街路樹の葉がもうすっかり落ちて、寒い季節になりました。数カ月前の
猛暑が嘘のようです。今夜は雨になるようですが、朝起きてみると、辺
りが真っ白、なんてこともありそうな寒さです。こんな季節になると読
みたくなる本や絵本がいくつかあります。日本のお話だと、
手ぶくろを買いに (日本の童話名作選) | |
黒井 健 | |
偕成社 |
新見南吉の「手ぶくろを買いに」など。特に黒井健さんの絵の本。ふんわか
たキツネの毛並みの感じがたまりません。寒くて「かあちゃん、お手々が冷
たい、お手々がちんちんする、、、」と言った子ギツネを、母さんギツネは
人間の町に手ぶくろを買いに行かせます。人間に化けた手じゃない、キツネ
のままの手を出したのに、赤い手ぶくろを売ってくれたおじさん。人間不信
の母さんギツネは、そこで考えを改めようかと思います。でも、そんな人間
の所へ子どもを一人で行かせた時点で、ちょっとどうかなと思うお話ではあ
るのですが、そのほのぼのとして、それでいて切ない語り口が、そんな矛盾
など吹き飛ばしてしまう名作です。
水晶 他三篇―石さまざま (岩波文庫) | |
手塚 富雄,藤村 宏 | |
岩波書店 |
外国物で好きなのは、アーダルベルト・シュティフターの「水晶」という短篇
です。「みかげ石」、「石灰石」など入った「石さまざま」という短編集の中
の一編です。あるクリスマスイブ、スイスの小さな村に住むコンラートとザ
ンナという幼い兄妹が峠を超えてお母さんのお里に行くことになりました。
その帰り道二人は雪の山で道に迷ってしまいます。一晩山の中で過ごす
ことになった二人。妹を守り眠らせまいとする兄、素直に兄の言うことを聞
く妹。読んでいて、その健気さに熱いものがこみ上げてきます。えも言われ
ず美しい氷の壁(これを水晶に見立てています)を通って、二人はどんどん
山の上へと登って行ってしまうのですが。その日はクリスマス、神様のお恵
みでしょうか、二人は村人の捜索隊に無事助けられます。やさしい、やさしい
気持ちになるお話です。