2月18日 国際報道2019
南米第2の経済大国アルゼンチン。
通貨安による急激なインフレが市民生活を直撃し
危機的な経済状況に陥っているアルゼンチン。
アルゼンチンは人口4,400万。
国土は日本の約7,5倍の面積で
農業や畜産業を主要産業とする南米第2位の経済大国である。
ここ10年ほどのGDP国内総生産の実質成長率をみると
2010年には経済が好調の隣国ブラジルの恩恵を受け高い伸びを記録していた。
しかしその後ブラジル経済の成長が鈍るとアルゼンチンもともに低迷していく。
さらに経済低迷の要因となっているのが為替レートである。
アルゼンチンの通貨ペソは
10年前は1ドルに対し3ペソ台だったが
2016頃から政府の財政緊縮にアメリカの利上げが重なり一気に通貨安が進行。
昨年には一時1ドル40ペソにまで
現在も1ドル30ペソ後半と
10年前の約10分の1という低い水準での取引となっている。
その影響で物価指数の上昇。
前年同月比で50%も高くなっている。
八方ふさがりにも思えるアルゼンチン経済。
しかし今ある変化が見え始めている。
首都ブエノスアイレスにある印刷会社。
企業向けにカレンダーや会計用の書類などを印刷しているが
2010年に1,400社あった取引先が
今では400社にまで減るなど業績が落ち込んでいる。
(印刷会社 経営者)
「注文の量が激減しました。」
去年から今年にかけて人件費を減らすため12人いた従業員のうち4人を解雇した。
それでも通貨安により輸入する紙やインクの価格が2倍以上に跳ね上がり
厳しい経営を強いられている。
(印刷会社 経営者)
「今後よくなる見通しはありません。
今はじっと耐える時期なのかもしれない。」
通貨安に苦しむアルゼンチンの人々。
ところが今その通貨安をチャンスに変える動きが出始めている。
ブエノスアイレス中心部にあるステーキ店。
最高級の肉やワインを楽しもうと連日多くの人が訪れ長蛇の列となっている。
人気の秘密は安さである。
最高級の牛肉のステーキは500g20ドル。
日本で注文すれば1万円以上するワインを一緒に頼んでも合わせて50ドル程度。
1年前の半分くらいの価格で楽しめる。
客の多くは外国からの観光客である。
(オーストラリアからの観光客)
「おいしい!
大きくて誰かと分けてもいいくらいだわ。」
(アメリカからの観光客)
「すばらしい!
柔らかくて最高だよ。
完璧だ。」
(店長)
「いろいろな国から客が来ています。
観光が好調で飲食業も繁盛しています。」
急激な通貨安は多くの外国人観光客を呼び込み
ここ3年その数は右肩上がりに伸びている。
観光客増加の流れを軌道に乗せようと行政も動き出している。
ブエノスアイレス市が企画したツアー。
元大統領夫人で国民の親しまれたエビータなど著名人のお墓をめぐるものである。
このツアー以外にもアルゼンチン料理の体験教室など50以上のツアーを企画し
できるだけ長く観光客に滞在してもらい
外貨獲得につなげていこうとしている。
(ブエノスアイレス観光担当者)
「ドル相場の変動は大歓迎です。
観光業も増え
我々には好都合です。」
観光に加えて外貨獲得のため今アルゼンチン政府が力を入れようとしているのが輸出の拡大である。
(アルゼンチン マクリ大統領)
「輸出の機会を増やしたい。
輸出はこの国の鍵だ。」
政府の政策を受け
主要産品である牛肉など肉類の輸出は去年前の年と比べて39,8%も増えた。
さらに新たな輸出の動きも。
ブエノスアイレス郊外にある豚肉の加工工場。
アルゼンチンではこれまで豚肉の加工品は主に国内だけで消費されていた。
この会社には
通貨安で競争力のある今こそ海外へ売り出すチャンスだと
目を付けた日本企業が海外事業への参入を持ち掛けている。
(三井物産アルゼンチン)
「ここから輸出をして外貨を獲得することはアルゼンチン政府の制作でもあるので
政府とも利害が一致していることをやっていきたい。」
(生ハム工場 責任者)
「今は輸出にとても有利な為替相場なので
もっと商品の輸出に力を入れなくてはならない。