「生きろ」と、君が言った。
評価:=80点
「行け!稲中卓球部」で人気を獲得した漫画家・古谷実が、“ヤングマガジン”で連載していた問題作を、『冷たい熱帯魚』『恋の罪』と野心作を連作する園子温監督が映画化。
原作を読んでいないのでどんな作品かは知らないが、かなり人気作家なんだ。
さて感想。
意外にもすがすがしい雰囲気だった。どうも頑張れという言葉は好きじゃないんだけど、茶沢景子がしきりに住田にかけるこの「住田、頑張れ!」が何か心地いい響きだった。
確かに絶望的な中学生の生きざまだったけど、それを応援する夜野というおっちゃんや同級生で同じような境遇の茶沢景子の支えはある意味心強いものさえ感じる。
園監督にしては明るい青春ものだ。
主役の2人は19歳と17歳という初々しいけど、内なるパワーを感じる。住田役の染谷将太は大人びた雰囲気を醸し出し。対して茶沢を演じる二階堂ふみは愛にしがみつく一途な少女役を明るく演じている。
住田の年なら夢を持つのが普通なんだろうけど、単に平凡な人生を送れば良いと考えている。それはやはり彼の置かれている現状なのだろう。借金を作って雲隠れしているどうしょうもない父と男を作って住田の元から去って行く母親。養育放棄をしている両親の間に生まれた彼に、何を求めろというのだ。
ネグレクト←皆さんご存じだろうか今問題となっている虐○の一つである。
この現実を突きつけられた彼の胸の内は一体どんなものなんだろうね。ただただ虚しすぎるよね。
そんな彼が何とか平穏無事に毎日を暮らしていたら、あの忌まわしい父親が突然帰って来ることで急に彼の人生がいっそう狂い始める。
金の無心。そんな金あるわけないじゃん!逆らうと殴るは蹴るはとそりゃひどい。 普通の生活は突然絶たれる。そんな住田に焦れる茶沢は疎ましがられながらも、必死で励ます。ビンタされてもハバにされても一生懸命、自分の気持ちを訴え続ける茶沢の姿にこちらもホロリと来る。
人間、押しが大事かもしれません。打たれ強い彼女にエールもん。ヴィヨンの詩集を大きな声で読む彼女の姿も印象的でこの場面もとても力を感じた。彼女も同じく母親から疎ましく思われ、愛に飢えていたのだ。
やっぱりいざとなると女性の方がたくましいのかもしれないね。半ば強引な茶沢の気持ちはいつしか住田の気持ちを解き離していくかのようだった。
脇を固める大人たちは、 夜野正造を演じる渡辺哲を始め、吹越満 神楽坂恵、渡辺真起子、黒沢あすかといった園監督作品常連ベテラン陣、、、、。
そして「冷たい熱帯魚」でインパクトな登場だったあのでんでん。今回もあの時のオーラが蘇って来た。
光石研はいつものイメージじゃないダメおやじをこれまた鋭く演じていて、意外にでんでんみたいにイメージが逆転だった。でも上手いよね。
金の無心に始まり、借金取りが登場。住田の希望する普通の生活は崩れ始める。そしてついにあの父親の一言で事件が・・・・。そのことがきっかけを境に“オマケ人生”と称して普通の人生からさよならするということに。
悪党探し!害のある悪党を自ら手をかけるということを始める。夢も希望も諦めたのか?いや最初から夢も希望もないのか?そのあたりは分からないが、混沌とした暗い闇の中を巡る少年住田。
茶沢の愛は住田を変えられるのか?あの「住田、頑張れ!」が報われることを祈るばかりである。いや多分上手く行くはず!
あ!この2人にも注目。吉高由里子は本当に出番ちょろっとだけだったけど。スリの名人テル彦を演じた窪塚洋介の演技はなかなか良かったよね。
解説(allcinemaより)
「冷たい熱帯魚」「恋の罪」の園子温監督が古谷実の同名コミックスを、舞台背景を東日本大震災後に設定して映画化した衝撃と感動の思春期ドラマ。愛のない両親によってどん底に突き落とされ自らの未来に絶望した15歳の少年の魂の彷徨を、同じように孤独な少女やホームレスの大人たちとの交流を通して描き出していく。主演は、本作の演技でみごとヴェネチア国際映画祭のマルチェロ・マストロヤンニ賞(新人俳優賞)に輝いた染谷将太と二階堂ふみ。
メディア | 映画 |
上映時間 | 129分 |
製作国 | 日本 |
公開情報 | 劇場公開(ギャガ) |
初公開年月 | 2012/01/14 |
ジャンル | ドラマ/青春 |
映倫 | PG12 |