カッチェン―ウンゲラーのねこワールド | |
Tomi Ungerer | |
BL出版 |
トミ・ウンゲラーは日本では主に絵本作家として知られています。でも、この
100ページ近い猫のイラスト集を見るとわかります。一筋縄で行く人ではあり
ません。様々にデフォルメされた猫、猫、猫。ユーモラスなの、ブラックなの、
エログロ、奇抜、暗示的。かなり強烈な作風の日本の漫画家武田秀雄(大英
博物館で個展を開いた世界初の漫画家らしい)と二人展を開いたというので
もわかります。風刺画家、コピーライター、絵本作家、愛猫家、色々な顔を持
っています。
フリックス | |
Tomi Ungerer,今江 祥智 | |
BL出版 |
彼の絵本も、蛇や蛸やちょっと普通は絵本の主人公になりにくい動物が活躍
します。このフリックスは犬ですが、普通の犬ではありません。猫の夫婦から
生まれたパグなんです!もちろん猫社会ではいじめられます。猫でもない、犬
でもない、自分のアイデンティティの問題は、彼の生い立ちにあるのでしょう。
彼の故郷フランンスのアルザスは、彼が生まれた頃はドイツに併合されていま
した。彼はフランス人ですが、作品はすべてドイツ語で書かれています。アメ
リカで活躍し今はアイルランドに住んでいるようですが、自分がいったい何者
で、どこに帰属するのかという問題が、作品の根底にあるような気がします。
へびのクリクター | |
中野 完二 | |
文化出版局 |
でもね、その世界で異質でも、嫌われ者でも、ウンゲラーの絵本の主人公たち
には、逆境をはね返すガッツと明るさがあります。猫夫婦の間に生まれたフリ
ックスは、猫社会と犬社会の架け橋として成功するし、この蛇のクリクターく
んも、くねくねした長い体を活かして、人気者になります。逆に言えば、異質の
ものを受け入れる度量のある大らかな社会を願って、ウンゲラーは変わった
主人公の絵本を書き続けているのかもしれません。
すてきな三にんぐみ | |
いまえ よしとも | |
偕成社 |
日本で一番人気の彼の絵本「すてきな三にんぐみ」は、社会からドロップア
ウトした泥棒三人組が、孤児救済に精を出すというちょっと皮肉の効いた、
ウンゲラーらしいシュールな絵の絵本です。