♪キャロル・キング(右)とジェームス・テイラー
誰しも行き詰まること、思い悩むことがあります。
ふだんはあまり気にとめていなかった友人のありがたみを感じるのはそんな時だと思います。
「自分が逆境にある時に真の友だちがわかるもの」、なんて言いますね。ぼくも、自分が年齢を重ねるにつれ、だんだんとその言葉の本当の重さがわかってきました。
人間同士の付き合いって、言葉で言うほど単純なものではないですよね。「友だちだと思っているよ」と口に出して言うことは簡単ですが、言葉通り「友だちでいること」というのはたいへんなことだと思います。
苦しい時の自分を支えてくれる友人の存在は得がたいものだし、嬉しいものですよね。自分もそうでありたい、と思います。
「友人の苦しみを分かち合おうとするわたしの気持ち」を歌った「きみの友だち」という曲は、キャロル・キングの代表作で、1970年代のポピュラー・ソングを代表する名曲のひとつでもあります。
◆きみの友だち/You've Got a Friend
◆作詞作曲 キャロル・キング/Carole King
◆発 表 1971年
キャロル・キング 『つづれおり』
<キャロル・キング・ヴァージョン>
■歌・ピアノ
キャロル・キング/Carole King
■収録アルバム
つづれおり/Tapestry (1971年) 7曲目
■プロデュース
ルー・アドラー/Lou Adler
■録音メンバー
キャロル・キング/Carole King (piano, vocals, background-vocals)
ジェームス・テイラー/James Taylor (acoustic-guitar, backing-vocal)
ダニー・コーチマー/Danny "Kootch" Kortchmar (conga)
チャールズ・ラーキー/Charles Larkey (String-bass)
バリー・ソチャー/Barry Socher (violin)
デヴィッド・キャンベル/David Campbell (viola)
テリー・キング/Terry King (cello)
この曲の「わたし」は、陰から友人をそっと見守っているのではないでしょうか。そして、「今が手を差し伸べるべき時だ」と思ったら、その時こそ、ためらいなく自分のできることを全てしようとする、そんな友情を歌っているような気がします。
1971年にキャロル・キングによって発表された「きみの友だち」は、キャロルの生涯の友となるジェイムス・テイラーがカヴァーして大ヒットさせました。ロバータ・フラックとダニー・ハサウェイのデュエット・ヴァージョンもスマッシュ・ヒットしています。
この曲は1971年度グラミー賞のベストソング賞を受賞しています。
ロバータ・フラックとダニー・ハサウェイがデュエットしたものは、ポップさと洗練された黒っぽさがほどよくクロスオーヴァーしている感じ。ストリングスやアコースティック・ギターの甘さと、ブルージーなエレクトリック・ピアノとのコントラストが鮮やかです。ロバータのナチュラルな声と、ダニーのソウルフルな声もうまく溶け合っていますね。
ダニー・ハサウェイはソロでもこの歌を取り上げていますが、こちらはゴスペル・タッチにアレンジされていて、せつない感じが迫ってきます。とても重厚。
ロバータ・フラック&ダニー・ハサウェイ 『きみの友だち』
<ロバータ・フラック&ダニー・ハサウェイ・ヴァージョン>
■歌・演奏
ロバータ・フラック&ダニー・ハサウェイ/Roberta Flack & Donny Hathaway
■シングル・リリース
1971年
■収録アルバム
ロバータ・フラック&ダニー・ハサウェイ/Roberta Flack & Donny Hathaway (1972年) 2曲目
■プロデュース
ジョエル・ドーン/Joer Dorn、アリフ・マーディン/Arif Mardin
■録音メンバー
ロバータ・フラック/Roberta Flack (vocals, piano, electric-piano, organ)
ダニー・ハサウェイ/Donny Hathaway (vocals, piano, electric-piano)
デヴィッド・スピノザ/David Spinozza (guitar)
チャック・レイニー/Chuck Rainey (bass)
ビリー・コブハム/Billy Cobham (drums)
ジョー・ジェントル/Joe Gentle (flute)
■チャート最高位
週間チャート アメリカ(ビルボード)29位、アメリカ(ビルボードR&B)8位
ダニー・ハサウェイ 『ライヴ』
<ダニー・ハサウェイ・ヴァージョン>
■歌・演奏
ダニー・ハサウェイ/Donny Hathaway
■収録アルバム
ライヴ/Live (1972年) 4曲目
■プロデュース
ジェリー・ウェクスラー/Jerry Wexler、アリフ・マーディン/Arif Mardin
■録音メンバー
ダニー・ハサウェイ/Donny Hathaway (vocals, electric-piano, piano, organ)
フィル・アップチャーチ/Phil Upchurch (guitar)
マイク・ハワード/Mike Howard (guitar)
ウィリー・ウィークス/Willie Weeks (bass)
フレッド・ホワイト/Fred White (drums)
アール・デルーエン/Earl DeRouen(conga)
アコースティック・ギターをバックに歌うジェイムス・テイラーのヴァージョンは、優しいフォーク調にアレンジされていて、薄日が射し込むようなほんのりとした暖かさを感じます。
ピアノの弾き語り風のキャロル・キング・ヴァージョンは、言ってみれば「私小説」のような雰囲気があります。とつとつと、しかし正直に自分の気持ちを歌っている、そんな味があります。友人の肩をそっと抱くようにも聞こえるキャロルの歌声も、けっこうソウルフルですね。
ジェームス・テイラー 『きみの友だち』
<ジェームス・テイラー・ヴァージョン>
■歌・ギター
ジェームス・テイラー/James Taylor
■シングル・リリース
1971年
■収録アルバム
マッド・スライド・スリム/Mud Slide Slim and the Blue Horizon (1971年) 2曲目
■プロデュース
ピーター・アッシャー/Peter Asher
■録音メンバー
ジェームス・テイラー/James Taylor (vocals, acoustic-guitar)
ダニー・コーチマー/Danny "Kootch" Kortchmar (acoustic-guitar, conga)
リーランド・スクラー/Leland Sklar (bass)
ラス・カンケル/Russ Kunkel (drums, congas, cabasa)
■チャート最高位
1971年週間チャート アメリカ(ビルボード)1位、アメリカ(キャッシュボックス)1位、イギリス4位
1971年年間チャート アメリカ(ビルボード)16位、アメリカ(キャッシュボックス)27位、イギリス32位
四者四様の味わいがあって、どのヴァージョンも好きなんです。
メロディーはもちろん、優しく後ろから支えてくれるような歌詞に勇気をもらった人もたくさんいるのではないでしょうか。
近年のキャロル・キング(右)とジェームス・テイラー
[歌 詞]
[大 意]
きみが落ち込み悩んで 少しの愛を必要としている時
なにもかもうまくいかない時 目を閉じて私のことを考えて
そうしたら私はすぐにそこへ行き
きみの真っ暗な夜さえも照らしてあげる
きみが私の名前を呼ぶだけで 私がどこにいても
再びきみに会いに駆けつける
冬でも 春でも 夏でも 秋でも
君が呼びさえすれば 私はすぐにそこに行く
きみには友だちがいるんだよ
もしきみの頭の上の空が暗くなり 雲が立ち込め
冷たい北風が吹き始めたら
頭をしっかり上げて 大きな声で私の名前を呼ぶといい
私はすぐに きみのドアをノックするから
友だちがいるのは素晴らしいこと
人々があなたに冷たくし あなたを傷つけ
あなたを見捨て あなたの魂が奪われそうな時
そうはさせないキャロル・キング&ジェイムス・テイラー『きみの友だち』