秩父の武甲山は日本武尊が甲を納めたというので、その名が
付いた山容の美しい山で、秩父神社のご神体でもあります。
でもその北斜面は、セメントの材料になる石灰岩が明治以来大
量に切りだされ、元の形を留めない程に、著しく崩壊しています。
身を削られても、人の役に立ってくれるなんて、なんと寛大な神
さまだろうと思います。横瀬町の山上にある葡萄園からは、その
変貌してもなお堂々とした姿を眺めることができます。
農園のおじさんに、武甲山のことやこの地の葡萄園の成り立ち
を教わりながら葡萄狩りをしました。台風の被害を受け、猿に襲
われ、自然相手に苦労も多いようですが、
そこは専門家、大粒の甘い巨峰がたくさん実っていました。
その夜は、秩父市の隣の小鹿野の梁山泊という旅館に泊まり
ました。梁山泊は、ご存知「水滸伝」の英雄たちの巣窟であり、
同志の集まる場所というような意味で使われますが、この梁山
泊も、民宿のような安さながら、料理が美味しい、気持ち良く
集える宿でした。庭先の龍のイルミネーションの上に、十六夜
の月が冴え渡っていました。