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ネタバレ必至で読み解く主観的映画批評の日々!

ジャレド・ダイアモンド「銃、病原菌、鉄」

2019-06-16 11:36:51 | 読書のススメ
妻の本棚にあって、おすすめされていた本。
朝日の「平成の30冊」の中にもあったため手に取った。

人類の歴史に関する本で、いわゆる有史以前の人類の動きや変遷を捉えている。
20年も前の作品だが、いまでもその仕事は色あせていないだろう。
これほどの緻密な研究を、そして総括的に捉えたものはかつてなかったと言っていい。
歴史にはその時代の人間の意図が含まざるを得ないことは当然だが、この作品の壮大な物語は、それを分かっていても価値がある。
人間がどのようにしてこのような世界を構築していったのか、読むべき本だろう。

ドント・ウォーリー」の批評のとき、やたらと翻訳調だったのはこの作品を読んでいたからだ。
面白半分で、半ば意図的にそう書いたけど。

▼以下はネタバレあり▼

どこまでこの作品が事実や研究を踏まえているのかどうか、私にはわからない。
もしかしたら、彼の大きな物語を支える事実だけを取り上げて書き上げたのかもしれない。
そうだとしても、なぜパプアニューギニアには先進的な技術が一つもなくて、ヨーロッパにはそれがあったのか、その疑問に鋭く答えているだろう。

農耕というものがどのように始まったのか。
そして家畜がどのように家畜化されいていったのか。
それがいかにその後の歴史に影響を与えたのか。
ヒューマニストは、先進国が原住民を虐殺し、強奪していったと主張するその出来事を、極めて冷静に、学術的に説明している。
それはデカルトではないが、完全に研究対象としての人間を、自己の思想などから切り離して考えようとしている。
非常に科学的な態度だ。

だからこそ、説得力があるし、私たちがたかだが数百年の資本主義や人間至上主義といった考え方にとらわれているよりももっと前から、弱肉強食の時代があったことをうかがわせる。
そして、文化や文明は、外からの影響によって発展し、変化し、深化していくのだということが見えてくる。
まったく地図もなかった人々が、未開の地に船旅で向かうことはどれくらいの勇気だったのだろう。
それは、まさに火星や土星にロケットで飛び立つに等しい、好奇心だったのかもしれない。

地球という未開の地を制した人間は、やがて宇宙へと飛び立つだろう。
そういう生物としての性(さが)、運命を、この本を通して見えてきたように思う。
大きな視野で、地球創世からの歴史を今一度鑑みることで、私たちがいまどこにいるのかが、見えてくる。

そういう視点をもたらせてくれるこの本は、非常に重要な仕事をしていることは間違いなさそうだ。

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