【Live Information】
布施明。
ぼくとしては、「積木の部屋」(1974年)や「シクラメンのかほり」(1975年)で馴染みのある歌手です。テレビでよく見ていたのはぼくが10代、つまり小学校~高校のころでした。
映画「ロミオとジュリエット」で有名な女優オリヴィア・ハッセーと結婚した人、ということでも知られていますね。
その布施明さんのコンサートに誘われました。
といっても、男性の、それも自分より人生の先輩にあたる方からのお誘いです。デートがらみといったような色っぽい話ではなくて残念ですが
まあそれはともかく、
実は正直、布施さんには「過去の人」というイメージしかなかったんです。
それに今は、かつてのヒット曲を携えたかつてのスターの、年齢による衰えをノスタルジーでカバーしているライブもあったりするので、一瞬「どうしようかな~」と思ったんです。
でも布施さんについては「歌唱力がすごい」というイメージがあり、さらに布施さんがどんなバック・バンドと一緒に来るのかな、という興味もあって、「まあ予定もないしな」くらいの軽い感じではあったんですが、結局「行きます」とお返事したんです。
こういうのがどんなにシツレイなことか、当日コンサートが始まってから思い知らされました。
「素晴らしい」
この一言につきます。
布施明は決して古びた過去の人ではなかった。
いまも研鑽と前身を続ける、輝く「スター」です。
圧倒的な声量。
安定しているピッチ。
潤いのある声質。
ゆるぎないピッチと充分な声量でのロングトーン。
コンサートの終わりまで衰えない声のスタミナ。
「すげ~、(イメージが)40年以上前と変わらん!!!」
クラシックの歌手がよく取り上げている、サラ・ブライトマンの歌で有名な「コン・テ・パルティーロ」を後半歌ったんですが、
「クラシックも歌えるよ」とアピールしたいだけの取って付けたような歌ではなく、持てる技量をさらけだしての熱唱は、「まだまだこれから」という布施さんの思いが伝わってきたような気がしました。
後半歌った歌と言えば、「君は薔薇より美しい」。
この曲のポイントと言えば、高音のロングトーンで圧倒する「変わったあああああぁぁぁぁぁぁ~~~~」の部分ですが、ここの熱さ豪快さゴージャスさ、往年のままなんです。
MCを聞けば、なんと御年74!
ななじゅうよん!?!?!?
74にしてこの歌。凄い。凄すぎる。。
お断りしておきますが、「74歳のご老体にしては凄い」と言っているのではないのです。
みずみずしく、熱く、生き生きとした素晴らしい歌を歌う人が、あとで知ったんだけど74だった、ってことなんですね。
このスキルを維持し、さらに磨くためにはふだんからどんなにトレーニングを積んでいるのでしょうか。
それを考えると、ただただ尊敬です。
これぞプロフェショナル、そして布施さんの生き様なんだと思いました。
ステージ上の身のこなし、よく練られた(と思いました)MC、しゃべりのトーンもそうです。
これはまさに、いぶし銀。
といっても、「過去の輝きを懐かしむ」ものではなくて、例えば映画「タワーリングインフェルノ」でフレッド・アステアがダンスのシーンでチラリと見せたような、熟練の味です。
そしてなかでも素晴らしかったのが、歌詞がすごく伝わってくることなんです。
発音発声はもちろん、「伝えること」に重きを置いていることの現れではないでしょうか。
ステージ上での身づくろいも、ちょっと粋な演出に見えました。
帽子をかぶり、ステッキを手にして歌った「ミスター・ボージャングルス」、良かったあ。涙腺を揺さぶられました。
涙腺と言えば、「We Will Meet Again」です。
緩みましたとも。この世から旅立ってしまった友への、愛の詰まった鎮魂歌です。一説よると、亡き西城秀樹さんへ捧げたものなんだそうです。
バンド・メンバーは、井川雅幸(piano, バンドマスター)、小堀浩(guitar)、川嶋一久(bass)、長谷部徹(drums)、服部恵(percussions, chorus)、金子泉(keyboards, chorus)の6人。井川さんとはもう半世紀のお付き合いだそうです。井川さんの見事な統率力、息の合った演奏、バンドだけ聴いても大満足です。
テレビに出ているミュージシャン、CDチャートでランキング上位のミュージシャン ≠ 素晴らしいミュージシャン、というのを改めて、そしてまざまざと見せつけてくださった、布施明さんの素晴らしいステージでした。
布施明。
日本の音楽界の貴重な財産です。
2022年10月16日(日)
岡山市民会館
布施明ツアー 「よみがえれ昔日の情熱」
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布施明のLIVE誘われた・・・艶っぽい話かなと期待したけど(笑)が素晴らしい年齢を感じさせない歌声を聴けたようでヨカッタですね。
いまだに布施さんについて不思議なのが、女優オリヴィア・ハッセーとの結婚。どこで知り合ったの?って、当時羨ましかったな~。
>ステッキを手にして歌った「ミスター・ボージャングルス
Mr. Bojangles・・・ザ・ニッティー・グリッティー・ダート・バンドもいいけど僕はサミー・デイヴィスJr.が歌うシーンを思い浮かべてしまいます。
布施さんとオリビア・ハッセーのロマンスがワイドショーネタになっていたのは記憶にありますあります。オリビアさんが出演したカネボウのCMの曲を布施さんが歌ったのが縁だそうですが、同じCMに関係したということで宴会飲み会食事会等等なんらかの接点があったのかもしれないですね。
それより、現夫人が「男女7人秋物語」の主題歌を歌った森川由加里さんだとは知らなかったな~(^^)
ボージャングルスは、若い頃は地味な歌だと思ってましたが、年を取るごとにじわじわ沁みてきます。いい歌ですね~ たぶん布施さんはサミー版をベースにして歌ったんだと思います。小粋でしたよ~
とても大きな存在感とともに親しみやすさを同時に感じました。
あのステージ、素晴らしかったですが、あれだけの力を維持しているということは日頃の積み重ねにも同時に思いを馳せることができました。ほんと、尊敬です。
「蜂」「唐辛子」、、、そっちの話も読んでくださっているのですね。ありがとうございます そのうち直木賞でも狙ってみます