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詩句にみる野鳥との距離

2021-05-27 07:16:41 | 編集手帳

2021年5月11日 読売新聞「編集手帳」


道を歩けばスズメに会った時代の作品だろう。
俳人の藤井紫影が描写している。
<子雀の一尺飛んで親を見る>

スズメの子が親と暮らすのは10日ほどで、
その後はスズメの子だけで群れを作って旅に出るという。
そんな習性を知ってからというもの、
一茶の句をふしぎに思うようになった。
<雀の子そこのけそこのけお馬が通る>。
親がそばにいる光景を一茶も目の当たりにしたのだろうか。

短い子育て期間にもかかわらず、
そこに目を向けている。
かつてはそれだけ、
生活の周りにたくさんのスズメがいたということだろう。

宮沢賢治の詩「小岩井農場」に鳥にちなむ色の名が出てくる。
柔らかな山肌は「ひわいろ」、
遅咲きの桜の花は「鴇いろ」、
ゆるやかに傾斜する畑は「とびいろ」――
「鶸(ひわ)色」は明るい黄緑、
鴇(とき)色」は淡い紅色、
鳶(とび)色」は茶褐色。
小欄は辞書に頼らないと詩句の像を結べなかった。

ちなみに雀色は夕暮れ時の形容だが、
今や死語に近い。
野鳥への親しみ方が変わったからだろう。
愛鳥週間(10~16日)を迎えた。
鳥たちとの距離がこんなに違うと、
昔の俳人や詩人が言っているような。

 


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