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「笑う」はほのぼの 「嗤う」は邪気

2021-04-16 07:03:11 | 編集手帳

2021年3月19日 読売新聞「編集手帳」


馬糞で作った堆肥にはえるキノコが美味であることを発見したのは、
古代ローマ人といわれる。
いわゆる食用マッシュルームの起源である。
日本では馬糞茸(まぐそだけ)と呼ばれ、
昔から存在は知られていたという。

近代植物学の祖・牧野富太郎博士はこの気の毒な名のキノコをおいしく食べられると知ったとき、
腹を抱えて笑い転げたのか、
随筆「植物一日一題」に異例の様式で書き留めた。
自作の俳句を並べたてたのである。

食う時に名をば忘れよマグソダケ、
家内中誰も嫌だとマグソダケ、
嫌なればおれ一人食うマグソダケ…と面白がっている。

「わらう」には笑うと嗤う(あざけること)があり、
線引きをしづらい。
五輪の開会式に、
女性タレントに豚の扮装をさせる「オリンピッグ」という出し物を発案した演出家が辞任した。
顰蹙(ひんしゅく)を買ったのは、
人の容姿を嗤う面があるのに思い至らないことだろう。
いじめの加害者に似ていなくもない。
邪気に気を留めず、
平和と人道を掲げる祭典で発表しようとした愚かさもある.

牧野博士の面白がり方をほのぼのと感じるのは対象がキノコのうえ、
底抜けに無邪気だからだろう。

 


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