10月14日 NHKBS1「国際報道2020」
トランプ大統領の集会。
そこでQの文字をアピールするのが“Qアノン”と言われる人たちである。
「“Q”は我々みんなだ。
“Q”はムーブメントなんだ。」
彼らの主張は
一部のエリートからなる Deep State (闇の政府)によって
アメリカの政財界・メディアが支配されている
というものである。
SNSなどを通じて支持を拡大するQアノン。
アメリカ大統領選への影響力も増している。
アノン=Anonymousu(匿名)の略語である。
日本語では“匿名のQ”と訳される。
始まりは3年前の2017年
インターネット上の匿名掲示板に“Q”が書き込みを開始したことだとされていて
“Q”が発信する主張を信じる人たちのことが“Qアノン”である。
おもな主張は
民主党の政治家やハリウッドの俳優などが“ディープ・ステート(闇の政府)”を牛耳っていて
国民を貶めようとしている
というものである。
さらにその闇の政府は
悪魔を崇拝する小児性愛者の集団で人身売買もしている
と根拠なく訴えている。
Qアノンの存在を好ましいか好ましくないかと調査に
アメリカ国民の約7%が“好ましい”という結果もある。
Qアノンは
闇の政府と闘っているのは
もともと政界とかかわりがなかったトランプ大統領だと主張している。
10月10日 ハリウッドの中心部。
“Q”という人物の存在を信じる人ら約200人が行進した。
動画配信大手のネットフリックスやCNNの支局の前でシュプレヒコールを上げていた。
(デモ主催者)
「ハリウッドには小児性愛の問題がある。
全米で毎年80万人の子どもが行方不明になっている。
これこそがパンデミックだ。」
Qアノンはインターネット上の緩やかなつながりで
呼び掛けに応じて個人が自発的に集まっているとみられている。
“トランプ大統領が子どもたちを救う”という看板を持つ男性は
大手メディアへの不信感からQアノンの主張に注目するようになったという。
(デモ参加者)
「メディアは人々を操作し敵対心をあおっているだけだ。
僕はテレビも映画も見ないし音楽も聴かない。
信用できないからだ。」
Qアノンの陰謀論が広まる前兆だったと受け止められている事件がある。
2016年に首都ワシントンのレストランが襲撃された事件である。
犯人は
民主党のヒラリー・クリントン氏が児童買春に関与しレストランがその拠点だった
と信じ込んでいた。
そして事件の翌年には
“Q”と名のる人物がインターネットに書き込みを行なう。
闇の政府に対して“嵐を起こす”として支持が広がった。
Qアノンの支持を受けるトランプ大統領。
8月にはQアノンに理解を示したとも受け取れる発言を行なった。
(トランプ大統領)
「ありがたいことにQアノンが
私のことがとても好きだということは知っている。
彼らは我々の国を愛している人だと聞いた。」
Qアノンの人たちは
既得権益層に帆範を繰り返して当選したトランプ大統領こそが必要な変化を起こしてくれると信じている。
(デモ参加者)
「トランプ大統領は既存勢力に対峙し
権力を庶民に取り戻すために登場した。
Qアノンの主張は大統領支持者のいうことと通じ合っている。」
Qアノンの主張がインターネット上で拡散するなか支持者による事件も起きている。
去年ニューヨークで
Qアノンの支持者が闇の政府の一員“だと思い込んだ人物を殺害したのである。
こうした事件を受けFBI(連邦捜査局)は
犯罪や暴力行為を誘発する可能性が高いとして
Qを監視対象にした。
Qアノンの取材を続けるジャーナリスト トラビス・ビュー氏。
今年3月以降 新型コロナウィルスの感染拡大で
Qアノンへの支持がさらに広がっているとみている。
(ジャーナリスト トラビス・ビュー氏)
「感染拡大以降Qアノンは増えている。
人々は家でSNSを見る時間が増えた。
ストレス・将来への不安から根拠のない陰謀論を信じるようになった。」
ネット上での広がりを受けSNSの運営会社はQアノンの活動の規制に乗り出している。
フェイスブックとインスタグラムは10月6日
暴力行為に関する書き込みの有無にかかわらずQアノンに関する投稿を禁止。
ツイッターやTikTokは
Qアノンの投稿があまり表示されないようにする措置を取った。
しかしQアノンの影響力はすでに政治の世界でも無視できなくなっている。
大統領選挙と同時に行われる上下両院の選挙で
Qアノンを指示する候補者は25人にものぼると言われている。
そのうちの1人
ロサンゼルス近郊の選挙区で共和党から下院議員に立候補するカーガイル氏。
“真実が社会主義を打ち砕く”と主張するカーガイル氏はQアノンを公然と支持している。
(共和党 カーガイル氏)
「Qアノンを理解するほとんどの有権者は彼らを指示している。
選挙戦略上マイナスにはならない。
私はQアノンの人身売買に反対するという主張を全面的に支持する。
Qアノンは各国政府や指導者の一部が隠してきた
人身売買などを明らかにしようとしている。」
Qアノンの取材を続けるジャーナリストは
候補者たちはネット戦略にQアノンの存在を利用しようとしている
と分析している。
(ジャーナリスト トラビス・ビュー氏)
「Qアノンは多くの時間をネットに費やしている。
自分たちに注目してくれる政治家のためなら
デジタルの“草の根部隊”として動いてくれる。
選挙戦にとってプラスだと考えている。」