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6月の青

2014-06-08 07:30:00 | 編集手帳

6月1日 編集手帳


『六月』という詩が井上靖にある。
〈海の青が薄くなると、
 それだけ、
 空の青が濃くなってゆく〉と書き出され、
情景の素描がつづく。
印象に残るのが、
青という色彩である。

濃淡によって表情がずいぶん変わる色だろう。
憂愁を帯びた寒色にして 清々(すがすが)しく、
ときに鮮烈でもある。
どの青が作家の心をとらえたのか。
新緑から 紺碧(こんぺき)の夏空へ、
移りゆく季節の境目を彩るのも、
アジサイの 瑞々(みずみず)しい青である。

もうすぐ列島各地で開花するのだろう。
雨のしずくにぬれて咲く姿が浮かぶが、
今年は梅雨前線の北上が遅れるという。
エルニーニョ現象の前兆らしい。

遠く太平洋東部の赤道域で海面水温が上昇し、
異常気象をもたらす現象である。
5年ぶりに発生する可能性が高く、
前線の停滞を招きやすい。
梅雨明けも遅れるという。
集中豪雨の警戒も怠りなく、
湿潤の時を過ごしたい。

先の詩はこう結ばれる。〈移動する青の一族。その隊列を横切るために、私は旅に出なければならぬ〉。6月の始まりに、作家のごとく青の一族を探してみるのも悪くない。遠出せずとも道端で、そっと開いたアジサイに出合えたらいい。


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