★ネタバレなし★
芥川賞受賞作からの「劇場」。
太宰に傾倒する又吉らしい作品と言えば作品だ。
現代の、太宰や、織田作之助を思わせる、「ダメ男」の話だ。
彼がそのあたりの作家と違うところは、描写によって物語世界へ引っ張っていくことばの強さだと思う。
そしてやはり、男なら一度は引き込まれてしまう、女の弱さと男の弱さをしっかりと描いている。
つまりは具体性と抽象性を兼ね備えた物語になっている。
普遍性と特殊性といってもいい。
どこにもない物語でありながら、どこにでもいそうな人物たちが、わかっていてもどうにもならないという不条理の中で生きている。
あまりおもしろくない(私が評価しない)作家の作品を読まない私にとっては、比較対象がいないが、人が陥るエゴをきちんと表象できる稀有な作家の一人だと思う。
又吉だからとか、芸人だからとか、そういうことはおいておいて、読んで評価されるべきだろう。
次作も楽しみにしたい。
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