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ネタバレ必至で読み解く主観的映画批評の日々!

イコライザー(V)

2018-12-28 15:55:31 | 映画(あ)
評価点:72点/2014年/アメリカ/132分

監督:アントワーン・フークア

見終わった後、なぜか整理整頓したくなる映画。

ホームセンターで働くマッコール(デンゼル・ワシントン)は、自制心が強く規律ある生活を営んでいた。
死別した妻との約束を守るため、100冊の読書を夜のカフェで行うのが日課だった。
あるときそのカフェに出入りしていたアリーナ(クロエ・グレース・モレッツ)が客ともめていると知る。
そして、彼女が見せしめに元締めから酷く痛めつけられたことを知った。
マッコールは衝動的に元締めのアジトに乗り込んだが。

「トレーニング・デイ」の監督と主演の、アクション映画。
トレーラーでは、盛んに「19秒で全てを解決する男」といった触れ込みだったが、実際にはかなり趣は違うと思う。
デンゼル・ワシントンなので、その名前にピンとくる人はきっと楽しめることだろう。

余計なことを考えずに、物語は一直線に進んでいくので、わかりやすい映画だ。
96時間」や「ジョン・ウィック」などの話が好きな人は、間違いなくおもしろいと思えるだろう。

▼以下はネタバレあり▼

先にタイトルを出したが、「96時間」「ジョン・ウィック」と趣が近い。
ともに言えることは、非常に古典的なアクション映画だということだ。
余計な伏線やミス・ディレクションはない。
悪いやつは最後まで悪いし、よい奴は最後までよい奴だ。
裏のプロットなんて考える必要はない。
近年、わかりやすい敵がいなくなったアメリカにとっては、逆に勧善懲悪(完全な懲悪)は需要があるようで。
胸のすくような作品とはこのことだろう。

さて、この映画の肝は「日常性」である。
DIYが一般的なアメリカにおいて、ホームセンターは日本よりももっと日常的な存在だ(日本在住のアメリカかぶれ情報)。
自己管理ができている人なら、必ずいきつけのホームセンターはある(たぶん)。
そういうホームセンターで働いている、自身の管理ができている男は、まさにアメリカが理想とする自律ある男性だ。
だから、彼はホームセンターで働いていなければならないのだ。

自己管理ができていない、しにくい現代だからこそ、マッコールの人間像はかっこよく映る。
事件が起こることで、次第に彼の本性が見えてくるところで、「なるほど、だからか」という合点がいく。
特にトレーラーよりもゆっくりとした展開であるため、彼の内面が見えるようで見えない。
CIAの高官との話で、ようやく彼の内面が見える。
その明かし方も自然で良かった。
日常性から非日常性、「気の良い奴」から「とんでもない強い男」への移行は見事である。

もちろん、最後の戦いの舞台がこのホームセンターであることと無関係ではない。
CIAという私たちになじみのない存在が、ホームセンターの店員かもしれない、という日常性は私たちのこころを見事にくすぶる。
たぶん、コーナン(近畿圏に多いホームセンターの名前)だとこういうドラマチックな展開にはならないだろうけれど。

そういう彼が、どんどん大きな組織に巻き込まれていく。
ただ女性を救っただけ(ふつうあんな解決の方法できないが)で、裏の国際社会を巻き込む大きな闘争に発展していく。
その敵役が、マートン・ソーカスである。
彼が非常によい味を出している。
徹底した仕事ぶりは、まさにイコライザーであるマッコールと対極にある。
その対比がマッコールをさらに引き立てる。

私たちが何と闘えば良いのかわからない、現代だからこそ、ゲロが出そうになるほどの悪を設定できたことで、「よくわらからないけど守ってあげたい正義」と「とにかく肌感覚でこいつは悪だと分かる悪」との対比が上手く描けていた。
混迷し、そして複雑化してしまった現代には、整理整頓をしながら単身悪の組織を打ち砕くのは、本当に気持ちいい。

ポイントになる役者がしっかりと押さえてあるのがよい。
おそらく低予算だが、見せ方と押さえどころがしっかりしているので、そういう安っぽさや不自然さがあまりない。
(そもそもCIAのエージェント像が、日本の医者なみにスーパーマン化していることは度外視だが。)


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