フォリナーは、ブリティッシュ・ヘヴィ・ロックのスプーキー・トゥース出身のミックと、プログレッシヴ・ロックの重鎮であるキング・クリムゾン出身のイアン・マクドナルドが組んだ、英米混合のスーパー・バンドとして、デビュー当初から大きな注目を集めていました。
ぼくも、このふたりが在籍するバンドはどのような音になるのか、と興味を抱きながらファースト・アルバムを買った記憶があります。予想に反してフォリナーの音は適度にハードで、そしてポップなものでした。その親しみ易いハード・ロック・サウンドを聴いて、ぼくはすぐファンになったわけです。
この「4」は、文字通りフォリナーの4作目です。
このアルバムからはオリジナル・メンバーのイアン・マクドナルドとアル・グリーンウッドが抜けています。このことがどうサウンドが変化をもたらすのか、期待と不安でレコードを買いましたが、起伏に富んだメロディー・ラインを持つキャッチーな楽曲は健在で、フォリナーらしさは変わっていませんでした。サウンドの鍵はメロディー・メイカーでもあるミック・ジョーンズが握っていたことがよく分かります。
フォリナーの最高傑作とも言われる「4」は、1500万枚以上を売り上げる驚異的なヒットを記録、アルバム・チャートで10週連続全米1位、年間チャートでも3位になりました。
このアルバムからは、「アージェント」(全米4位)、「ガール・ライク・ユー」(同2位)、ジューク・ボックス・ヒーロー(同26位)、「ブレイク・イット・アップ」(同26位)、「ルアンヌ」(同75位)の、5曲のヒットが生まれています。
フォリナーは、日本ではスティクスやカンサス、ボストンらと並んで「アメリカン・プログレ・ハード・ロック」などとカテゴライズされたりしていましたが、このアルバムの大ヒットと、そのポップでキャッチーなメロディーやキーボードを駆使したきらびやかなサウンドから、ジャーニーやTOTOなどと共に「産業ロック」の代表格のように受け取られるようになってゆきました。
もともと「産業ロック」というのは悪い意味で使われる言葉ではなく、またフォリナーが「悪い意味の産業ロック」(つまり、売ることのみに視点を置き、聴き手に阿るような曲作りをしているロック)だとしても、そのキャッチーなメロディーとハードな演奏がカッコ良いことに変わりはないと思います。
左からリック・ウィルス(bass)、ミック・ジョーンズ(guitar)、ルー・グラム(vo)、デニス・エリオット(drums)
アルバムは、これまでのフォリナーらしい、明快でノリの良いR&R、「ナイト・ライフ」で始まります。
続く「ジューク・ボックス・ヒーロー」には、ハード・ロック・バンドであるフォリナーの姿がよく現れていると思います。途中のギター・ソロでテンポが倍になるスリリングな展開がこれまたカッコ良いのです。
大ヒットした「ガール・ライク・ユー」は、シンセサイザーを駆使した、洗練された都会的なカラーを持つ必殺のバラードです。
「アージェント」のエレクトロ・ポップ風な味わい、打ち込みっぽいクールな響きは、ニュー・ウェイヴから受けた影響が濃いのではないでしょうか。
その他、「ブレイク・イット・アップ」や「ガール・オン・ザ・ムーン」など、いかにもフォリナーといった、ぼくの好みの曲がズラリと並んでいます。
この「4」は、ほぼ全編にわたってソリッドなハード・ロックが展開されています。例えれば、アメリカン・ロックの爽快感と、ブリティッシュ・ロックのウェットさを併せ持っている、と言っていいのではないでしょうか。
ハイ・トーン・ヴォイスが特徴のルー・グラムのソウルフルな歌声、R&R色の濃いミック・ジョーンズのハードなギターがバンドの両輪となっています。そして、ゲストのキーボード陣がサウンドをふくらませ、味付けしている感じがします。「アージェント」などで聴かれるサックスもひとつのポイントになっていますね。
フォリナーがデビューしたのは1977年です。度重なるメンバー・チェンジの末に、オリジナル・メンバーはギタリストのミック・ジョーンズだけになりましたが、今やこのバンドも30年選手なんですね。
◆フォリナー4/4
■歌・演奏
フォリナー/Foreigner
■リリース
1981年7月2日
■プロデュース
ロバート・ジョン・"マット"・ランジ、ミック・ジョーンズ/Robert John "Mutt" Lange, Mick Jones
■収録曲
① ナイト・ライフ/Night Life (Mick Jones, Lou Gramm)
② ジューク・ボックス・ヒーロー/Juke Box Hero (Lou Gramm, Mick Jones)
③ ブレイク・イット・アップ/Break It Up (Mick Jones)
④ ガール・ライク・ユー/Waiting for a Girl Like You (Mick Jones, Lou Gramm)
⑤ ルアンヌ/Luanne (Lou Gramm, Mick Jones)
⑥ アージェント/Urgent (Mick Jones)
⑦ アイム・ゴナ・ウィン/I'm Gonnna Win (Mick Jones)
⑧ ウーマン・イン・ブラック/Woman in Black (Mick Jones)
⑨ ガール・オン・ザ・ムーン/Girl on the Moon (Mick Jones, Lou Gramm)
⑩ ドント・レット・ゴー/Don't Let Go (Mick Jones, Lou Gramm)
■録音メンバー
☆Foreigner
ルー・グラム/Lou Gramm (lead-vocals, percussion)
ミック・ジョーンズ(guitar, keyboards, backing-vocals)
リック・ウィルス/Rick Wills (bass, backing-vocals)
デニス・エリオット/Dennis Elliott (drums, vocal)
★Additional Personnel
ヒュー・マックラッケン/Hugh McCracken (slide-guitar⑨)
トーマス・ドルビー/Thomas Dolby (synthesizers)
ラリー・ファースト/Larry Fast (synthesizer ②③⑩)
マイケル・フォンファラ/Michael Fonfara (keyboards ⑥⑨)
ボブ・メイヨー/Bob Mayo (keyboard-textures ③④)
マーク・リヴェラ/Mark Rivera (sax ③⑥)
ジュニア・ウォーカー/Junior Walker (sax-solo ⑥)
イアン・ロイド/Ian Lloyd (backing-vocals)
ロバート・ジョン・"マット"・ランジ/Robert John "Mutt" Lange (backing-vocals)
■チャート最高位
1981年週間チャート アメリカ(ビルボード)1位、イギリス5位
1981年年間チャート アメリカ(ビルボード)70位
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共に知りませんでした。軽くショックです。
そういえば、ルーの名前の人も ルー・リードとルー大柴くらしか知らないですね(汗)
ヘヴィロックというのは、ハードロックとは違うんでしょうか?
フォリナーは、TOTOとかジャーニーに比べると、印象としては地味だったかもしれない・・・。
でも、実力派バンドだったと思います。派手なソロとかがないから地味に思えたのかもしれないですね。曲はメロディアスなものが多いです~
ヘヴィ・ロックというのは、「ハード・ロック」という呼称が定着するまでのサブ・ジャンルのひとつと言っていいでしょうね。実質的にはハード・ロックと同じ、だと思います。
文中の「スプーキー・トゥース」というバンドは、60年代後半から70年代前半にかけて存在したバンドなんですが、当時は「ヘヴィ・ロック」として紹介されることが多かった、と記憶しています。実際、重いリズム、重く歪ませたギターなど、ヘヴィな音作りをしてます~
ルーグラムの、迫力あって、悲しげで、ハイトーンなヴォーカルが大好きです♪「アージェント」なんて特にかっこいいと思います。
病気か何かで、確か太ってしまったんですよね。。。
フォリナーは「4」まではよく聴きました。レコードがあったはずなんだけどな~、たぶん誰かに貸してそのままになってる・・・。
ルー・グラムの歌声ってほんと良いですよね。迫力あって悲しげ、っていう表現、よく分かります。フォリナーのメロディーにぴったり合ってますよね~
>病気
たしか結構大きな病気なんですよね。脳腫瘍かなんかじゃなかったかな。。。(忘)またカムバックしてほしいなぁ。