12月18日 NHK「おはよう日本」
奈良市の興福寺で8年前に僧侶になったドイツ人が
一人前の僧侶になるための“堅義(りゅうぎ)”と呼ばれる試験に臨んだ。
ドイツ人のザイレ暁映さん(41)。
高校生のころ日本語を学んだのをきっかけに仏教に興味を持った。
日本とアメリカの大学院で仏教を学んだあと
研究者として9年前に来日。
興福寺の僧侶になった。
(ザイレ暁映さん)
「お坊さんになったドイツ人ではなく
たまたまドイツで生まれたお坊さんだという考え方なので
仏教は世界宗教ですから
国籍もともと関係ない。」
寺で修業を重ねてきたザイレさん。
一人前の僧侶になるための試験「堅義(りゅうぎ)」に挑戦することになった。
堅義は興福寺など法相宗という宗派に千年以上前から伝わる難行。
挑戦できるのは一生に一度だけである。
堅義に向けた本格的な修行が始まった。
3週間 座敷にこもる。
与えられるのは机などに囲まれた半畳ほどのスペース。
3万の漢字で記された宗派の教えをひたすら暗記する。
人と話すことも横になって寝ることも許されない。
1と6の付く日には座敷の外に出て「大廻(おおまわ)り」という修行にのそむ。
興福寺の五重塔や寺とゆかりの深い春日大社など二十か所を参拝。
教えを身につけられたか
自らの問いかけつつ
難行を無事終えられることを願った。
11月13日 堅義の当日
夜9時頃ザイレさんは白い法衣をまとって挑んだ。
「暁映 登高座 登高座」
名前を呼ばれ高座に上がる。
堅義は法相宗に関する口頭試問である。
別の僧侶から投げかけられる五つの問いに
ザイレさんは漢文で次々答える。
およそ1時間半
ザイレさんは合格した。
外国の人がこの難行を無事終えたのは初めてだということである。
(ザイレ暁映さん)
「口座にのぼってから緊張感が出たが
私たち僧侶にとって
一生に一度だけこういう役を務めることができるのは名誉なことなので
その喜びで精一杯だった。
仏教が日本に伝わってから千年以上伝わっているが
多くの方がこれを古いとか古典的なものとしてみているんですけど
今の私たちの心は全く変わっていません。
みなさまのためになる仏教を自分の修業を通して紹介したい。」
難関を突破したザイレさん。
仏の道をこれからも歩み続ける決意である。