オーパルひとりぼっち | |
ジェイン ボルタン,バーバラ クーニー,Opal Whiteley,Jane Boulton,Barbara Cooney,八木田 宣子 | |
ほるぷ出版 |
友人に借りたこの絵本は、その静かでのどかなバーバラ・クーニーの絵と
は裏腹に、なかなか衝撃的な絵本でした。オーパル・ウィットリーという原
作者の女性は孤児で、彼女が五歳の時に近所の人がくれた封筒の裏に
書いていた日記が絵本の元になっているというのです。たった五歳です
よ。しかもその日記は継姉がずたずたに破ってしまっていたのを、九ヶ月
かけて、ジグソーパズルを解くように復元したというのです。継母の厳し
いしうちに耐えながら、動物や植物を友として生きていく森での生活の描
写は、美しい詩のようです。
Only Opal | |
Opal Whiteley,Jane Boulton | |
Puffin |
バーバラ・クーニーの絵があまりにも静かで美しく悲しく、最後のページまで
笑顔をみせない幼い少女の表情が切なくて、思わずホロリとさせられます。
副題がThe Diary of a Young Girlとあるように、字を覚えたての五歳の
書いた文章なので、不規則変化動詞の過去形が分からずsaidをdid say
とするなど、随所に稚拙さが感じられ、それによってまたほろっとさせら
れるのですが、、、。
The Diary of Opal Whiteley | |
Nan Gurley | |
September Productions Inc |
大人になって久しく、汚れてしまった私の心に、疑いが湧いてくるのです。
「これは、本当にこんな境遇にあった五歳の女の子が書いたものかしら?」
お話の一部など、継子いじめのグリム童話そっくりです。ネットでググッて
みると、どうも孤児ではなかったらしい、貧しく、しつけの厳しい一家では
あったものの、その家の本当の子供だったようなのです。オーパルは空
想癖、放浪癖のある子どもだったらしく、のちにはアスペルガー症候群の
疑いも持たれています。
Opal: The Journal of an Understanding Heart | |
Opal Whiteley | |
Crown |
とはいえ、その幼い文章の詩のような美しさには、紛れも無く真実の響きが
あり、バーバーラ・クーニーの絵とあいまって、心を動かされずにはいられま
せん。事実かフィクションかなんて、ある意味どうでもいいことなんでしょうね。