2021年6月12日 NHK「おはよう日本」
インドネシアの少数民族“バドゥイ”。
数百年にわたって
昔ながらの慣習を守ってきた民族で
その素朴な暮らしぶりが人気を呼び多くの観光客が訪れていた。
しかし新型コロナの感染拡大で観光客は激減。
一部のバドゥイの人々は
観光客から得ていた現金収入を失ってしまった。
インドネシアの首都ジャカルタから南西へ120キロ。
ジャワ島西部バンテン州の山間部。
「やあ みんな!
サルカ・バドゥイチャンネルへようこそ!」
森の中の畑で動画を撮影しているのは
少数民族バドゥイのサルカさん(25)である。
2年ほど前からユーチューバーとして活動するサルカさん。
自分たちの伝統的な暮らしを広く知ってもらいたいという思いで始めたという。
(ユーチューバー サルカさん)
「私たちの日常生活を紹介しようと動画の投稿を始めました。
ネット上でも好意的に受け止めてもらえて
とてもありがたく思っています。」
「これがタロイモですよ。」
妻や娘と一緒に
毎月数本こうした動画を投稿している。
「チャンネル登録してね!って。」
「登録してね~。」
山間部に1万3,000人ほどが暮らすバドゥイ。
数百年にもわたって言い伝えられてきた信仰と
伝統的な慣習に基づいた生活をおくってきた。
昔ながらの慣習を守るため
住宅には今も電気やガスは通っていない。
移動も徒歩のみである。
今では珍しくなった暮らしぶりを聞きつけ近年多くの観光客が訪れたことで
バドゥイの人々の生活は大きく変化した。
村の入り口にはバドゥイの人々が経営する土産物店が並んでいる。
観光客から現金収入を得ることで生活は豊かになり
これまで禁止されてきた電気製品を使う人も出てきた。
なかには
近隣の村にとどく携帯電話の電波を拾い
スマートフォンでSNSや動画を楽しむ人も出ている。
「チャットや動画 ゲームをしています。」
新型コロナの感染拡大で観光客が激減したことで
こうした人々の生活に影響が出た。
いまサルカさんは動画配信をむしろ積極的に使うことで
コロナ禍のバドゥイ社会を支えることができると考えている。
動画では特産の土産物を紹介。
通販サイトなどでの販売促進につなげている。
(サルカさん)
「木の皮を使った
環境に優しいブレスレットです。
こうした民芸品は通販サイトなどで購入できますよ。」
動画による宣伝効果で特産品や伝統的な織物の売り上げは倍増している。
視聴登録者数もこの1年で急増。
約7万人に達した。
(サルカさん)
「私が売り上げを増やすことで
コミュニティーとも協力していけます。」
現代文明の恩恵を受けながら
いかに伝統を守るか。
そのバランスが大事だとサルカさんは言う。
(サルカさん)
「テクノロジーを欲望のためだけに使うのはバドゥイの人々のためになりません。
しかしそれで経済を発展させられるのなら
利用するにこしたことはないです。」
2021年6月10日 NHKBS1「キャッチ!世界のトップニュース」
タイ料理の代表的なものといえば
エビを使ったトムヤンクン
カニを使ったカレーなどがある。
ところが魚介量の出荷量は近年全体的に減少傾向になっている。
エビの出荷量は10年間で大きく落ち込んだままである。
その背景には
乱獲に加えて気候変動が指摘されているほか
養殖で病気が流行したことなどがある。
どうやって生産量を回復させながら持続可能な漁業を実現させるのか。
水揚げされたのは養殖で育てられたエビ。
タイでは大半のエビが養殖で生産されている。
しかし出荷前に死んでしまうエビも少なくない。
課題の1つがエビを数える作業。
ふ化したばかりの稚エビを成長に応じて大きな水槽や池に移すが
その際
適切なエサの量や水槽の広さを計算するために数を数えている。
スプーンでバケツからすくい上げ1回1回 目で確認しているので
1,000匹数えるのに30分ほどかかってしまう。
そのためエビに負担がかかり
作業後5%ほどが死んでしまうことがあるという。
(エビ養殖業 経営者)
「バケツの中で弱るので
酸素を送り続ける必要があります。」
タイのエビの生産量は病気の流行などが影響し
10年で約20%減少。
月に約2,000万匹出荷する養殖業者でも
生産性をどう上げるのか課題となっている。
そこで去年導入されたのが計測器である。
集めたエビを容器の中に入れてボタンを押せば20秒ほどで数え終わる。
タイのスタートアップ企業が
カメラとAI(人工知能)を組み合わせた装置を作り
エビの数をすばやく計測できるようにした。
死んでしまうエビが減るだけでなく
エビの状態を画像で確認できるため
病気にかかっていないかチェックもできるという。
(エビ養殖業 経営者)
「技術で養殖を管理すれば
持続性は高まります。」
一方水産加工の分野では別の試みも行われている。
首都バンコクにあるレストラン。
タイで今年初めて発売された代替カニ肉。
原料は大豆や小麦由来のタンパク質など。
レストランのほかスーパーなどでも家庭向けに販売され
菜食主義以外の人からも好評だという。
(レストランのオーナー)
「需要は高いと思います。
植物由来のものが健康や環境に良いと多くの人が気づいています。」
開発したのは
年間約4,500億円を売り上げている世界有数の水産加工会社。
消費者の環境や健康意識の高まりを受け
新たな収益源になるとみて
カニの食感や味に似る配合を2年以上かけて研究した。
代替カニ肉の生産によって漁船の燃料が減ることなどから
二酸化炭素の排出は
本物のカニ肉と比べ1Kgあたり最大89%の削減が可能だとした。
年間で約2,300トン削減できると試算している。
今後は代替エビや代替イカの販売も視野に入れているという。
(大手水産加工会社 ̠カセンスワさん)
「代替魚介類の開発で
環境に大きい影響を与えられます。
漁業の持続可能性をもっと高めていけると思います。」
2021年6月9日 NHKBS1「国際報道2021」
3年後のパリオリンピックでの利用が決まった
アーバンルーフという新しい移動手段。
フランスの学生たちが中心となって開発したもので
脱炭素化の取り組みとして注目されている。
フランス北東部のナンシー近郊で開発が進められているアーバンルーフ。
動力源は線路を流れる電気で
走行中に温室効果ガスは排出しない。
最大の特徴は1つ1つの車両が小型なことである。
最高速度は時速60キロ。
1cm単位の精密さで位置情報を割り出す装置を搭載し
5キロの区間で同時に150台の車両を走らせることができる。
1時間で最大3,000人の輸送が可能だという。。
車両が小さいことで
地下鉄や路面電車に比べ建設費用も大幅に抑えられる。
環境にも財政にも優しい
新たな公共交通機関として実用化を目指している。
(アーバンルーフプロジェクト責任者 モンジョさん)
「狙いはパリやニューヨーク 東京などの大都市に作ることではありません。
財政的・技術的に地下鉄を建設できないような
中規模の都市にとってのj解決策です。」
開発を担ってきたのは地域の学生たちである。
4年前に地元の9つの大学などが授業の一環として
経済的で環境に優しい乗り物を共同で研究。
たどり着いたのがアーバンルーフだった。
プロジェクトを進めるための企業も大学を中心に設立され
今も約100人の学生がインターンなどを通じて関わっている。
(ナンシー理工科大学 学生 サバリさん)
「本当に楽しい。
学んできたことを
気候変動の対策という具体的な目的のためのプロジェクトで実践することができます。」
3年後のパリオリンピックでは競技会場のひとつと最寄り駅目での結ぶ予定である。
5月のお披露目イベントでは
政府高官も見守るなか
効率の良さを示すため
1キロ走るのに必要な電力量を測った。
結果は電気代にして1キロあたり0,6円あまり。
1円を切った。
(ジェバリ交通担当相)
「公共交通機関が抱える課題は
環境への負荷をいかに減らすかだ。
アーバンルーフはその課題に応えていて
プロジェクトの成功に疑いはない。」