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報道を権力で抑え込む国

2014-10-12 11:00:00 | 編集手帳

10月10日 編集手帳

 

歯から見れば、
のべつ幕なしにまとわりついて離れない唇は鬱陶(うっとう)しい存在かも知れない。
〈唇亡(ほろ)びて歯寒し〉は中国の古典『春秋左氏伝』の言葉だが、
いくらいまいましい相手でも、
唇がいなくなれば歯は寒風にさらされる。

一国の為政者を歯にたとえればメ ディアは唇にあたろう。
新聞、出版、放送の別を問わず、
言論という唇が衰亡したとき、
いかに寒々とした社会を招くかは古今東西の歴史が教えている。

韓国の検察当局が産経新聞の前ソウル支局長を名誉毀損(きそん)罪で在宅起訴した。
コラムで朴槿恵大統領の名誉を傷つけたという。

証券街のうわさ話として朴大統領の男女関係をにおわせた文章には、
コラム書きの端くれとして一片の共感も覚えないが、
下品でも言論は言論である。
「報道を権力で抑え込む国」の汚名が韓国の名誉を損なう度合いは産経コラムの比ではあるまい。

〈高 貴なる精神(こころ)は縛り得ざるなり後(うしろ)手(で)されし金(キム)芝河(ジハ)の眸(め)よ〉(橋本喜典)。
かつて「唇」を封じられた抵抗詩人が39年ぶりに再審無罪を手にしたのは、
つい昨年のことである。
時計の針が逆戻りしかねない「歯」の暴走を深く憂える。


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