2021年3月20日 読売新聞「編集手帳」
本紙「時事川柳」欄が東京、
大阪本社を拠点に、
別々に投稿作品を選んでいるのはご存じだろう。
同じ3月7日付に東西でじつに対照的な作品が載っている。
<おもてなしする客なしも仕方なし>(東京 森昭大)。
五輪とも飲食店とも読める。
で、
一方はというと<大売り出し検温銃が通せんぼ>(大阪 原洋志)。
緊急事態宣言が一足先に解けた街の景色だろうか。
開放感と緊張感の両方がユーモラスにつづられている。
週明けに1都3県の宣言が解除され、
所々警戒の赤に塗られていた日本地図がようやく真っ白になる。
依然気を抜けない情勢でも、
どこかホッとするのは人情だろう。
きょう春分の日が巡り来た。
1年前の昼夜の長さが等しくなる日はどんな世の中だったか?
本紙をたどると、
専門家会議が警戒を呼びかける記事が1面にあった。
<換気の悪い密閉空間、
人の密集、
近距離の会話や発声が行われる3条件が…>。
いわゆる「3密」の呼びかけはここに始まっていた。
近頃では当たり前すぎるためか、
あまり耳にしない。
つい懐かしいとつぶやいてしまい、
いやまだまだと心の緩みに蓋をする。