1999年1月6日、ミシェル・ペトルチアーニは肺炎のため短い一生を終えました。まだ36歳でした。彼の遺体はパリの墓地で、かのフレデリック・ショパンの隣に埋葬されました。
ペトルチアーニの演奏は、明快で、非常にスケールが大きい。それにとてもユーモラスです。とくにオリジナル曲でそれを感じます。これ、決して「コメディ・タッチ」とか、コミカルな仕掛けがあるとか言うことではありません。おそらく、ペトルチアーニ自身がユーモアのある、バイタリティあふれる人物だからなのではないでしょうか。その人間性が彼の音楽にわかりやすく反映されているのではないか、と思えて仕方がないのです。
ペトルチアーニの肉体的障害についてはよく知られているところですね。彼は遺伝的原因から、生まれつき骨形成不全症という障害を背負っていました。この障害のため、彼の身長は成長期になっても1mほどしか伸びず、骨はもろく、またしばしば肺疾患に苦しめられました。ただ、手のサイズは通常の大人と同じくらいあったので、ピアノを弾くには差支えがなかったそうです。しかしペダルには足が届かないので、特別なペダル踏み機を使っていました。
彼は障害の克服どころか、医者からは「とても長生きはできない」と言われていたうえ、いつまで生きられるかわからない、という状況でピアノを弾き続けていたらしいです。
自分の障害を受け入れることができるには相当な葛藤もあったでしょう。また、自分の余命を考える時、精神的に追い込まれても不思議のない状態で、なぜ彼はあのような明るくユーモラスな演奏ができたのでしょうか。とても不思議です。同時に彼の内面の強さも感じます。
だから、ぼくは、彼の身体的状況よりも、彼の精神面や、価値観、哲学などに興味を抱いてしまうのです。
ペトルチアーニの演奏は、彼が障害を持っていようがいまいが、そんなことには関係のない、素晴らしいものです。
とくに、力強さにあふれたタッチから生み出す音色は、切れ味鋭く爽快です。そのうえ、ペトルチアーニならではの温もりに満ちている。
ぼくは、彼のオリジナル曲である「クリスマス・ドリーム」が大好きです。アップ・テンポのリリカルで楽しいワルツです。これ聴いてると、幸せを感じるんですよ。
アルバムならば「ミシェル・ペトルチアーニ」(ジャケットは、ソフトを被ったペトルチアーニのポートレイトで、縁が赤いので有名)とか、「コールド・ブルース」(ベーシストのロン・マクルーアとのデュオ・アルバム)かな。
とくに「ミシェル・ペトルチアーニ」というアルバムは、ミシェルが18歳の時に録音されたもので、いかに彼が早熟の天才だったかを示しているような出来栄えです。
『ミシェル・ペトルチアーニ』
試聴はこちらから。「クリスマス・ドリーム」は3曲目です。
ジャズに興味のある人に、ぼくが薦めてみたいアーティストです。
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