11月12日 NHK海外ネットワーク
日本にとって最大のタコの輸入国モーリタニア。
大西洋に面する西アフリカのモーリタニアの沖合いは、
世界有数の漁場として知られている。
首都ヌアクショットの海岸沿いの魚市場は大勢の人で賑わう。
魚市場の奥には水揚げされた大量のタコが冷凍加工されていた。
3時間かけて沖合い30kmの漁場でタコツボからタコを取り打す。
その日は20匹のタコが獲れ、2万7,000ウギア(約7,000円)で売れた。
米なら100kgが買える額である。
食事は鯛めしなど毎日新鮮な魚が使った料理が食卓に上る。
タコ漁での収入はモーリタニアの公務員の初任給の5倍にもなるという。
モーリタニアがフランスから独立した1960年は、
植民地が相次いで独立したアフリカの年と呼ばれている。
広大なサハラ砂漠が広がるモーリタニアに国を支える産業はなく、
国民の多くが貧困に苦しんでいた。
そのモーリタニアにタコ漁を伝えたのは中村正明さん(63)。
1977年に漁業指導員としてモーリタニアに渡った。
タコを食べる習慣のないモーリタニアの人たちは当時タコの獲り方を知らなかった。
タコ漁は朝早く漁に出なければならないが、
地元の人たちに時間を守らせるのが大変だった。
朝4時に来なければクビにしてすく入れ替えるという厳しさに反発の声があがったが、
“中村さんの指導で水揚げが増える”
と評判が広がった。
タコツボのタコを触るのをいやがる漁師にも
“真水をツボのなかに入れてやる”
と秘訣を教えた。
当時タコは全て日本向けに輸出されていたが、
中村さんが本格的にタコ漁の指導を始めて4年で輸出量は2倍近くに伸びた。
漁師の中には“ナカムラ”“マサアキ”をもらって
自分の息子や、乗っている船に名づける人もでたほどである。
去年、中村さんに大統領から勲章が送られた。
モーリタニア漁業省 海外協力担当 モハメド・エル・ハフドさん
「タコ漁をしている漁業者の間では中村さんはとても有名です。
我々は彼がモーリタニアのタコ漁の発展に貢献した栄誉をたたえ勲章を贈った。」
モーリタニアの輸出に占める水産物の総額は約200億円。
タコはその約86%を占めている。
タコを冷凍加工する施設も日本の支援で整備された。
豊かな海のタコが遠く離れた日本とモーリタニアで人々の暮らしを結んでいる。