受け継がれる遺伝子

やたらと多趣味な上の子を、今度はプロ野球に染めようと思ったわけではないのだが、我らが阪神タイガースが優勝するほどの勢いがあったこともあり、結果この半年で私がプロ野球を話題にすることが増えた。
開幕前までほとんどルールも何もわからなかった小学生は、今では阪神の選手の背番号とフルネームが瞬時に言えるようになってきた。
シーズン終盤には、オーダーを言えば、打順を覚えて次の打席が誰から始まるのか、というような戦略的なところも理解してしまった。

私の家では、基本的にテレビを見ないという方針もあって、子どもが主に手に入れている情報手段は主にラジオである。
また、試合をする日ではない休日に、甲子園駅まで出かけてショップで買ってもらったグッズ、阪神のキャップを被って応援するスタイルが浸透した。
なぜか子どもが帽子を被ると逆転して、抑えて、勝つ、という展開が多かったこともあり、「○○が帽子を被ったら勝つ。被らないと負ける」というジンクスができた。

だから、必死である。
負けそうな展開でお風呂に入る時間になると、飛び込むようにお風呂に行って、すぐに上がってくる。
裸のまま帽子だけを被ってラジオにかじりつく。
その様子をみた母親（私の配偶者）が、「着替えさせてからラジオをつけて！」と子どもと一緒に叱られる。

優勝が決まったときは、私はラジオを聞きながら涙した。
息子は満面の笑みでハイタッチに応じてくれた。

夏頃、子どもが聞いてきた。
「なんでお父さんは阪神ファンなの？」
「……何で○○は阪神ファンなの？　それと一緒やで」
こうして関西では脈々と阪神タイガースファンという遺伝子が受け継がれていく。

（残念ながら我が子はまったく運動ができない、というオチも付いている……。）