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年末の帰省の機会に、昔住んだことのある奈良市の北西部、法蓮町、法華寺町
の辺りを訪ねました。住んでいたのはもう数十年前のこと、道沿いには大きな建
物が増え、交通量も多くなりっているようですが、寺々の静かなたたずまいは、当
時のままでした。
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在原業平が開いたので「業平寺」とも呼ばれる不退寺。うっそうとした木立の中
にあり、年の瀬の忙しさにか、訪れる人もほとんどなく、時を忘れたかのような、
ひっそりとした趣でした。
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不退寺-不退転法輪寺-は、伊勢物語でお馴染みの、美男の代名詞のような
在原業平が、祖父の平城天皇が譲位後隠棲した所に建てたお寺だそうです。
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当時は華やかな貴公子の建立に相応しい大寺だったようですが、幾星霜を経た
今はこじんまりとした古刹で、車で行った私はお寺に通じる道のあまりの狭さ
にたどり着くのを断念しかけたほどでした。
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門の前の小さな駐車場に車を停めさせてもらって(長時間停めないでと書かれて
いたのに、数時間置いて戻ったら、イケメンの若いお坊さんに叱られたのですが)
西の法華寺の方へブラブラと歩きました。一条通りを行くと、いかにも古い町らし
い趣きのある家々が並んでいます。この家は尺八のお教室のようです。
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道ばたに磐之媛命陵という石碑がありました。仁徳天皇の皇后さまの御陵
です。この皇后さまは記紀には大層嫉妬深かったとあるけれど、これはどう
もでっち上げではないかとも言われています。今では気性の荒い嫉妬深い
女性として定着してしまっているのはいかんともしがたいですね。この辺りは
佐紀古墳群と言われ、近くに前方後円墳のウワナベ古墳、コナベ古墳があり
ます。コナベ古墳は奈良時代の女帝元正天皇の陵ではないか言われた時期
もあるそうです。古代史好きにはたまらない地域です。
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そこからほんの数百メートル行くと法華寺に到着です。光明皇后が父親の藤
原不比等の屋敷跡に建立したという、言わずと知れた国分尼寺の総本山です。
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建立当時は威容を誇る壮大華麗な大寺だったようですが、平安以後衰退していた
のを、豊臣秀頼、淀君が再建したのだそうです。なかなかの紆余曲折ですね。今は
清らかに美しい魅力的なお寺です。
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訪れた日は人影もまばらで、敷き詰められた砂利のすがすがしかったこと。
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浴室(からふろ)は光明皇后が千人の病人の背中を流したという蒸し風呂です。
法華寺のご本尊は光明皇后をかたどったという秘仏の観音像です。マリアさま
やマザー・テレサにも比するお方だったのでしょう。
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法華寺には、尼寺であることもあり、奈良や京都の権威と威厳に満ちた壮大
な大寺にはない、清らかさと親しみやすさがあります。心が弱った時、訪ねて
みると、きっと心の安らかさを取り戻せるようなお寺です。