菊千代さんでした(担当じゃなかったので、誰が掲載されるのか知りませんでした)。

 

 

Imgp1516  2面に「異文化がかけぬけた東海道」で、家康と東海道と朝鮮通信使のお話。3面に「悠久の時を刻む静岡県の巨樹古木」、6面に「緑茶体験」「モノづくり体験」、7面に「漁業体験」。

 

 

 校正の段階から、うわぁ~文字量が多すぎたなぁと反省しましたが、やっぱりまったく余白のないビッチビチの紙面で、静岡新聞の全国新聞大会特集なんかと比べると、息がつまりそうです(苦笑)。中日側も、もっと軽めの読み物を想定して、軽めでポップのデザインを用意していたImgp1517 ようですが、レイアウトを組んだ人はさぞかし苦労したと思います・・・。

 静岡新聞の知人からも「遊びのない紙面だったねぇ」と感想が来ました(苦笑)。

 

 

 商業雑誌や広告と違い、新聞にはアートディレクター(AD)的存在がいません。ADがいれば、私に「ボディ(本文)の字数をもっとおさえろ、リードはこれくらい、小見出しをこことここへ、写真はこの部分を生かすカットを」なんて注文をつけたでしょう。それはそれでやりにくかったかもしれないけど、こうして紙面を眺めると、パッと見、見やすくなければ、どんないいことを書いても読んでもらえないImgp1518 だろうと痛感します。

 

 

 それでも、取材先のヤマハコミュニケーション広報部からは「ポジティブに紹介してもらってみんな喜んでます」、はまなこ里海の会事務局からは「小気味いい構Imgp1519 成で楽しく読めました、たくさん買いましたよ!」とお礼をいただき、ホッとしました。

 ライターとしては、やっぱり取材相手から喜んでもらえるのが一番嬉しいんですよね。

 

 

 

 

 明日(17日)から、滋賀県高月町で朝鮮通信使全国交流大会が始まります。久しぶりにお会いする、映画『朝鮮通信使』でお世話になった方々に、いいお土産話が出来そうです。

 

 週末は滋賀~京都で、しばし仕事から離れ、好きな歴史&仏さまの世界に浸って心身を癒してまいります。そのお土産話はまた後日。


全国新聞大会特集記事のお知らせ

2009-10-14 19:41:12 | 社会・経済

 3連休返上の執筆編集作業が、先ほどやっと終わりました。目がチカチカ、首が重く、キーボードを打つ右手はあきらかな腱鞘炎、両肩にもドョ~ンと錘が乗ったみたいな状態です…。 

 

 今日はちょこっとコマーシャルを。

 明日10月15日から新聞週間というのが始まります。新聞の使命や責任を再確認し、読者に報道について理解を深めてもらおうと1948年に日本新聞協会が制定したもので、今年で62回を迎える、ジャーナリズムの世界ではとても歴史ある事業です。メインイベントの全国新聞大会は毎年各県持ち回りで開催されますが、今年は静岡県。明日は静岡市民文化会館で大会が開かれます。

 

 で、地元開催を記念して、静岡新聞や中日新聞が記念企画や別刷り特集を組むことになりました。私は中日新聞から別刷り特集「静岡見本市」の企画・構成・取材・執筆を依頼され、8月ぐらいから準備を進めてきました。

 

 

 「静岡見本市」という企画(8ページ)は、1面が著名人インタビュー、2~3面に静岡県の歴史と自然、4~5面は静岡県の日本一、6~7面は静岡県の体験、8面に広告という構成で、私は2~3面と6~7面を担当しました。このブログでも取材報告した、塚本こなみさんによる巨樹古木めぐり、朝鮮通信使ゆかりの地探訪、ヤマハコミュニケーションプラザ、はまなこ里海の会は、この企画のための取材でした。

 

 「歴史」「自然」「体験」というテーマだけを与えられ、内容はおまかせと言われ、最初は、おまかせで新聞4面分も一人で・・・!?とビビりまくりましたが、地元ローカルでフリーランスでライター稼業をしている身で、こういう仕事に出合えるチャンスはそうそうないだろうと腹をくくりました。内容お任せでいいなら、歴史ならやっぱり徳川家康、東海道。これに得意分野の朝鮮通信使をからめ、“徳川の知られざる外交策や国土交通計画”みたいなストーリーにまとめたら面白いと考えました。朝鮮通信使研究家の北村欽哉先生に新しい史料や情報をいただき、ホントに助かりました。

 

 自然は、富士山や南アルプスや浜名湖の自然や観光なんて情報は出尽くしているから、ここはすんなり塚本こなみさんに静岡県の巨木のガイドをしていただこうと。写真が、私が撮った素人写真なので、イマイチなんですが、こなみさんの心の一木・春埜杉だけは、過去ブログにも掲載した雨上がりの幻想的なショットで、ちょっと雰囲気の違う自慢の一枚です。

 

 体験は、お茶・モノづくり・漁業体験の3テーマ。この3つを選ぶまでいろいろ苦労しました。この時期、静岡県で体験できることっていろいろあるけど、どれも決め手に欠けるんですよね・・・。まずお茶は、この時期、お茶摘み体験はできないけど、静岡県らしさでいえばやっぱり外せない。で、静岡市で来週末開催される「お茶壺道中行列」を、家康が愛した熟成本山茶の伝統にからめて紹介することに。JR静岡駅前地下コンコースに開店した「喫茶一茶」も取り上げました。

 アドバイスをいただいた小島茶店さんは、7月、県観光コンベンション協会総会での「吟醸王国しずおかパイロット版試写&トークセッション」で知り合って、その後地酒サロンに来てくれたり、松下明弘さんの田んぼ見学にも行かれたほど。お茶と地酒には相通じるものがあると言ってくれてます。

 

 モノづくりは、見学体験できる施設を取材すれば済むわけですが、どこにするかが悩みどころ。中日新聞のお膝元には有名メーカーがたくさんあるし、特定企業の宣伝になっちゃっていいんだろうかと心配に・・・。そこで県西部のモノづくりの歴史やスピリットみたいな話を全面に置いて、その精神を子どもから大人まで気軽に知って体験するという流れで、ヤマハ発動機のコミュニケーションプラザを取り上げました。

 取材にあたっては同社に勤めるしずおか地酒研究会会員の某氏に一肌脱いでいただきました。・・・酒縁は得難いものです、ホント。

 

 はまなこ里海の会は、浜名湖での漁業体験学習を企画運営する唯一のNPO法人ということで、すんなり決めました。

 

 

 

 これまでのお仕事の縁や酒の縁をフル稼働し、精魂こめてまとめ上げた新聞4面分の特集記事。中日新聞で組んでくれたデザインは、ちょっとポップで派手で、自分のイメージとは違うんですが(たぶん中日側はもうちょっと軽~い読み物を想定していたんだと思います…)、いよいよ明日15日の中日新聞朝刊に折り込まれますので、中日購読者はぜひお見逃しなく!


羽田エクセルホテル東急日本酒セミナーとその前後

2009-10-10 12:13:37 | しずおか地酒研究会

 7~9日と東京出張でした。東京で台風を迎えるのは初めてで、濡れてもいいボロ靴で、カバンを拭くタオルや防水スプレーや、イザとなったら頭からかぶろうと透明ゴミ袋!まで用意して行ったのに、どしゃぶり豪雨に遭うことはなく、拍子ぬけ?(笑)。その代り、山手線や私鉄がストップし、品川から銀座へ行くのに2時間もかかるなど、都会の足の脆弱さをまざまざと体感しました。

 

 

 大雨や洪水の被害がなく、地下鉄は大丈夫だろうと、最寄りの地下鉄駅に走ると、みんな考えることは同じで、ホームに入りきれない群衆・・・。30分に1本ぐらいしか動いていない地下鉄を3本見送り、やっと4本目に乗れたと思ったら、ドアに人がへばりつくようなぎゅう詰め満員電車。・・・これはこれで静岡じゃ体験できない貴重な経験でしたが(苦笑)。

 

 

 

 まず7日は独立行政法人日本芸術文化振興協会の映画製作に対する補助金制度の説明会に参加しました。昨年まで文化庁がやっていた文化支援事業を特殊法人が引き継いで運営するものです。商業映画、記録映画(ドキュメンタリー)、アニメ映画の3部門あって、昨年度は178件の応募に対し、48件が採択を受けました。記録映画部門は応募54件・採択10件と、決して“広き門”ではありませんが、宝くじと同じで、買ってみなけりゃ(応募してみなけりゃ)当たらないわけで、とにかく資料だけももらっとこうと思いました。

 

 

 説明会会場は300人ぐらいは来ていたでしょうか、いかにもギョーカイ人っぽい人から、私みたいに地方から来た感じの人まで満杯で資料が足りなくなるほどでした。応募資格が、映画製作を目的とする・または実績を持つ団体に限ると言われ、うちのように市民や有志が記録映画を作ろうと委員会組織(吟醸王国しずおか映像製作委員会)を立ち上げたケースでも、委員会の中核が映画製作実績のある団体でなければ不可らしく、なんだ、結局、映画会社や映画プロダクションしか相手にされないのか・・・とガッカリ。帰って資料をよく読んで、関係者のみなさんに相談してみようと思っています。

 

 

 

 

 

 8日は東京新聞購読者紙『暮らすめいと』の取材で、虎ノ門の日本酒造会館1階にある日本の酒情報館SAKE・PLAZAを訪問。ここにたどり着くのに、前泊した品川から2時間30分かかりました。朝、品川駅前のコンコースは、京急が改札を封じたため、改札が開くのを待つ人と、JRに乗れずに戻ってきた人でスシ詰めおしくらまんじゅう状態。…必死の突破で荷物をコインロッカーへ預け、突風が吹きぬける中、地下鉄都営浅草線の高輪口まで歩き、改札で駅員から「今、ホームへ降りても電車には乗れませんよっ!」と怒号がかかる中、おかまいなしに降りて見ると、ここも大行列。ちゃんと行列してるだけマシだと思い、待って待って、ようやく乗れて、新橋で下車。降りたとたん、山手線復旧のアナウンスでした(苦笑)。

 

 SAKE・PLAZAで情報を仕入れた後、内幸町の中日新聞東京本社に歩いDsc_0005 て移動。東京新聞首都圏編集部の記者で「挑戦する酒蔵」という本を書いた土田修さんにインタビューです。取り上げたのは福正宗(石川)、満寿泉(富山)、自然郷(福島)、ダルマ正宗(岐阜)、大七(福島)、男山(宮城)、竹葉(福島)の7蔵。いずれも純米酒造りで異彩を放つ蔵元です。

 もともとは、満寿泉の名杜氏三盃幸一さんに話を聞く機会があり、感銘を受け、いつか本にしたいと思っていたところ、土田さんが所属する「酒蔵環境研究会」という組織が農文協から酒の本を出してくれと依頼されて、会で縁のある6蔵を加えて本にしたということです。

 

 

 三盃さんといえば、亡くなった開運の波瀬正吉さん、常きげんの農口尚彦さん、天狗舞の中三郎さんと並ぶ“能登杜氏四天王”の一人。本の中でもひときわ読み応えのある記事になっています。「波瀬さんが亡くなったのはショックでねぇ・・・」と肩を落とす土田さんに、「昨年能登のお宅で40分ぐらいインタビューを撮っています。映画本編ではごく一部しか使えないと思いますが」とお話すると、「ぜひ通しで見せて!できたら記事にしたい」とパッと明るい顔。苦労して撮っている映像が、誰かの役に立つ、仕事につながると思うと、無上の喜びとやりがいを感じますね!!。

 

 

 

 

 8日夜は、かねてよりお知らせの、羽田エクセルホテル東急「第1回日本酒Imgp1487 セミナー」です。『吟醸王国しずおかパイロット版』を気に入ってくださった総支配人の吉岡さんが企画され、映像の主要登場人物の一人・青島孝さん(青島酒造)に酒を通したモノづくりの価値をお話いただき、喜久醉主要ラインナップを飲み比べていただくというプログラム。40名の定員いっぱいの申し込みをいただいていたそうですが、台風の影響で、JAL関係者のキャンセルが10名ほど。前述の土田さんも申し込んでくれていたのですが、やはり台風取材のあおりでキャンセル。それでも、ANAやエアーニッポン、日本空港ビルディング、県東京事務所、静岡新聞東京支社、羽田経済新聞、日経ビジネス、リクルートじゃらんリサーチセンター、朝日マリオン、共同通信、dancyuなどなど、羽田ならではのユニークなメンバーによる地酒サロンになりました。

  

 びっくりしたのは、ANA東京支店法人室のお2人が静岡市と藤枝市の出身だったり、広島県西条出身のベテラン機長さん、広島大学出身で西条酒まつり常連という地元大田区の食品会社若手社員の方など、やっぱり類は類を・・・と思わず笑ってしまう酒つながりの輪ができたこと。21時の中締め後も、席を立つImgp1474のは最終新幹線で帰らなければならない青島さんだけ(苦笑)で、終了後は「初対面の人が多かったけど、落ち着いて酒と食事と会話が楽しめる大人の会だった」「雰囲気のいい会だったね」と喜んでいただけました。

 

 

 リクリートじゃらんリサーチセンターの竹田邦弘さんは、リクリート静岡支社長時代にニュービジネス協議会でご一緒した方で、「スズキさんとこんな場面で再開するとはねぇ」と苦笑い。「今はじゃらんの営業で富士山静岡空港の担当になり、苦労してますよ」とのこと。

 

 

 県の人が来てくれた席で空港の話はしにくかったのですが、静岡の空港なのに免税店では開運しか買えないし、売店では他の土産物と同じようにただ並べてあるだけで、県情報スペースに空瓶の陳列をしたものの「地酒は買いにくい」と感じちゃうような紹介の仕方・・・羽田ではこれだけの会をやってくれるというのに、もうちょっと何とかならないの~と思っていたところ、日本空港ビルディングの代表で来てくれたお2人が「…実は免税店の銘柄選びは私たちがやってまして」と苦笑い。「日本酒の場合、酒税のからみで、免税店で扱える(税抜き販売できる)商品をお願いできる蔵元さんが限られるんですよ」と説明してくれました。

 

 

 いろいろな情報もたくさんもらえた羽田での地酒サロンでしたが、やっぱり嬉しかったのは、『吟醸王国しずおか』の映像を初めて観たベテラン編集者の方から「いやぁ、活字はかなわないなぁと実感したよ」、またすでに観ている方から、「観るたびに感動が深まって来る、波瀬さんのシーンでは本当に涙が出てきた」としんみり言ってもらえたこと。一度見れば十分、という説明ビデオやプロモーションビデオではなく、スポンサーや資金集めが難しくなろImgp1502うとも自分が伝えたいと思う酒造りの姿を描こうと決めたことに、後悔はするまい、との思いを強くしました。

 

 会の実現に多大なご協力をくださったdancyu plus編集長の里見美香さん、羽田エクセルホテル東急の吉岡さん、姉崎さん、高遠さんはじめスタッフのみなさま、そして稲刈り前の多忙な中、羽田まで駆け付けてくれた青島さん、本当にありがとうございました。

 今日(10日)の静岡新聞朝刊志太榛原面で紹介していただきましたので、ご覧になれる方はぜひ!

 

 

 

 

 翌9日は静岡県ニュービジネス協議会の視察で、幕張メッセで開催中のCETEC JAPAN(アジア最大の最先端IT・エレクトロニクス総合展)に行ってきました。日本酒の伝統技術や、ドキュメンタリー映画の自主制作のような超アナログの世界から、一変した超ハイテクの世界。大手家電の3Dテレビや、NHKのスーパーハイビジョン映像を観ましたが、映像が高度に進化することで、ソフトを提供する側は、コンテンツ選びや取材方法がますます難しくなるだろうなぁImgp1497 と実感しました。

 たとえば磯自慢の多田さんの「一粒の蒸し米に菌糸を1本だけ付ける」神業が、リアルに映像化できるとしたら、それはそれで凄いことですが、日本酒のロマンとか酒造りの神秘性みたいなものを冒すことにならないだろうか・・・なんてふと考えてしまいました。

 

 

 嵐のような3日間が過ぎ、今日から世間は3連休。私は連休返上で『暮らすめいと』日本酒特集と、ニュービジネス協議会上海研修取材記の執筆です。明日11日の誕生日も、去年と同様、色気のない一日になりそうです・・・。


上海研修ツアーその4

2009-10-06 11:32:53 | ニュービジネス協議会

 ふたたび(社)静岡県ニュービジネス協議会上海研修ツアーのご報告に戻ります。

Dsc_0243  9月23日は、午前中に企業視察、午後は唯一の観光だった上海森ビル、夕方から静岡国際経済上海事務所を訪問し、日本国駐上海総領事館の佐々木明彦領事に、上海経済の概要をレクチャーしていただきました。

 

 

 まず上海市のイロハから。

 中国には4つの直轄市と22の省、5つの自治区があります。4つの直轄市とは文字通り中国を代表する巨大都市・北京、天津、重慶、上海のこと。上海市は面積6341平方キロメートルで東京都と埼玉県を合わせたぐらいの広さ。戸籍人口は1371万人(実際には1888万人住んでいる=約500万人が地方からの出稼ぎ労働者)。中国13億人のうちの1割強が住んでいるんですね。

 

 

Dsc_0208  2009年上半期の上海GDP成長率はプラス5・6%。08年はプラス9.7%だったので、やっぱりリーマンショックの影響はあった。・・・と言うべきか、リーマンショックがあってもプラス5%も成長してると言うべきか。いずれにしても国の対策は早く、景気減速に伴って国家レベルでは4兆元(約60兆円)の経済対策を断行し、上海市では5千億元(約7兆円)規模の都市インフラ整備を実施中です。省庁の無駄遣いをひねり出すのに四苦八苦している日本の民主党政権と、中国共産党独裁政権では、ボリュームとスピード感は比較にならないですね。

 

 

 ちなみに、上海市の一人当たりのGDP(08年)は10,536ドル。中国の直轄市・省・自治区あわせた31地区のランキングでは堂々のトップで、最下位31位の貴州省1,271ドルの約10倍。トップと最下位で10倍の差があるランキングなので、全国平均(3,270ドル)だけ見ても中国経済の実態はわからないというわけです。下位ランクの地区は、外資の影響をほとんど受けておらず、政府の内需対策が重点的に進むとみられることから、今後の発展が有望との見方もあるそうです。

 

 一人あたりのGDPが中国ナンバーワンの上海市民。その豊かさの証明ともいうべきか、上海エリアからのビザ発給件数はウナギ登りで、08年は過去最高の26万件。団体観光向けビザ発給件数が前年比プラス60%増の13.6万件と劇的に増えています。09年7月から個人観光でも発給可能になり、この2ヶ月間で1,330人が取得したそうです。

 行先は、中国全域からの訪日者が昨年初めて100万人を突破したことからも、日本人気が根強く、ショッピング、温泉観光はもちろん、人間ドックツアーなんていうような目的限定ツアーもあるそうです。…日本酒ツアーなんてのもアリですね、十分に!

 

 

Dsc_0185  さて上海市内には約7,200社の日系企業が進出し、業種は今までの製造業から、徐々にサービス業、高付加価値内販型にシフトしています。政府の4兆元という経済対策には、自動車減税や農村向け家電購入補助金政策なんかがあって、中国国内の内需拡大がますます進むとあって、日系企業も日本なんかより中国国内をマーケットにした営業活動に力を入れるわけです。ただ政府の景気対策は課税強化が原資になっていて、労働賃金の上昇や資源・燃料の高騰など事業環境は厳しくなる一方。中国でビジネスをやるには、やっぱり腹をくくらないと・・・ですね。

 静岡県産業部では、昨年、県内企業の海外進出状況を調査しました。それによると、進出先で一番多いのはやはり中国(233社403事業所)、2位がアメリカ(98社162事業所)、3位がタイ(97社130事業所)、4位インドネシア(58社74事業所)、5位台湾(35社53事業所)という順。地域別ではアジアが全体の66%を占めています。

 

 

Dsc_0175  中国への進出目的は、「現地市場の開拓」「低コスト労働力の利用」「取引先、親会社からの受注確保」が主目的で、他の地区に比べ「安価な原材料の確保」という理由も高いようです。ただし、アンケートでは問題点として「現地労働力の質や確保に不安」「現地の原材料・部品調達に不安」「現地政府の窓口との折衝が難しい」「現地政府の経済・産業政策が不安定」という意見も多い。とくに日本とは異なる雇用環境にとまどい、現地での労務・人事管理に不安があるという声が聞かれました。

 

 

  Dsc_0277 23日午前中に訪問した上海未路駆(ミロク・本社三島市)、翌24日午前中に訪問した南部塑料有限公司(南部化成・本社吉田町)でも、従業員に「誠心誠意」というフレーズや、「5S」「7S」を徹底させるのに、日本の工場と同じように壁にスローガンを掲げ、なおかつ「整理整頓をするのは、君たちがケガをしないためだよ」と理詰めで説得する努力をしていました。従業員の中には、日本のファッションやカルチャーに親しむ若者も増えているようで、“日本的”に対する抵抗感は少しずつ減っているように思いました。

 

 

 

 さてさて、日本的なものの代表格・日本酒の消費動向ですが、県上海事務所では2005年に市場調査を行い、私も以前報告書を見せてもらったことがあります。今はこちらで閲覧できます。

 

 その後の経済状況の変化で、日本酒の需要がどうなったのか、県上海事務所の若田部所長あてに事前にメールを送ったのですが、肝心の所長に23日訪問時には会えず、翌24日の夜の会食時にちょこっとご挨拶できた程度。残念ながら後追い調査はしておらず、静岡県産酒の進出は今のところゼロとのことでした。

 

 ただ、上海では日本風の大衆居酒屋が大人気で、若者のトレンディスポットになっているとのこと。これがもう少し根付けば、経済発展著しいこのエリアには、大衆居酒屋からこだわり居酒屋→割烹居酒屋→高級酒場と、静岡県産酒が参入できる場も増えてくる可能性は大いにあります。

 

Imgp1413

 

 今回は上海市内に1日半ぐらいしか滞在できず、23日夜は上海未路駆の社員に案内してもらって、上海新天地(ヨーロッパ風の古い町並みを利用したカフェやショップが並ぶお洒落なゾーン)のタウンウォッチング、24日夜は足つぼマッサージに行ってしまいました。

…結局、日本酒がありそうな居酒屋めぐりはできませんでしたが、静岡―上海便が安い時期にフリータイムで行けるツアーで、ぜひ上海日本酒事情をじっくり探ってみようと思っています。地酒研メンバーで興味のある人、ぜひご一緒しましょう!