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ネタバレ必至で読み解く主観的映画批評の日々!

ユヴァル・ノア・ハラリ 「サピエンス全史」

2020-04-09 15:40:58 | 読書のススメ
ジャレド・ダイヤモンド「銃・病原菌・鉄」を妻に借りて読んでから、今度はハラリという人が話題らしいと聞かされた。
妻は「21 Lessons」の方を気にしていたが、私はこちらのほうが気になって、書店で衝動買いした。
おそらく「21 Lessons」もこの後読むことになるだろう。

この本はビジネス書に連ねられていることが多いが、ビジネスで生きるためのノウハウが書かれているわけではない。
教養のレベルの、すぐに使える知識の、前にある考え方が書かれている。
だから、どんな職種でも有効だからこそ、これほど話題になっているのだろう。

私は「銃・病原菌・鉄」を読んでいたので、本書をその流れで複合的に読もうとしていた。
ダイヤモンド本人も、この作品を推薦していたようだ。
いずれにしてもタイトル通り、サピエンスという人間がどのようにして今まで歴史を紡いできたかという、巨視的な視点に立った世界史だ。
ただ、我々が習ってきた「世界史」的な知識は殆ど与えてくれない。
むしろ、もっと大きな流れを追っている。

私は世界史があまり得意ではないし、熱心に学んでいなかったので、そんな私でもおもしろいと感じたのだから、誰にでも、それこそ中学生でも理解できるだろう。
私はこういう話を知ってから世界史を学びたかったと、痛烈に思う。

▼以下はネタバレあり▼

当然詳しくは読んで欲しい。
詳細はここには書かない。

ハラリは、人類は「認知革命」「農業革命」「科学革命」によって大きく歴史を動かしてきた、考えている。
「認知革命」とは、人間が神話や物語を、まるで本当にあるかのように信じ込むようになった変化である。
これは、他の動物には見られない、非常に特徴的な変化だった。
これによって共同体が生まれて、他者と協力する、未来を想定する、原因や理由を予想することなどができるようになった、というのだ。

この指摘はおもしろい。
私たちはその認知革命がアプリオリなものとしてあるため、どれが現実で、どれが物語なのかを忘れてしまっている。
資本主義も、民主主義も、法律も、人権も、みな「神話」であるという。
まさに、COVIT19の今の現状は、神話と現実の区別がついていないからこそ起こっている混乱だ。

「農業革命」はわかりやすい。
農業によって貧富が生まれ、人口爆発が起こり、家畜がふえ、衣食住に余裕ができたことでさらに集団に多様性がうまれた。
このあたりはジャレド・ダイヤモンドに詳しい。

「科学革命」はモダンやポストモダンでよく話題にされることだろう。
西暦1500年と1000年、1500年と2000年の間、それぞれの違いを考えれば、その変化がいかに急なものだったか、想像に難くない。
産業革命や人間至上主義は、人間をあらゆる面で変化させた。

そして最後に、私がおもしろいとおもったのは、もう一つ。
1945年以降、帝国主義による領土の侵略戦争は、湾岸戦争以外に起こっていない、世界は確実に平和になっている、ということ。
そしてこれからも、経済というシステムが機能している限り、侵略を目的とした戦争は起こりそうもない、ということだ。

私たちはいつしか情報があふれることで、本質を見失ってしまっている。
それは、今に始まったことではないのかもしれない。
なにをどのように考えるのか。

どこか冷静な視点が、常に必要だ。

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