2021年2月25日 NHKBS1「国際報道2021」
エジプトのロボット工学者 マフムード・コミーさん(27)。
エジプトでも新型コロナの影響が続くなか
コミ―さんは医療現場を支援する人型ロボットの開発に取り組んでいる。
ロボット作りを志すきっかけは日本のアニメだった。
自在に動くアーム。
肩に搭載されたサーモカメラで体温を測定し
胸のモニターで表示。
そしてPCR検査用の綿棒まで備え付けているのが
人型ロボットのキラ3号である。
まだ試作段階だが医療支援用に開発されたれっきとしたロボットである。
エジプト北部の町 タンタ。
開発者のマフムード・コミーさん(27)。
ロボット工学の博士課程を学ぶ大学院生である。
コミ―さんは去年3月
新型コロナウィルスの感染が世界的に拡大するなか
ひっ迫する医療現場の助けになればとロボットの開発を始めた。
(ロボットを開発したコミ―さん)
「ロボットを作って医療関係者を救いたいと思ったのです。」
コミ―さんがロボット工学を志すきっかけとなったのは
昭和を代表するロボットアニメ「マジンガーZ」。
人が操るロボットが悪を退治するこのアニメシリーズは
エジプトをはじめ中東各国でも放送され多くの子どもたちの心をつかんだ。
(ロボットを開発したコミ―さん)
「マジンガーZや日本のアニメが大好きでした。
人の役に立つものを作るのが私の夢でした。」
しかし実際にロボットを作るとなると一筋縄ではいかない。
最初の壁は製作費である。
これまでにかかった費用約100万円は全て自腹。
コンピューター教室の講師をするなどして資金を工面した。
調達が難しい部品はおもちゃの部品で代用。
白いガムテープを使って胴体のあちらこちら補強するなど
苦心の末 作り上げた。
医療支援を目的とするため
性能の追求に妥協は許されない。
独自にソフトウェアを開発し
スマートフォンを使ってどこからでも遠隔操作できるようにし
綿棒の取り替えが可能なアームを使ってPCR検査までできるようにした。
マジンガーZほどのカッコよさはないが
医師たちの役に立ちたいというコミ―さんの思いがこもった作品である。
この日コミ―さんは実用化に向けた次のテストを行なった。
地元の病院の協力を得て
実際の医療現場で動きを確認する。
肺の超音波診断を行なう作業や
人工呼吸器を患者の口にあてる作業も試した。
しかしスムーズにマスクを口に運ぶことが出来ない。
視察をした医師は
(医師)
「アームが動く速さが問題です。
マスクをつけるまで時間がかかり過ぎます。」
(コミ―さん)
「自動で動かせるようになればもっと速くできます。」
少しほろ苦いテストになった。
(医師)
「世界的に医師が不足しているなかでロボットによる補助は不可欠です。
もっと性能を上げてくれれば。」
コミ―さんは次のキラ4号ではより性能を高めて本格的な医療現場での稼働を目指している。
(ロボットを開発した コミ―さん)
「コロナウィルスは巨大なモンスターです。
このロボットは強靭な兵士のように私たちを見守ってくれます」
日本のアニメへのあこがれから生まれた医療支援用の人型ロボットキラ。
新型コロナに打ち勝つため
出動する日はいつになるのか。